窓際の明るい席にカップ2つと冷タンが3つ、そして白いわっかのあとが残った背の低いパフェグラス。テーブルの手前側にきれいにまとめて置かれている。立ち去ったお客は片付ける従業員のことを思い浮かべて、取りやすい位置においてくれたのであろう、気遣いがうれしい。
ただ、椅子の背の上部に小さな手のあとが残っている。アイスクリームのついた手を置いていたのだろう。
「かわいい子でしたね・・・」
「あれっ?見たことなかったかな。よくきてる常連さんだぞ。」
「ええっ?!覚えてない・・・」
「いつもは2人だけだからな。今日みたいに旦那も一緒なのは始めてかもしれん。」
「ん〜・・・。あっ!思い出したァ!!いつも一瞬でブレンドを飲み終わって、風のように帰っていく奥さんですか?」
「いつも背中にいただろ?ちっちゃいのが。」
「あの子あんなに大きかったんですね。お母さん大変だ。でも、マスターが子供好きだとは知りませんでした。見かけによらない・・・」
「何だと、って怒れないんだ。実はあんまり好きじゃない。物の道理がわからん奴は扱いに困る。」
「さっきのは?十分子供好きに見えましたけど。」
「営業用だ。お母さんにはせっかくゆっくり出来る状態で来て頂いたんだ、味わって飲んでいって欲しかったんだよ。」
「あの子、座席の背ごしにカウンターの中をずっと覗き込んでましたよね。何が面白かったんでしょうね?もしかしてマスターの顔?」
「なに言ってんだよ。普段はお母さんの背中で店の中なんか見れないんだ。ケトルから落ちるお湯の色が変わるだけでも不思議なんだろ?視線はずっとドリッパーに張り付いていたぞ。」
「やっぱり興奮してたのかな、あの子。寄りかかって立っていた背もたれに、アイスの跡がついて、乾いちゃってますよ。急いでふいてきます。」
「えっ?じゃあ店のことはいいから急いで追っかけて、子供の手を拭いてこい。あちこちで触ったら大変だ。子供の服を買いに行くって言ってたからな。」
「い、行ってきます・・・。」
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