平日の午後4時過ぎ。店内は午後のお茶の時間が終わり、空席が目立つ。
次に混雑が予想されるのは、6時半を過ぎた頃からとなるだろう。
カウンターの中からは洗い物を急いで片付ける音が続いている。
制服姿の高校生が、出窓になった大きなガラス窓の前を、店内を覗き込みながら通り過ぎ、勢いよく入り口の扉を押し開けた。
「マスター、ただいまっ!誰か来てる?」
「おう、おかえり。イヤに早いじゃないか。部活はいいのか?」
「運動部じゃあるまいし、週3しかないよ。それに部室でだべってるくらいなら、ここのほうが為になるよ。Aさんまだかなあ・・・」
「こんな時間に来れるのはお前ら高校生ぐらいだろ?大学生たちはもっと遅いぞ。」
「いいんだ、Aさんに『受験生になるまえにコレだけは読んどけ』って言われた本読んでるから。」
「またあいつの趣味全開のものを薦めてるんだろ?」
「まあね。でも僕にとってはすごい新鮮だし、学校で学んでることってちゃんと意味があるって再認識できたのは良かったと思うよ。自分から勉強する時間を作るようになったもん。」
「あらら、Aの影響をモロに受けてんなぁ。紹介した手前、責任を感じるよ。」
「だってかっこよかったもん。友達と1週間考えて解んなかった問題をあっさり、しかも小気味良く解かれちゃったら、尊敬しちゃうよ。」
「じゃ、A達が来るまではカウンターでいいな。どうせ奴らが来たら奥の席に引っ付いていくんだろ?」
「うん、そうだね。それと今日は報告があるんだ、マスターに。」
「改まってなんだ?」
「後2つなんだ、メニューにある珈琲を全部飲み終わるのは。ほらみてよ、全部記録してあるんだ。半年がかりだよ。」
「ちょっと見せてみろ・・・案外きれいな字書くんだな。イラストまで入れて、手間掛かってるなぁ。」
「古いとこみると、マスターに怒鳴られたことまで書いてあったよ。」
「完成したら店の補助メニューにしていいか?この店にはメニューを覚えられない奴が一人いるからな。きちんと整理してあればお客さんも見やすいだろう。」
「え〜っ、そんなにたいしたことないし、恥ずかしいよ。」
「手間賃として1週間ブレンドかアイス飲み放題でどうだ?」
「しょうがないな、じゃあメニューとして使えるようにきれいに仕上げてくるから2週間でいいよ。」
「ちょっと待った、10日にしてくれ。言い出した手前仕上げに文句は言わんから。」
「了解、クリアしたら仕上げに2〜3日だけ待ってね。」
「それで今日はどうするんだ?珈琲のほうは。」
「後はモカ・マタリとブルーマウンテンNo.1が残っているんだけど・・・。」
「No.1は昨日入ったばかりだから今日はまだ無理だな。とするとモカからか。」
「最後がブルーマウンテンNo.1になるんだ。それもたのしみだな。ああっ、すごい香り。マスターもう入ったの?」
「はやるな少年、豆を挽いただけだ。しっかり淹れてやるからもうちょっと待ってろ。」
「お願いしま〜す。」


