2008年01月18日

◇新春の密談 〜その翌日〜

駅前の紅茶とスイーツ主体のお店。1階はショーケースを配した物販部、2階が喫茶室になっている。
女性のざわめきが広がる中、先ほどから店の片隅でレモンティーを前にして待っている高校生の男子。制服は近所の高校を示している。
少しして時計を気にしながら、同じ高校の女生徒がやってきた。男の向かいに座る。

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「御免ね、遅くなって。」
「いや、僕も今来たとこだよ。そういえば今日のお昼にあいつが僕たちの教室に来てたぞ。」
「やっぱり・・・?私の問題だからいいって言ったのに。びっくりしたでしょ?」
「いや、うまくいったんだなってわかったから、適当に話を合わせておいた。随分悪者にしてくれたんだね。納得させるのが大変だったぞ。でもあいつは本当に初心いんだか、鈍いんだか、生真面目なんだか・・・。君の涙にころっとまいったらしいね。迫真の演技だったのかな。」
「ううん、演技だなんてとんでもない。本当に不安で苦しくて、一人で思い悩んでたことがぐるぐると頭の中を駆け巡って、つい涙になってこぼれちゃったの。それに、なぜだか彼の目は誤魔化せないの。」
「あいつが君をそこまで追い込んでいるとはね。でも安心した、今日はすごくすっきりした顔で出てきたから。僕から見たら『大丈夫か?』と心配するほど情緒不安定だったんだぜ。いつもの君なら自分から動いて何とかしているだろうに、それもできないなんて驚いたよ。」
「心配してくれていたのは知ってた。私がふったにもかかわらずM君が友人であり続けてくれたことに本当に感謝してる。今回だって悪役を勝手に振ったって怒りもせず見事にこなしてくれるんだもん。」
「惚れた弱みかな。僕も君にふられてから一歩離れた位置から見てみて、君とは恋愛じゃなかったんだなって解ったから。」
「彼は特別だったの。気が付いたら傍にいて、いてくれることで安心できるって解ったら、今度はいなくなることの不安のほうが大きくなっちゃって。こんな気持ちも彼には見透かされているようで恥ずかしくって。部の1年生の声も大いに不安を掻き立ててくれたわ。」
「あいつは素直でいい奴だよ。だから同学年の連中から見ると疎ましく見えるんだろうな。仲間に入れず一人でいることが多かったらしい。クラスで押し付けられた生徒会の仕事で僕と出会って本当によかったって言ってたよ。僕のあとを引き継いでこの部を手伝ってくれって言ったときは驚いた顔をしていたけど。」
「ふうん、そうだったんだ。でも君の教えが良かったのか、今年の文化祭でもきっちり裏を取り仕切っていたよね。どうだったの実際は?」
「表も裏もほぼ全部を理解して動かしてたな。僕たち3年は出る幕無し。ほとんど相談役でしかなかった。実行委員長なんかなんもしてないよ。企画・折衝・実働部隊の把握とやれることは全てやるってつもりだったらしい。」
「表には出てこなかったわよね。そのまま実行委員長までやっちゃえばよかったのに。あんなお飾りに皆の賞賛を譲らなくても・・・。」
「『僕には多くの人を無条件で惹きつけるような魅力はないから』ってIに席を譲っていたよ。ひょっとして物凄くしたたかなのかもしれない。わざわざIを選んでお願いするなんて。」
「それこそM君の薫陶の成果じゃないの?でもよかった、私の知らないところでもいい男になるべく鍛えられていたのがわかって。もちろん今も昔もいい男よ、彼は。私の選択眼に自信が持てたわ。」
「ああ、もうお惚気ですか。勘弁々々、振られた僕としては心が痛い。」
「あらそう?あっそろそろ彼があの店に着くころね。待たせちゃ悪いから行くね。今回は本当にありがとう。お願いできるのは君しかいなかったから、助かったわ。それじゃあ・・・。」
「うん、あいつによろしくな。」

「彼・・・か。君がこんなに変わるなんて・・・、また可愛らしい女の子になっちゃったもんだね。部長として僕らをあごで使っていた頃の颯爽としたイメージはもうどこにもないようだ。僕は君のこんな表情を見られるなんて考えもしなかったよ。君がこんな面を自然に表に出せるなんて、あいつの事を信頼しているからなんだな。良かったよ、引き合わせることができて。うん、僕ももう迷わなくて済む。いい女になれよ、T。」
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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(8) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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