2008年03月14日

◇手作りの年輪

バレンタインデーから一月が過ぎた。
世の男性諸氏が、そわそわしながらタイミングを計っている日。
今日のお店ではウエイトレスが上機嫌で仕事をしている。
バレンタインに配ったチョコレートにお返しがあり、喜んでいるのだ。
小さな紙包みでばかりではあるが、午前中だけでもかなりの量になっている。

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「マスター、随分頂いちゃったんだけど、いいのかなぁ。」
「何のことだ?」
「今日は何の日?覚えてないんですか?ホワイトデーですよ。お返しとか考えてなかったんですか?」
「ああ、そのことか。一杯配った義理チョコにお返しがあったのか。良かったな。」
「だって、チョコの費用出していただいちゃったじゃないですか。それなのに頂いたもの全部自分のものにしていいんですか?」
「お前が貰ったんだろう?好きにすればいいさ。お客さんはちゃんと来てくれてるわけだしな。」
「ありがとう、マスター。マスターは頂いた方にお返ししてるんですか?」
「ああ、数は少ないけどな。たいしたものでもない。」
「えっ?どんなの?見せて、見せて。」
「見せてやってもいいが、お前の分はないぞ。」
「ひっどーい。マスターには特別なのあげたじゃない、1日遅れだったけど。」
「忘れられるような存在なんだからな。お前の気持ちには答えられん。」
「あーん、忘れていたわけじゃないんですよ。義理チョコ買いすぎて手持ちが無くなっちゃっただけです。マスターに清算していただいてその足で買いに行ったじゃないですか。」
「そうだっけ?まあいい、そんなことは。ほら、これが今年のホワイトデーのお返しだ。」
「か、可愛いバウムクーヘン。ちっちゃいのにちゃんと年輪がある。こんなのどこで売ってるんですか?」
「馬鹿言え、俺の手作りだ。何年か前からボーイスカウトの連中のキャンプで普通のサイズのものを何回か作ってたんだ。このサイズは去年から挑戦していたんだが、やっとうまくできるようになったんでホワイトデーのお返しにしてみたんだ。」
「いいなぁ、私も欲しいな。ね〜マスタ〜。」
「ダメだ、数が足らないくらいなんだ。」
「なによ〜マスターのけちんぼ!!」

   * * *

「マスター、毎度〜。」
「おう、来たのか。カウンターでいいか?」
「あれ〜、ポスターとPOPはずしちゃったんだ。」
「ば、馬鹿、声が大きい。」
「えっ?一昨日、昨日と貼ってあった『ホワイトデーに愛の手のお手伝いを』って奴だよ?今日まで貼ってなきゃ意味ないじゃん。」
「今日はあいつがいるんだ、気付かれるだろ。」
「ああ、そうか〜。でも余計な誤解もされると思う・・・。」
「マ・ス・ター!裏にあったこのポスターとPOPなんですか?ヘンな時期に連休なんか頂いておかしいなとは思ってたんですけど。私のいない間にこんなことして・・・。」
「わ、悪かった、怒るなよ。」
「私のこと馬鹿にして・・・いいわよ・・・どうせ・・・」
「マスターは馬鹿にしてなんていないんですよ、お姐さん。」
「どうして?こんな悪戯ひどすぎる。いくら私が男の子に縁がないからって。」
「ほ〜らマスター、やっぱり悪者にされちゃった。悪戯じゃないんですって。お姐さんを喜ばせたかっただけですって。金が無いって渋る高校生にはお金渡して頼んでたんだよ。」
「だって・・・。」
「常連さんの中には、都合でバレンタインには来られなかったけど今日は必ず来るからって言う人だって居たんですよ。みんなお姐さんに感謝してるんです、だからマスターの企画に乗ってくれたんですよ。」
「そんなこと信じられない・・・。」
「じゃあ、マスターのところにある箱を見てください。あれは今日は来れないからって、わざわざその場で商店街まで行って買ってきて下った方の分ですよ。それを見ても信じられませんか?」
「嘘でしょ?まだこんなに?」
「マスターは口じゃきついことしか言わないけど、お姐さんが大事なんですって。僕も含めてお客さんたちもお姐さんが大好きなんです。解ってください。」
「あ・・・ありがとう・・・マスター、勘違いしちゃって、ごめんなさい。ちょっとお化粧直してきますね。」
「ああ、驚かせてすまなかったな。ゆっくりしてきていいぞ。」
 

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(14) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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