2008年05月09日

◇午後のお茶の時間

世間ではゴールデンウイークの真っ最中だが、ここ「Cafe−Aloma」はいたって静かな時を送っている。
品のよい物静かな女性が、陽射しがまぶしい午後になったころにやってきた。
待ち合わせているのだと窓際の席に座り、商店街の方の様子を窺っている。
しばらくして待ち合わせの相手が登場。急いでやってきた風もなく、爽やかな笑顔で「アイスティー」を2つ頼むと女性の待つ席の向かい側に腰をかける。

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「久しぶりだね、君とここで逢うのは。」
「そうね、何年前になるのかしら。あんなお嬢さんはまだいなかった頃だったと思うわ。」
「そうだとしても変わらないな、この店も、商店街も、そして君も。」
「うれしいわ。そんなことを言ってくださる男性は少なくなったわ。殿方の話題の中心でいられる年頃ではなくなってしまったのね。」
「そんなことはないさ。いつまでも変わらず魅力的だよ。」
「でも、あなたは愛してるって言ってくれたことがないのね。」
「そんなこと知ってると思ってた。」
「女は、それを聞きたいものなのよ。」
「魅力あるもの、キレイな花に心を惹かれるのは、誰でもできる。だけど、色あせたものを捨てないのは努力がいる。色のあせるとき、本当の愛情が生まれる。」
「うふふ、正直な方ね。私が色あせたこと認めちゃってるじゃない。」
「今、笑ったね?」
「ごめんなさい、つい・・・。」
「とんでもない、君の笑顔は素敵だ。年を経ても変わらない優しい笑顔だ。」
「まあ、お上手ね。」


*****

「お姉さん。あのお二人、いい感じですね。あんな年齢になっても恋ができるっていいですよね。」
「映画のワンシーンを見ているみたい。お互い家族も独立して自由になったのかしら。ねえ、マスター?」
「・・・・・・。」
「上品な逢瀬に使っていただけるなんて・・・。そんな恋がどうしたらできるかうかがってみたいくらい。」
「あれ?マスター、どうされたんですか?お姉さん、マスターの様子が変ですよ。」
「おかしいわね?いつもはお客さんの事に関心がない風をしているのに・・・。怒ってるみたい。確かに変だわ。どうしたの、マスター?」
「・・・・・・。ほっておけ。いつまでも無駄口をたたいてるんじゃない。」
「やだなぁ、マスター。お客さんが動かないからしょうがないじゃないですか。おかしいわね、何イライラしてるんですか?そんなマスターを見るのはあの時以来ね。気に入らないことでもあるの?」
「ああ、十分気に入らない。あいつら人の店で恥ずかしげもなく・・・。」
「え?あいつらって、あのお二人のこと?」
「ああ、すぐに叩き出す!」
「待ってよマスター。お客様にそれはいくらなんでも。それにあの二人が何を?」
「ありゃ俺の親父とお袋だ。いい加減にさらせ、人前でこっぱずかしい。」
「マスター、落ち着いて!ご両親なんですか?仲がよくってうらやましいじゃないですか。」
「あんなのを子供のころからずっと見せられ続けて来たんだ。高校までは我慢したんだが、耐えられなくなって地方の大学を受験した。それ以来家とは縁遠くなっていたんだが、今朝も突然『孫の顔が見たい』って押しかけてきやがって、やっと帰るかと思えば今度は店に来やがった。」
「子供より孫は手放しで可愛いと感じるらしいから、たまには実家に連れて帰ってあげればいいじゃないですか。きっと寂しいんですよ。」
「そうですよ、お子さんのお休みに合わせてお出掛けされたって僕らは大丈夫ですからね。」
「そう言われてもなぁ・・・実家に行けばあの光景が延々続くんだぞ。俺には1時間だって耐えられんよ。うちのと子供だけ置いてくるわけにもいかんからな。」
「たまに親孝行もするもんよ、諦めてね。」
「う・・・仕事を理由にできなくなるとはな。まいったなぁ。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(10) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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