2008年05月16日

◆番外編 3.ネル布 準備篇

いらっしゃいませ。珈琲抽出研修会にようこそ。
今回はネル布での抽出のための準備を見ていきます。1回で終わらせるつもりでしたが、ボリュームが多すぎて抽出まで進められませんでした。

私の若い頃の喫茶店といえばネル布で大量の珈琲液を抽出しておき、注文に応じて小なべで温め直して提供するのが一般的でした。そのため布(袋)自体も大きく、3L用のコーヒーポットの口に輪ゴムで留めて使用していました。どこでも同じように淹れていたところを見ると、開業の際に豆屋の研修で覚えてきたものでしょう。今思うとかなり豪快な抽出法です。
こんな方法を研修会で詳しく紹介してもしょうがないでしょうからマスターは新たに道具を用意しているようです・・・。

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「おはようございます、マスター!!」
「おはようございます、見学に来ました。」
「おうっ!だが、できれば見学はやめたほうがいいな。」
「ええっ?だめですか?」
「ああ、そんな暇があるなら都心の有名な店に行ってうちのとの違いを自分の舌で確認して来い。珈琲の味の基礎ができていないんだから少し鍛えてからだ。特に今日はペーパードリップに一番近いネル布のドリップだ。変に癖がついても困る。」
「そんなもんですか。残念ね、お休みなんだから出掛けていらっしゃい。」
「今からでも3〜4軒をじっくり廻れるだろ。君の成長に期待してるぞ。」
「ちえっ、しょうがないな。それじゃあ行って来ます。」
「さて、今日はネル布だ。前々回に少しほのめかしてたから予習はしてあるんだろうな。」
「えへ、何にも。まっさらな方がいいかと思って・・・。あ、握りこぶしは止めて。正直に言いますよぉ、サボってました。ゴールデンウイークで浮かれててすっかり忘れてました。済みません。」
「まあいいか。番外編になってからは直接営業に関わる物ではなくなっているからな。知識として知っておいて、どのように自分の抽出法に生かせるかってことだけだ。怒るものでもない。」
「は〜い、気合入れて覚えていきます。」
「さてとこれが新品のネル布だ。一応1〜3人分を手に入れてみた。」
「片面が起毛しているんですけれど、どちらが内側ですか?」
「わからん。調べてみたがどちらもが正しいと主張している。縫い目などから推察すると起毛していないほうを内側にしたほうが使いやすそうだ。後で洗浄することを考えると起毛したほうに粉が引っかかると面倒だからな。」
「あはっ、適当〜。マスターでも解らないことはあるんですね。」
「道具だからな、使いながら覚えていけばいいだろう。それよりお前、化粧落として来い。ネル布には大敵だそうだ、香りが。吸着してしまうんだとよ。」
「スッピンになれと?」
「だから理由を付けてあいつを帰したんだ。普段と似ても似つかない顔を見られるのはいやだろう?」
「そんな気遣いはいりませんよ〜だ。それだったらマスターだって・・・、あ、そうか。何度もお店で泣いて化粧を落としたまま送ってもらったことがあったわね。じゃあしょうがないか。ちょっと待っててくださいね。」

「お待たせしました。もともと匂いの少ない化粧品ですし、香水の類は付けてないんで大丈夫です。」
「それじゃあ進めよう。ネル布は購入したままでは使えない。はずせるタイプのものは布だけにして、外れないものはわっかごと鍋で煮込む。」
「あれっ?どうして綺麗ですよ。」
「ネル布ってのはもっと柔らかいものだ。表面に糊がついているのさ。煮込んでそれを落とすんだ。」
「なるほど。でも、もう1枚ある布は随分色が違いますね。今回の講座のために練習して使い込んだんですね。」
「いや、1度だけだ。ドリップオンの講習になっちまった時から準備してたんで、『出がらしコーヒー』に漬けおいたり、2〜3日に1度の『煮出し洗い』をしていたらこうなったんだ。」
「えっ?使ってないのにそんな手間を掛けていたんですか?面倒ですね。」
「ああ、これが俺がネルドリップを選択しなかった理由さ。何枚ものネル布を毎日洗い、煮出し、管理するなんて俺には無理だ。毎回捨ててしまえるペーパーの方が俺には似合っている。」
「エコじゃあないわね。まあマスターがそんなことに気を使うとも思わないけど。そのおかげで私も助かるわけだし、いいことにしましょう。」
「どうしても洗剤で洗うことができない分雑菌が繁殖しやすくなる。脂肪分も吸着するしな。手入れを怠ると直ぐに異臭がし始めるぞ。その点ペーパードリップは簡単だ。ドリッパーだって熱湯消毒してしまえる。色素がこびりついてきたら漂白剤で煮込めばいい。後の洗浄に気を付けさえすればいいからな。」
「不精ですからね、マスターは。でもこの仕込んだネル布、湿ってますよ。」
「乾燥させちゃ駄目なんだ。これも面倒だな、というより冷蔵庫の中で邪魔になる。この2ヶ月本当に面倒だった。あの時そのまま知らん顔して『ネル布』で進めちまえば良かったと何度思ったことか。」
「あはは、かなり懲りてますね。そんな几帳面なことをチマチマとしているマスターをちゃんと見ておけばよかった。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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