2008年08月28日

◇盛夏の終わりの落花生

世間の学校では夏休みもそろそろ終わりに近づいてきた。
残った宿題の追い込みに手を貸すように連日冷たい雨が降り、あたかも秋雨が一足先にやってきたかのようだ。
蝉の声もまれにしか聞こえなくなり、もっぱら夜はコオロギたちの声が辺りを満たし始めている。

開店するとすぐに窓辺の席に座った高校生のカップルは、今日のデートコースを確認しているのか、二人の間に置いた雑誌を覗き込んでいる。

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「おまえ、この夏はずっとレモンスカッシュばっかりだな。」
「暑くて、なんだかさっぱりしたものがよかったのよ。あなたこそアイスコーヒーにミルクも砂糖も入れないで、大丈夫なの?ホットの時だってブラックなんか飲まなかったのに。」
「ここに通うようになってコーヒーの美味しさがちょっと解ったきたのかな。砂糖を入れないアイスコーヒーの甘さが感じられるんだ。」
「苦いだけじゃないの。私は夏の間はこれでいいわ。涼しくなったらいつものに戻るから。」
「これ、どうしたんだ?殻付きのピーナツなんて。」
「マスターに頂いたの。モーニングを食べないんなら、これだけでも胃に入れておけって。」
「へ〜。テーブル散らかっちまうのに。」
「だからちゃんとティッシュの上で剥いているのよ。あなたも食べる?これが最後だけど。」
「サンキュ。それじゃあそろそろ出掛けようか。」
「そうね、今からならあまり待たないで入館できそうね。」
「出発出発っと。あれ?どうしたの?」
「ダメ!振り向いちゃ!ストッキング直しているだけだから先に行ってお会計しておいて。すぐに行くから、ね。」
「わかったから、早く来いよ。」


「あの二人またデートね、腕組んで出かけていったわ、羨ましい…いや若いカップルっていいわね。」
「あいつらいつもどこに出かけているんだ?」
「美術館とかデパートの展覧会とかみたい。健全な高校生ね。でも不思議ね、あの娘いつも黒いストッキングを履いてる。」
「ひょっとしていつもタータンチェックのスカートもはいてるだろ?」
「そうだったかしら…そうね、そうかもしれないわね。でも、どうして?マスターがそんなことを知っているの?」
「ふ〜ん、そうか。しかしふっるい物を願掛けだかゲン担ぎのネタにするものだな。」
「ええっ?なになに?またマスター一人で気付いて悦に入ってる訳?教えてくれたっていいじゃないの。」
「いろいろ調べればわかるさ。得意だろ?サイフォンの時のように図書館でもネットでも使って調べればいいじゃないか。」
「冷たいわね。いいわよ、またあの時教えてくれた子に聞いてみるから。でも、最近こないわね?」
「聞いてなかったのか?あいつ、この夏どこかでホームステイするって言ってたぞ。語学力を強化するって言ってたな。」
「何よ、必要な時にいないなんて、常連だなんて言えないわね。ねえマスターったら。教えてちょうだいよ〜。」
「まあ頑張って見つけろよ。ほら、お客さんだぞ。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(12) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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