2008年09月03日

◇一月が経って…

夏休みも終わりが近づいた水曜日。朝から強い日差しが道路を灼いている。
店の表のシャッターに貼り紙をしたマスターが商店街のアーケードの下を駅に向かって歩いていく。
そのまま駅には向かわず、反対側の商店街の中程にある駐車場に向かっているようだ。
今日は移動販売店が営業しているはずだった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「あれっ?マスター、お店どうしたんですか?」
「出かける用事ができちまったんで、シャッターに臨時休業の貼り紙してきたよ。お前は今日この後は夕方に出勤だろ?そんな時間まで店開けられんようじゃ、休みでいいだろうと思ってな。そこでせっかくだからちょっと早いが出かけることにしてお前の様子を見にきたんだ。」
「そんな、こっちはちゃんとやってますから大丈夫ですよ。言ってくださればこの後すぐお店戻って開けますよ。せっかく来て突然休みだったらお客さんが可哀想ですよ。いいです、そうします。あの子にはちゃんと10時には開店するって連絡しといてくださいね。」
「いいのか?俺が戻れるのは遅くなるかも知れんぞ?」
「平気ですよ。たまにはいいじゃないですか。用事、きちんと済ましてきてください。」
「すまんな。と、それはそれだが、お前何て恰好で仕事してんだ!」
「えっ?いけませんか?結構好評なんですよ。中にはガン見していくおじさんはいますけど。」
「あのなぁ、一応分店の扱いなんだぞ。暑いからって、ビキニにエプロンって…。店の方まで誤解されたらどうするんだ。」
「短パンは穿いてるんだしいいじゃないですか。戸外なんで暑いんですって。商店会のおっちゃんも『マスターにお願いしてよかった』って言ってくれてるのよ。」
「しかしもう夏も終わりだからな、いい加減露出は控えろよ。」
「あ、そうそう、初日にオーナーが様子を見にきてたわよ。こっちまでこればいいのに、道の向こう側でずっと見てるの。やっぱり心配だったのかなぁ。」
「お、お前初日からその格好だったのか?」
「うん。事前に試したとき、エアコンが無い野外だって気づいて、夏の間はこの格好でって決めてたの。冬になったらどうしようかな。また考えておきますね。」
「あいつも驚いたんだろうな…。ショックで寝込んで無いといいが。まあやっちまったもんはしょうがねぇか。どうだ、一人で切り盛りするってのは?」
「準備する数量を予想するのが難しいですね。最初は足らなくなって早めに閉めたし、2回目は朝から暑かったのもあってホット関係を大半余らせちゃいました。まだまだこの状態で抽出まではできませんね。」
「最初はそんなもんだろう。大変だが頑張ってみろ。絶対にお前のためになると思ってるからな。」
「全然大丈夫ですよ。お店の中とはまた違って面白いです。逆にお店に戻ると、こことのギャップがあってテンションを戻すのが大変です。」
「今も普段と変わらんように感じているのは、俺の気のせいか?まあその恰好で店に立たれても困るが。」
「もうっ、マスターったら。そんなこと言うとお店に戻んないからね。」
「それは困る…というより絞め殺される・・・あわわ。わかったからそんなふくれっつらをするな。それじゃ今日頼んだぞ。ほら、電車が止まった。お客が来るな、それじゃあ行ってくる。頑張れよ。」
「いってらっしゃい。お土産、期待してますよ。」

続きを読む


posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。