2008年09月30日

◆番外編 7.マキネッタ

毎度お越し頂きありがとうございます。番外編第7回をお届けします。
今回は、お店のお客様にお借りしたマキネッタを使用するようです。
皆さんも「お店にもあるはずなのになぜ?」とお思いでしょう。でも、オーナーの私にも詳しいことは内緒にしたままなんですよ。マスターのにやにやした笑いが目に浮かんで非常に気になります。

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「今日はマキネッタですね。マスターが変な予告をするから気になってしょうがないじゃないですか。」
「まあまあ、落ち着けって。それより前回の講習会のコメントにレスを書いていて思ったんだが、イタリアのエスプレッソは水蒸気を使うから水の硬度なんて関係ないな。」
「そういえばそうですね。蒸発する時はタダの水ですもんね。」
「まあ、結局は硬度の高い水で美味しい珈琲を淹れるために工夫されたものだとは思うがな。」
「なかなか人間の知恵って侮れませんね。」
「と言ったところで、イタリアつながりで今回のマキネッタだ。」
「基本的な淹れ方は予習してきましたよ。器具は持ってないので図書館で座学だけですけど。」
「せっかく状態が素晴らしいマキネッタを借りられたんだ、やらざるをえんだろう。それじゃあ始めようか。粉は店に置いてあるイタリアンローストを微細に挽いておいたからな。」
「それじゃあ覚えたとおりやってみますね。まず中のバスケットに珈琲の粉を詰めますね。こんな具合でいいですか?」
「まだまだだな。このダンパーでしっかり押さえてきっちり詰めるんだ。圧力がかかったときに均等に粉全体に蒸気が回るようにな。」
「わかりました。それじゃあ下のボイラーに水を淹れますね。」
「ダメだ、水ではなく湯を入れろ。」
「えっ?水から沸かすんじゃないんですか?」
「水から沸かしたんでは湧き上がる途中でも水分が上がっちまうんだ。エスプレッソって奴は短時間で一気に抽出するのがいいんだ。だからお湯を使って湧き上がるまでの時間も短縮する。」
「へ〜、実際にやってみるのと資料に当たるのではずいぶん違うものですね。」
「四の五の言ってないで続けろ。バスケットをセットしてサーバーを締め付けたら火にかける。下のボイラーは既に熱いから手袋をするのを忘れるなよ。」
「あれっ?五徳の上にうまく乗りませんよ。」
「日本のガスコンロには合わないんだ。ほら、そこに餅網があるだろ、それを使え。」
「はい。火にかけたらポコポコとすぐ音がし始めましたよ。」
「抽出が始まったんだ。音が変わるのを聞き逃すなよ。抽出の終了の合図だからな。」
「わかりました。これだけなんですか?特に難しいところはありませんね。」
「当たり前だ、家庭用の器具だぞ。それを小難しくしてどうするんだ。プロが使う場合は、常に均質な物を提供するためにテクニックを使うんだ。それでもう取り分けたのか?」
「はい、飲んでみていいですか?」
「ああ、以前に店のマキネッタで淹れた物と比較してみろ。」
「美味しい!!そうですね、以前の物に比べると苦味の鋭さが無くなったみたいです。まろやかになったって言ったらいいんでしょうか?それより香りが複雑になってずいぶん増していると思います。」
「これが25年大事に使ってきたマキネッタの実力だ。」
「時間が経つと何が変わるんですか?」
「それを知るにはマキネッタの使われ方から説明が必要だな。イタリアの家庭では毎朝これで珈琲を淹れている。毎日使うものだからサーバーやバスケットの中はさっと水でゆすぐ程度なんだ。」
「まあ、家庭にある急須を毎日しっかり洗剤で洗ったりしませんよね。」
「そうなんだ。だが、お茶と違って珈琲には油脂がある。これがサーバーの内側に付着して膜になっていく。これが芳醇な香りと柔らかさを生んでくれるようなんだ。」
「そうか、店にあるマキネッタはごくたまにしか使われないし、使った後洗剤で洗ってしまいますよね。」
「そうさ、だからこんなに大事に使われてきたマキネッタは貴重なんだよ。」
「だったらお店のマキネッタも洗わなければいいじゃない。」
「ばーか、家庭で毎日使っていればそれでもいいが、日本の気候と使用に間隔があるような使い方では逆に不衛生になっちまうんだ。黴がふいたらどうするんだ、まったく。」
「なるほど、うちのようなお店で使うには不向きなんですか。それで珈琲専門店ではマキネッタではなくマシーンの方が置かれている訳なんですね。」
「最近、理解が早くなったようだな。よろしい。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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