2008年12月21日

◇夜食のおとも

朝夕の冷え込みが厳しくなった。早々と初霜の報道があったようだ。

冷たく澄んだ空気が広がり始めた日暮れ前、最近足が遠のいていた常連の一人が久しぶりにやってきた。この商店街からは片道30分ほどもかかるはずの彼女なのに両の手一杯に買い物袋を下げている。そういえば商店街では年末の大売出しが始まっている。大安売りの横断幕には逆らえないようである。

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「マスター、お久しぶり〜。寒いわね〜。」
「おお、いらっしゃい。久しぶりだなぁ、どうしてたんだ?」
「まあ、いろいろ。今日はカフェオレをいただこうかしら。」
「おや、珍しいな。いつも気取ってマンデリンを倍量で・・・なんて言ってる奴がどうしたんだ?」
「自分で淹れてるカフェオレと比較してみたかったの。」
「ふ〜ん、何してるんだかな。ちょっと待ってろ、きっちり淹れるからな。」
「本格的に2ポットで淹れてくれるの?そこまでしなくてもいいのに。」
「ちょっと気になる言動だったんでな。」
「あら、変なところにこだわるのね。」

「お待たせ。レギュラーのカフェオレじゃないからな。」
「マスターったら、そんなんじゃないのよ。自分で淹れてるカフェオレって美味しいのかなって気になってたの。」
「はぁ?どこかで美味しい淹れ方でも教わったんで比較しようってんじゃないのか?」
「ばっかねぇ、ずっとここでいろいろ教わってるんだもの、他と比較したりなんかはしないわよ。そうじゃなくて、息子が残すのよ、私が淹れたカフェオレを。」
「ふ〜ん?朝飯はパン食なのか?」
「ううん、うちは旦那が朝食には味噌汁必須だから朝じゃないの。夜食よお夜食。高校受験を控えてしっかり勉強をする気になったんで夜食を作ってやってるんだけど、カフェオレをつけると必ず残すんだもん、ちょっと気になっちゃって。」
「ほぉ〜、主婦してるんだ。店を出ると変わるんだな〜。」
「茶々入れないで!以前昼間とかはちゃんと飲んでたの。あれから淹れ方も豆も変わってないから変だな〜って、気にし始めたら自分のせいって方へどんどん考えちゃって・・・。」
「お前んとこに届けてる豆は変わってないぞ。きっちりしてるお前のことだから淹れ方もそんなにぶれることはないと思う・・・おい、夜食だって言ったな。しかも高校受験だって?」
「ええ、中3よ。あれっ?見たことなかった?」
「なるほどな、お前さんの息子は自分のことがよくわかってるんだよ。」
「えっ?どういうこと?」
「多分息子は眠れなくなるのを避けているんだよ。珈琲の割合が多いのかもな。中学生ぐらいじゃまだまだカフェインの影響は大きいからな。前に眠れなくて困ったことでもあったんじゃないかな。」
「そういえば体育の授業でふらふらになったってこぼしてたことがあったわ。睡眠不足だったのね。どうしたらいいのかしら。」
「珈琲の量を半分にしてミルクを増やせばいいんだが、気にするようならココアにしてやったほうがいいだろうな。珈琲を飲んだって事実だけで眠れなくなることは十分にある。たとえデカフェで作ってあったとしてもな。ちなみに紅茶や日本茶は珈琲よりカフェインが多いからな。」
「わかった、息子と話してみるわ。ちゃんと通わなきゃ駄目ね。こんなに頼りになる人が近くにいるんだもんね。」
「忙しいんなら無理しなくていいんだぞ。来てくれる分には一向に構わんがな。」
「また、近いうちに報告に来るわね。ご馳走さま。やっぱりずっと美味しいわね。何が違うんでしょ?」
「愛情じゃないことだけは確かだな。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(14) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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