2009年01月19日

◇桜の季節はまだ遠い

木枯らしが吹く寒い夕暮れ。
今日は商店街の休日で店の多くがシャッターを閉めている。

いつもより薄暗い商店街の角を肩を落とした男性がこちらに向かってやってくる。受験で忙しいはずの常連の学生だった。
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「マスター、お久しぶりです。何か暖まる物をください。」
「おや、久しぶりだな。どうだ、受験準備は進んでいるのか?」
「ええ、センター試験はとりあえず終わりました。自己採点の結果があまり芳しくないんですよ。それでちょっと気分転換に寄らせてもらったんです。」
「そうか、最後まで頑張れよ。お前は例の彼女と同じ所を目指しているんだろ?彼女のためにもここから挽回すればいいじゃないか。まだまだ時間はあるさ。」
「それが、そうじゃないんです。この半年、受験勉強をしていく中で自分がこの後学びたいことが分かってきたんですけど、彼女の通う学校では学部そのものがないって気づいちゃったんです。」
「まあな、人それぞれに欲求はあるよな。しかし、お前を待っている彼女はどう言ってるんだ?ちゃんと話はしたのか?」
「ええ、この1年ずっと家庭教師の役もしてくれてましたから知ってはいます。まあ、その辺が問題っていえば問題なんですけど・・・。」
「理解してくれているんなら問題ではないだろう?」
「う〜ん、ぶっちゃけちゃうと僕の成績では彼女の大学は玉砕するのが目に見えているんですよ。それだから彼女は『背を向けて逃げ出した』って思っているようで・・・。実際、語学の成績が全然足らなくって成績が良かった彼女にとっては歯がゆいらしくって。」
「そりゃ随分大きな問題を抱えたな。それでも都内の学校を目指してるんだろ?多少離れたところで高校と大学ほどは時間的な制約はなくなるんじゃないか?」
「それが・・・一次志望で行きたいところは地方なんです。」
「ありゃぁ、そりゃあ彼女もカチンと来るだろ。付き合い始めてすぐに学校が別々になり、それでもお前が後から来てくれると思って家庭教師まがいのこともし、蓋を開けてみたら東京から離れるなんて告げられれば『この1年の私の思いはどうしてくれるの?』って気にもなるってもんだ。」
「そうですよね。悪いのは僕だって判っているから彼女に申し訳なくて。それでも後ろ向きに考えたんじゃないことだけは解ってほしいんですけど。」
「結論は結果が出てからでも遅くないと思うぞ。彼女のところも受けては見るんだろ?」
「ええ、それは当然。フロックででも受かってしまえば後で笑い話に出来ますよね。」
「ああ、そうさ。その上での選択であれば彼女にも顔が立つだろ?」
「そうですよね。彼女の説得のためにも『無理』なんて決め付けずに出来る限りの事をするべきですよね。なんだかすっきりしました。」
「すっきりしたところでこんな珈琲はどうだ?『キャラメルジンジャーコーヒー』だぞ。」
「また名前からして暖まりそうなコーヒーですね。ありがとうございます。」
「これからは体調管理が一番大事だ。最後まで気を抜かず頑張れよ。」
「いつも迷惑ばかりかけてすみません。でも、ここに来れば何か答えが見つけられるんじゃないかって期待して来ちゃうんですよ。」
「俺なんかじゃたいしたことは言えないが、愚痴やたまっているものを吐き出す相手にはなってやれるからな。行き詰ったらいつでも来いよ。」
「ありがとうございます。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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