2009年02月22日

◇早春のイベント・・・その後

急に寒さが戻ってきた。
先週の暖かさを思うと真冬に戻ってしまったような冷え込みが続いている。膨らみ始めたつぼみも固く縮こまっているようだ。

バレンタインデーから1週間が経ち、店の中にはカップルの客の姿が目立つ。
更衣室から出てきたマスターがウエイターに声をかける。

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「おい、そろそろ一週間になるぞ。更衣室に置きっぱなしの袋をそろそろ持って帰れ。」
「マスター、済みません。持って帰れないんですよ。」
「どうしたんだ、アパートに持って帰れば良いだろう?」
「マスターには言ってなかったんですが、今はあのアパートに住んでないんです。」
「そうだとしても持って帰ったって問題ないだろう?」
「駄目なんですよ。家主の方に悪いんであまり見せたくないんです。」
「お前、いったいどこに住んでいるんだ?」
「いろいろと、転々と・・・。」
「ああん?」
「二ヶ月ぐらいの周期であちこちに居候してるんです。」
「そんなに都合よく友達のところを廻れるのか?」
「そうじゃないですよ、野郎の一人暮らしに転がり込んだってむさくるしいだけじゃないですか、女性ですよ。仕事あがりで飲んでて意気投合してそのまま・・・。」
「そんなことを繰り返してるのか?いい加減きちんとしろよってもまだ20代前半じゃあな、うるさいと思うだけだろうがな。」
「いいえ、マスターのおっしゃりたい事はわかってるつもりです。ただ、僕は暗い部屋に一人で帰るのが嫌いで、女の子の部屋に一緒に腕組んで帰ったりすると喜んでもらえるのが嬉しくて、ついつい続けてしまっているんです。」
「それじゃあ何で転々とすることになるんだ?」
「お互いが飽きちゃうんでしょうか。普段の僕は仕事のことばかり考えてますから女の子の喜ぶようなこと言えないですし、普通の会社務めのOLさんとは休みが合わなくて一緒にどこかに行くこともないですし。僕のほうは喜んでもらおうと思ってしたことが当然のことのように反応されてカチンと来たりで・・・。」
「仕事ってお前、何をしてるんだ?」
「いえ、別に仕事をしてるってことじゃなくて・・・。マスターにもお姐さんにも敵わないんで僕なりにこの店で何が出来るのかって、マスターやオーナーは僕にどうなって欲しいのかっていつも考えてしまって・・・。どうなれば"坊や"と呼ばれなくなるのかなっていつもお店での自分の居場所を考えてしまうんです。」
「ほう、そんなに気にしてたのか。別にお前が未熟だから坊やと呼んでたわけじゃないんだ。俺やオーナーから見ればお前はまだこの世界に足を踏み入れたばかりのひよっ子だからな。出来なくて当たり前だ。あいつにしたってこの1年で急成長しただけであって、それまではどじなウエイトレスでしかなかったんだからな。何がきっかけで取替えの効かない自分になれるかはわからんぞ。」
「僕は今のままでこの店にいていいって事ですか?」
「自分を磨く努力は常に必要だ。だがここに来た頃のお前も忘れて欲しくない。俺とオーナーはお前に若い可能性を感じたんだ。この店を引き継げるほどになってくれてもいいし、オーナーが新たな展開を考えたときの主体となってくれてもいい。必要な時に仕事を任す事ができればいいんだ。あまり考えすぎるな。女の子とも長続きするようにもう少し楽しんでな。生真面目に考えすぎると続かないぞ。」
「はあ・・・お姐さんの生き生きした仕事振りを見ていて、自分もマスターの期待に答えなきゃいけないと気張りすぎてるって事なんですか・・・。」
「力を抜け。普通の会社みたいにみんなが同じ方向を見てなくっていいんだ。お前の力が伸ばせる方向を見つければいいんだからな。それはそうと、チョコレート処分できないんだったらうちの子供たちに分けてやってくれ。」
「ああ、マスターのお子さんにならいいんじゃないかな。頂いた女の子達に悪いかなって思って全部自分でホワイトデーまでに食べるつもりでした。」
「そんなところまで生真面目なんだな。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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