まだ梅雨は明けない。が、今年は雨粒が降らない日も多い。
今日は開店前までどんよりしていた空からいきなり雲がなくなり夏の日差しがアスファルトを焦がしている。
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「お姐さ〜ん、暑いよ〜!なんか冷え冷えになれるもの何かない〜?」
「あらっ、この暑い中良く来たわね。梅雨もまだ明けないっていうのにこの暑さは何でしょうね?一応マスターがこんな日を見越して作っておいたものがあるんだけど、それでいいかしら?」
「つめたーくなれるものなら何でもいいよぉ。」
「それなら、『氷コーヒー&ミルク』にしましょうか。甘味は必要?」
「お姐さんってば氷コーヒーってアイスを日本語にしただけじゃん。変なの・・・甘さは少し控えめの方がいいな。」
「そんなこと言って、見て驚かないでよ。ほら、こんなのよ。」
「えっ、これって名前のまんまじゃん。珈琲を凍らせた氷に牛乳をかけただけでしょ?これじゃあ一気に飲めないから僕が求める冷え冷え感にはちょっと足らない気がするけど。」
「あら〜?言ってくれるわね。でも、このコーヒーでつくった氷といってもシャーベットに近いから、口の中に直接入れて溶かしていけば冷え冷えになれること間違いないわよ。」
「それじゃあ冷えるのは口の中だけじゃん。僕は体中を一気に冷やしたいんだ。」
「単に一気に飲んでクールダウンしたいってことなのね。それならばこれをブレンダーにかければスムージーになるわよ。これなら一気に飲めるでしょ。」
「え〜っ、そんな手抜き?それなら普通のアイスコーヒーの方が一気飲みができる分いいよ。」
「ったくわがままなんだからぁ。それならこのビアマグに軽めのアイスコーヒーを倍量作ってあげるからそれで我慢しなさい。」
「やっぱりそれが一番なのかな。期待してたのにな。」
「おいっ、期待されたって限度が有るさ。それに氷水で済むようなことにアイスコーヒーを使うなんてもってのほかだ。味わって飲まない奴には何にも出してやらんぞ。」
「あら、マスターいつからそこに?」
「こいつが名前のまんまだって文句つけてる辺りかな。こんな奴にはステアグラスに氷を入れて渡してやれば充分だ。人のつけた商品名に文句なんぞつけやがって・・・。」
「マスタ〜、勘弁〜・・・。僕は美味しいアイスコーヒーが頂きたいです・・・。」
「あらら、畏まっちゃって。マスターの怒声がクールダウンの特効薬だったみたいね。」