2009年08月24日

◇遠く離れて

夏らしい気候が続いていたところに台風接近の情報が・・・。

窓辺の席で時折雨が滝のように落ちてくる空を見上げ、恨めしそうにしているお客の顔がある。足止めされてこの後の約束にでも間に合わなくなっているのだろうか。

雨の中いかにも嬉しげに女性がやってきた。遠距離恋愛中の例の彼女だった。なにかいい事があったのだろうか・・・。
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「マスター、お久し振りですっ!!」
「おおっ?本当に久し振りだな。その様子なら仕事の方は順調のようだな。一人で来るって事はまだあいつは帰って来ちゃいないようだな。」
「ええ、電話ばっかりで顔忘れちゃいそう。」
「最近の携帯はテレビ電話の機能もあるだろうが・・・。来た早々からお惚気かよ。」
「えっへへへ・・・。全然逢ってないのは本当だよ。彼は忙しくって帰ってくる暇も作れないし、私は私で任された仕事が面白くって、あっちまで行けないの。」
「ふ〜ん、それでも大丈夫って事は本物なんだな。安心したよ。お前だったら仕事のできる上司や優しい先輩に囲まれていると誘いも多いだろうからな。ついフラフラっと寂しい心の隙に入り込まれたりするからな。」
「そんなのしょっちゅうですよ。なんだかんだで毎週末飲みに誘われてます。どうしたって女性はそんなに多くないですからね。」
「そんなんじゃなくって、個人的に声かけられないかって事さ。」
「それもありますよ。大概は丁重にお断りするんですけど、断りきれないときは同僚の女性に同行してもらうようにしてるんです。」
「なかなか隙は無いようだな。感心感心。」
「でもね、先日の飲み会にすっごい格好いい男性がいたんですよ!別の部署で、普段の打ち上げなんかでは他のクライアントの関係でいつも出られなかったみたいなんですけど、初めて一緒になったんです。」
「おいおい、穏やかじゃないな。奴よりいい男か?」
「そりゃあ当然!それでなきゃわざわざ『いい男』なんて言いませんよ。」
「てぇことは、相手がその気になったら遠くに居る奴には勝ち目なしってことかな。可哀想に・・・。」
「何言ってんですか、もう。いくら『いい男』だって仕事が出来たって『彼』は別格なんです。それに・・・。」
「それに何だ?妻帯者だってか?そんなことはあまり関係ないと思うがな・・・。」
「いいえ、そんなんじゃなくって・・・。駄目なんです、ああいう人、生理的に。」
「格好いいんじゃなかったのか?」
「ええ、見た目には。でも、なんだか見ていて無理って思っちゃうタイプなんです。特に食事の食べ方が駄目。一緒に食事なんか出来ないって思っちゃった。」
「良かったよかった、波風立たなくて。奴から連絡があったらどうごまかすか困るところだったぞ。まあ、ちょっとぐらい脅かしてやってもいいかもしれんがな。」
「私は彼のことしか眼中にありませんよ〜。仕事が忙しいのはいいことじゃないですか。認められて任されて、成長して帰ってくるんですよ。私だってそれに見合うようにならなきゃって思える。そうだ、思い出した。来年度はひょっとしたら帰れるかもって言ってたんだった。マスターにも伝えておいてくれって頼まれてたんだった、御免なさい。」
「いや・・・謝られても・・・。来年度って次の4月か?まだまだ先の話だな。それに未確定情報だろ?はっきりしたら教えてくれ。帰ったらまたご馳走してやるから。」
「はい、約束ですよ!多分飢えて帰ってきますからね。特別な豆を選んであげてくださいね。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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