2008年06月11日

▽梅雨の晴れ間 〜お出かけ日和〜

梅雨入りの声を聞いてから随分たった平日のお昼近く。
外を歩くと雨が降っていなくても、湿気のせいでシャツがしっとりしてくる。
その中を日傘を差して妙齢の女性が店頭を目指して歩んできた。
若奥様がちょっと買い物のついでに・・・といった身軽な装いで進む足取りは軽く、どちらかというと大人の洋猫を思わせる外見からは楽しげな雰囲気が伝わってくる。
店の正面で日傘を閉じ、一息つくと一気に扉を引き開けた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「いらっしゃいませ〜。」
「いらっしゃりました〜。いつもおせわになっておりまんにゃわ〜。・・・あれ、マスター、こけてくれへんの?入りだけは『これでつかみはOKや』と思ってネタ繰ってきたのに・・・。」
「あのな〜。ここは東京、普段メールで俺がのってやってるからって、店頭で突然ギャグをかまされてものれるはずないだろう。一応マスターなんだぞこの店の。しかも、来るんなら来るで連絡してから来い。こっちの心構えってものがあるだろう。」
「こないだの注文メールに『近いうちにお邪魔できるかも(ハート)』って備考欄に書いておいてんけど〜。」
「こないだのっておととい来てたメールかよ!自分でとりに来るとは思わなかったんで豆はもう発送しちまったぞ。」
「大丈夫、そんな重いもの私が持って帰るわけないやん。そんなんはうちで○×ちゃんが受け取っておいてくれるもん。」
「それなら受領印欄にはお前のうちの犬の足型が押されているんだな?よく仕込んだもんだ・・・あああ、ついのってしまった、いかんいかん。それじゃあ何か?こっちで何か用事でもあって、そのついでかぁ?でも、わざわざ寄ってくれるとは嬉しいな。」
「ちゃうよ。今朝、娘たちを学校に送り出したら急に私もどっかに行きたくなって、ふらふらっと新幹線に乗ってしまってん。でもさ〜着いたはいいけど何にも予定してへんから、どっかに行く前にちょっとコーヒーでもと思ってここまで来てん。」
「ちょっと待て、新幹線ってのはふらっと乗るもんでもないと思うぞ。ひょっとして子供たちの下校時間までに帰るつもりか?むちゃくちゃな奴だな。それならコーヒー飲むぐらいの時間しか余裕はないだろ?」
「そう思うんやったら、ちゃっちゃと珈琲淹れてよー。まるっきり気が利かへんねんから。遅いことは牛でもできるよ。」
「はいはい、わかりました奥様。いつも送ってるマンデリンでいいんだな。」
「うん。それで、送ってくれた豆の分も会計一緒にしといてね。サービスもよろしく〜。」
「ああ、わかったわかった。いいからもうおとなしく座ってろ。」


「あっ、行っちゃった・・・。おきれいな方なのになんで・・・?本当に台風のような方ですね。新幹線っていったいどこからみえたんですか?」
「現住所は大阪だよ、いつも豆を送っているのは大阪だったはずだ・・・。」
「マスターの珈琲を飲むためだけに大阪から?それもすごいですね。」
「ばか、珈琲じゃないんだよ。お前の顔が見たくてやってきたんだ。新人が入ったって漏らしたら興味津々なメールが返ってきたからな。たぶん悶々と妄想を続けてて我慢しきれなくなったんだな。」
「うそっ!僕、きちんと挨拶もしていませんよ。申し訳ないことをしちゃったなぁ。」
「いいさ、気になるようならまた飛んでくるだろうからな。でも良かったな、あいつが休みで。」
「えっ?どうしてですか?」
「考えてみろ、喋り好きのボケ同士が出会ったら何を始めるのか。」
「うあああ・・・。あの方、お姐さん相手にかみ合わない話で延々としゃべくり続けそうです・・・。さっきよりもっとすごいことになっていたんですね。確かにお姐さんが休みで幸いでした。・・・ってどこかでお姐さん聞いてないですよね。」

本日のメニュー

  マンデリン

インドネシアのスマトラ島で昔から人々を虜にしてきたコーヒー。
豊かで上品な香りと苦味が特長のコーヒーで、酸味は強くない。ただ、一口飲んだ時のコクの深さは、誰もを虜にしてしまう。それが「マンデリン」の魅力。

豆の香りはコーヒーが持つ独特な焙煎の香ばしさの中にほのかに甘さを感じさせる。香りに甘さを感じるせいか、焼きたてのビスケットを思わせることもある。
芳潤な香りを持っているため、挽いた時に部屋の中に広がる香りだけでも十分に満足できる。

マンデリンのほろ苦さは決して嫌な苦味でなく、心を落ち着かせてくれるような「優しさ」であり、体を揺さぶられるような「力強いコク」も一緒に感じることができる。
この2つの風味のバランスが上手くとれているからこそ昔から人々を虜にしたコーヒーとなったのだろう。


※)出演者のイメージは作者の創造の産物です。
  界隈によく似たプロフィールをお持ちの方がいたとしても、それは他人の空似です。
※)方言に関しては地域にお住まいの方に監修をしていただきました。
  ○×ちゃんのママさん、快く引き受けていただきありがとうございました。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(8) | TrackBack(0) | 珈琲店の常連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
う〜ん、どこかで会ったことがある人だわ。
イケメンのライヴに繰り出す決心をしたのかしら?

お姐さんとの会話も聞いてみたかった(笑)

Posted by Luna at 2008年06月11日 08:00
★Luna さん

いらっしゃいませ。マンデリンをどうぞ。

>イケメンのライヴに繰り出す決心をしたのかしら?
ああ、もう少し書き始めるのが遅れればそのネタに絡ませるところでした。

>お姐さんとの会話
これは頭痛いっす。微妙に噛み合わない会話を延々と続けるのは難しすぎます。
Posted by 銕三郎 at 2008年06月11日 09:19
遅くなりました。

イケメンくん目当てで新幹線に乗ってもいいことに気づかされました。化け猫になってイケメンくんに取り憑く話でなくてよかったです。
また飛んでいきますので心構えしておいてください。お姐さんと○×ちゃんのママさん(犬?)によろしくお伝えください。

あ、注文でしたね。マンドリンをください。
Posted by 洋猫 at 2008年06月11日 18:00
今日は気分を変えてマンデリンを下さい♪
思いついたままに新幹線に乗るくらいの身軽さがあるってすごいですよね〜。
確かにお金と時間さえあればできるんでしょうけど、なかなか踏み切れないですよね。
Posted by 花咲もも at 2008年06月11日 19:29
★洋猫 さん

いらっしゃいませ。マンドリンですか〜?ギターとウクレレなら多少弾けますがマンドリンは触ったことないですよ〜。Gさんが間違ったマンダリンをどうぞ。

>化け猫になってイケメンくんに取り憑く
出ていただいているのに化け物に描くのは心が痛いので考慮外でした。

>○×ちゃんのママさん
首の長いあの方のことですよ。よろしく言っておきます。

Posted by 銕三郎 at 2008年06月11日 21:45
★花咲もも さん

いらっしゃいませ。マンデリン初体験ですか?

>なかなか踏み切れないですよね
自分の家族ができると動けなくなりますね。
一人の頃は用もないのに長距離電車にふらっと乗ってしまったことがよくありました。終点まで行って、そのまま(駅から出ないで)帰ってこればお金を使わず一日楽しんでこれました。
Posted by 銕三郎 at 2008年06月11日 21:53
あいや〜、くたびれる〜。
マスター、マンドリルお願いします。

いや〜、いい意味でも悪い意味でも物見高い人ってのはいるもんですね〜。
洋猫さんのような方ばかりなら、いいんですけどね。
酔っ払い客とかも、喫茶店では困りますね。 (^_^;)
Posted by アキラ at 2008年06月17日 11:05
★アキラ師匠

いらっしゃいませ。
いきなりレッドデーターブックに載っているものを注文しないでください。罰として仮装した上で店頭でマンドリンの演奏会をしていただきますよ。
マンデリンをおとなしく飲んでいてください。

>くたびれる〜。
大変なところに足突っ込んでいるな〜と他人事として傍観していました。やっと9種に戻ってこられてほっとしていましたよ。

>酔っ払い客
暴れたり他のお客様に迷惑をかけなければ大丈夫ですよ。気の大きくなった酔漢には高いメニューを選んでいただいて満足してお帰りいただきます。

Posted by 銕三郎 at 2008年06月17日 12:02
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/100118898
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。