2008年11月12日

◇父親の影

地球温暖化と言われながら、今年は冬が来るのが早いようだ。昨年よりもずっと寒い日がこんな時期から続いている。朝晩には息に白い物が混じるのももうすぐだろう。

いつもは陽気な中年のサラリーマンが今日は少々肩を落としてやってきた。
カウンターに席を定めると深いため息をつきつつマスターに話しかける。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「マスター、相談に乗ってくれるかい?」
「ん?改まってどうしたんだ?らしくないね。」
「ちょっと悩んでいることがあってね。同年代で同じように親も子供もある、しかも気を置かないで相談できるなんてマスターぐらいしか思いつかないんだ。話を聞いてくれるかい?」
「俺なんかでよければ。但し、世の中で言う正しい意見とは程遠いものしか出してやれないかもしれんぞ。」
「構わないよ。そういいながら前だって助けてくれたじゃないか。今回は自分の考えを整理できれば恩の字なんだ。」
「わかった。仕事があるから中断することになることもあるが構わないんだな。」
「ああ、わかってる。入り組んだ話じゃないんだ。以前に子供のことで相談したときに自分は親父との接点が非常に少なかったって話したことを覚えていてくれるだろうか。」
「そうだったな。親父の存在感が薄いために子供に対する親父像が構築できないって話だった。その後は大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思う。マスターに『女性と違って男は最初から親父ではないんだ。子供と向き合って、自分なりの親父になるしかないんだ。基本的なモデルはいくらでもあるが、子供を見てればどうアレンジすべきかもわかってくるさ。』って言ってもらった事で肩の荷が下りた気がしたんだ。なんとなくではあるけれど家で親父をやれているよ。今回は自分の親父のことなんだ。」
「親父か・・・、俺もあまり参考にできるような親父をもっていないからな。ま、とりあえず話してみろよ。」
「ありがとう。実は親父の状態が悪いようなんだ。詳しいことはわからないんだが、突然行方不明になっちまうらしい。」
「徘徊・・・って訳じゃないんだな。」
「ああ、お袋と一緒に病院から帰る途中でいなくなったらしい。数時間後には見つかったんだが、お袋は車に乗れないから、道に詳しい知り合いに頼んで探すのを手伝ってもらってるそうなんだ。」
「ってことは過去に何回か起こっていると・・・。」
「そうなんだ。定年でリタイアした後10年になるんだがここ5年間でだんだん多くなってきているんだ。それで親父が俺たちをわからなくなっちまう前に顔を見せに一度帰って来いってお袋が言ってるんだ。」
「お袋さんが気が弱ってるんだな。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

「あん、もうマスターってば他のお客さん放りっぱなしで・・・。まあたまにはいいかな。そのまま休憩ってことで私がやっときましょう。オーダーシートは見えないようにっと。真面目なおじさんたちの会話は邪魔しちゃ悪いからね。」


 

本日のメニュー

  カフェ・カリプソ

コーヒー、ティアマリア、ジャマイカンラム、砂糖をそれぞれ入れてよくかき混ぜた後、泡立った生クリームを浮かべる。カリブ諸島でよく飲まれている。

ティアマリアはジャマイカ産のコーヒーリキュール。サトウキビから作られた中性スピリッツ(ラムの一種)にコーヒー粉を浸漬したものだ。
コーヒーリキュールといえばカルーアがとても有名だが、カルーアに比べてコーヒーの風味がしっかりと溶け込んでいるので、爽やかな苦みが味わえてすっきりした口当たりが楽しめる。
残念なことにティアマリアは酒店などでもあまり目にしません。見つけたら試してみてくださいね。



posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☁| Comment(7) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます。
カフェ・カリプソ下さい。
ティアマリアは初めて聞きました。普通にカクテルにも使えるんですか?

親子の関係って大人になるほど難しくなることってあるんですよね〜。家は複雑ではないけれど、お手本になるような家庭ではなかったので、お客さんの気持ちが分かるような気がします。
問題の無い家庭なんてないんでしょうけどね〜。

おねいさんの大人の対応がいいなぁ。
Posted by 花咲もも at 2008年11月12日 09:29
★花咲もも さん

いらっしゃいませ、カフェ・カリプソをどうぞ。

>普通にカクテルにも使えるんですか?
コーヒーの味と香りは個性が強く3つほどしか名前の付いたカクテルはありませんでした。ミルクと混ぜるのが一般的ですね。

あまり個人が特定されないように適当なところまでで抑えたんですがモデルがあります。結構しんどいようでした。

>おねいさんの大人の対応がいいなぁ。
こういう気配りをサラリとできる女性っていいですよね。徐々に彼女は私の理想像に近づいていくようです。別にそのつもりで書いてきた訳ではないんですけれど。
Posted by 銕三郎 at 2008年11月12日 23:58
お久しぶりです。
カフェ・カリプソ お願いします♪

ティアマリア、知りませんでした。
へぇ〜、今度から気にして見てみます。
飲んでみたい。

今回の話の終わり方、好きです。
展開があるようでないようで、そのままフェードアウトしていく・・・。
こちらの中では 読み終わった後から始まって、ずっと考えてしまいますね。

知り合いに、義理の両親が2人も認知症になってしまった人がいますが、本当に大変そうでした。
一緒に生活している方々には、頭が下がります。
Posted by アキラ at 2008年12月04日 11:43
★アキラ師匠

いらっしゃいませ、カフェ・カリプソをどうぞ。

>今回の話の終わり方、好きです。
ありがとうございます。
内容が内容だけにしっかり最後まで書くと重くなりすぎるので、途中で暈すにはどうしたらいいかなと考えた結果です。
皆さんでそれぞれ自分のご両親を思っていただければよいかと思います。

>義理の両親が2人も認知症になってしまった人
大変だぁ〜!奥さん(家にいらっしゃるので・・・)気が休まる時がなくなってしまいますよ。

記念の1100コメントでした。お会いした際に試作品の味見の権利を差し上げます。
Posted by 銕三郎 at 2008年12月04日 21:40
うううー、今朝、うちに泊まりしていた友人があまりにもおししそうにコーヒーを飲むので、付き合って、私も久々にコーヒーを飲んだら、胃が痛くなったーーー。

シクシク。(涙)
Posted by minira at 2008年12月06日 13:18
p.s.

ティアマリア...「マリアおばさん」って意味なんですよね。イギリスではどこのスーパーマーケットでも売っていますよ。
日本ではあんまり手に入らないんですか...そんな高いお酒じゃないから、今度ロン友が遊びに来る時に持ってきてもらおうかしら...

そしたら飲み会します?
Posted by minira at 2008年12月06日 16:16
★minira さん

いらっしゃいませ、珈琲はいけませんか?それではオルゾ・ラテにブランデーにしておきましょうか?

>日本ではあんまり手に入らないんですか...
そうですね、普通の酒屋さんにちょいちょい置いてあるような状態ではありません。なにせ日本ではカルーアのほうがメジャーで同系統のものを2種類置くこと自体が考えにくいですからね。
少し大きめの「酒屋」ないしは「リカーショップ」へ行けばあるかもしれませんね。

最近の酒屋さんはこの店で「缶コーヒー」ばかり注文されている状況に近いでしょうね。

>そしたら飲み会します?
しますします!誘ってくださいね!
Posted by 銕三郎 at 2008年12月06日 23:19
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