2009年06月17日

◆総合編 1.焙煎と抽出

毎度お越し頂きありがとうございます。今回は総合編の第1回をお届けします。

美味しい珈琲を味わうには様々な条件が複雑に絡み合い、それぞれを充分な状態にする必要があります。総合編ではそこら辺りを説明できたらと思います。

今回は焙煎と抽出についてです。
応用編では個別に紹介しましたが、本来別々に考えるものでは有りませんので、合わせた形で再度紹介していきます。
あれ?どうも研修会から話がずれていってしまいそうです・・・。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「マスターおはようございます〜!」
「おお、おはよう。今日も無駄に元気そうだな。」
「無駄には余計です!!今日はどんなことをするんですか?」
「豆を3種類ほど用意してみた。まずはこの豆それぞれを普通に淹れて味見するところから始めよう。」
「了解です。3種類はどう違うんですか?」
「それを判別するのが今日の課題だ。とにかく思うように挽いて淹れてみろ。」
「なんだか頭の上に疑問符が一杯浮かんでるんですが・・・。それじゃあそれぞれの豆を拝見します。・・・そうですねぇ、一応中挽きで挽いてレギュラーの一杯取りで淹れてみます。」
「随分慎重だな。まあいい、好きにやってみろ。」
「はい、・・・それぞれ名前がないと判りづらいんでA・B・Cと勝手に呼び分けますね。Aは匂いと味からすると、うちで普段に出しているキリマンジャロですね。これが基準って事かしら。Bはそれに比べると随分と焙煎が強いと思いますね。淹れてみても酸味があまり有りません。でも甘みがほんのりと舌に残っているようですね。こんな焙煎具合でもありなんですね。Cの焙煎度はAとあまり変わりがないようですが味わいが随分薄っぺらい気がします。なんだか香りにも味にもシャープさがないように感じます。」
「Aは正解。それではBとCに関してはどう思う?」
「Bは同じ生豆をフルシティ・ローストまで強く焙煎したものだと思います。Cはどうしたんだろう?豆のグレードが違うのかしら。」
「2/3は正解だ。Cはちょっといたずらが過ぎたようだな。じつはCは家庭用の笊を金網代わりにして俺が焙煎してみたものだ。」
「マスターがおうちで焙煎したんですか?道理で・・・いや、ぶたないで。」
「もう少しまともなものになるかと思ったんだが、火力や器具の違いは明らかだな。お前が言うような味の鈍さは芯まできちんと火が通っていないことが原因と思われる。」
「生焼けですか。表面的にはミディアムに見えるけど中はシナモン程度にしか火が入っていないんだぁ。それじゃあ同じ程度に見える豆でも味わいに差が出るわけですね。」
「あくまでわざとこんな豆を作ってみたんだからな。」
「わかってますよ、子供みたいに変に言い訳しなくたって。だって焙煎用の金網が倉庫にあるのぐらい知ってますよ。もしかしてこんな焙煎しか出来ないから豆屋さんに焙煎してもらっているんだなんて思うと思いました?」
「誤解されても困るからな・・・。」
「私はわかってますよ。お付き合いのある豆屋さんにしろケーキ屋さんにしろ相手は本当にプロフェッショナルなお仕事をされている方ばかりじゃないですか。相手の仕事を信頼してお任せしているんでしょう?その分お店に集中していられるんですもんね。」
「それほどカッコいいものじゃないさ。俺以上の仕事をしてもらえるんなら任せるようにしているだけの話だ。その方が俺も楽が出来る。」
「でも、珈琲の味を決める重要な作業じゃないですか?そんなところを任せてしまっていいんですか?」
「その為に開店前にオーナーと1ヶ月かけて味を決めたんだ。この店で使用する豆の量を毎日焼くにはそれなりの施設と手がかかる。俺はそれほど器用じゃないんで、焙煎中の豆の状態に気がそぞろになってしまってお客の相手が半端になっても本末転倒だしな。きちんとした仕事をしてくれるのであればその方がいいさ。」
「でも、最近5分で焙煎するってお店がありますよ。そんな焙煎機ならお客さんの目の前で焙煎して差し上げられるんで喜ばれるんじゃないですか?」
「電子レンジで焙煎するのがいい結果を生むとは思えんな。何でも電子制御にすればいいってもんじゃない。工業製品ならいざ知らず農作物を画一的に扱うなんてナンセンスだ。」
「そっか〜、豆全体に火を通すには一定の加熱時間が必要で、それがたったの5分じゃ直火や熱風型の焙煎ではないって事ですね。焙煎の世界にまでレンジ調理が入り込んできている訳なんですか。」
「生豆ごとに水分の含有量も違い、焙煎時間も調節してやらなければいけないはずなのに、機械任せにするなんて暴力的なこと俺には出来ないな。だからあんな機械はパスだ。」
「そうですね、生豆>焙煎>抽出って言われるぐらい焙煎の具合は味を決める上で重要な工程ですもんね。専門店を謳う限りおろそかにすべき点ではないですよね。」
「抽出の段階では正しく淹れるかそうじゃないかの違いしかない。俺が正しく淹れている限りうまい珈琲を提供し続けることが出来る。それ以前の部分は正しい仕事をして貰えているわけだからな。それでもロットごとのブレは多少ある。俺にしてみればそれも味だと思うんだがな。」
「試飲と豆のチェックを欠かさない理由ですか。でもそれなら私なんかが抽出していていいんですか?」
「俺が認めたんだからあんまり自分を卑下するな。お前の腕は充分世間で通用するんだぞ。まだ経営面での鍛え方が足らないし、圧倒的に経験不足でもあるから独立させるわけにはいかないがな。」
「独立・・・?考えても見なかった。そんな方向もマスターの視野には入っているんですか?」
「ああ、立派に巣立ってくれるのを見守っている親鳥の心境でな。まあ寿退社の方が早そうではあるがな。」
「あの・・・それは・・・えっと・・・研修会はどこへいっちゃったんでしょうね。」
「最後のまとめさえしっかりしとけば大丈夫だ・・・と思う。本当に大丈夫かな・・・?」
「うわっ!マスターってば大胆!」


 

本日のまとめ

  焙煎と抽出

焙煎は個々の豆が持っている味わいを析出させるために行われる。
最終的な珈琲の味を決める重要な工程となる。
焙煎度の違いにより味わえるものが違ってくるため、焙煎を行う者の感性がものをいう部分でもある。
ただし、元になる豆の持つもの以上には入手することは出来ない。
音楽で言うとアレンジにあたる部分ではないかと思う。
そういった意味では抽出は演奏に過ぎないと思われる。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
青山の大坊ではマスターが店内でガンラガンラと焙煎していますね。あの香りも好きなんです。
でも「プロフェッショナルの分業」には納得します。それぞれがそれぞれの持ち場で最善の仕事をして、美味しいコーヒーが飲めればベストですわ♪
Posted by ひそそか at 2009年06月19日 09:32
あ、お客さんだ〜!もう誰も来ないのかと思っちゃった。

★ひそそかさん

いらっしゃいませ〜。マスタ〜!いつものお願いします。

>青山の大坊ではマスターが店内でガンラガンラと焙煎していますね。
そういうのもいいですよね。焙煎したての豆の香りは格別です。
でもうちのマスターは器用にこなせないんですよ。ちょっとした珈琲の抽出でも黙りこくったりしかめっ面になったりして、カウンターに座ったお客さんが怖がることがあるんです。

あ、そうだ。ひそそかさん、通算1200件目のコメントです。お礼にマスターが「着ぐるみキューピー」をご用意していますよ。リアルなご対面の機会にマスターから奪取してください。
Posted by お姐さん at 2009年06月19日 11:07
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。