2009年06月29日

◇延べ棒の山

梅雨の中休み。日差しが強く蒸し暑い。
路地裏の紫陽花は首を傾げ、元気がない。そろそろ花の時期も終わりが来そうだ。

カウンター上の冷蔵ケースの中には珍しく焼き菓子が積まれている。
カウンター席に座った若い常連がそのことに気が付いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「おや?マスター、今日はいい香りがしますね。甘くってアーモンドとバターが香ばしい・・・。フィナンシェですか?」
「よくわかったな。今日のサービスはカフェ・シュバルツァーなんだ。ビターチョコでも良かったんだが、フィナンシェがたくさん用意できたからな。」
「つき物なんですか?」
「ああ、荒挽きの3倍量の粉を使って濃く淹れたイタリアンローストブレンドだから飲んだ後に口の中をさっぱりさせたくなるんだ。炭酸水と一緒に口に含んでみればわかるさ。」
「普通の水やミネラルウオーターじゃないんですね。」
「もともと飲まれている地域はドイツからオーストリアだから水より炭酸水の方が美味しかったんだろうな。そこに焼き菓子をあわせるところがおしゃれだよ。」
「マスター、結構このアレンジ珈琲好きなんですね。」
「ああ、この贅沢に豆を使った濃さが好きなんだ。フィナンシェなしでも構わないから、たまに自分で飲むために作ったりしてるんだ。よくあいつに見つかって原価率が・・・とか代金払えとかうるさく言われちまう。」
「あはは、最近お姐さんも経営者側になっているんですね。ますますマスターが楽できていいじゃないですか?」
「そうじゃないんだ、俺に対してばっかりでうるさくっていけないよ。気楽に味見すら出来ないんじゃあな。」
「マスターが味見の域を超えてるからでしょう?嬉しそうに自分の飲む分をフルサイズで作っているから怒られるんですよ。」
「お前までそんなことを言うのか。ああ、俺の味方はだ〜れもいないのか。」
「拗ねたって可愛くないですよ。それより僕にも本日のサービスをお願いします。」
「ふん、フィナンシェは品切れだからな。」
「そんなぁ、そのケースの中で山と積まれているじゃないですか。常連を蔑ろにしないでくださいよぉ。」
「俺の味方じゃない奴は常連を名乗る資格なんかないね。」
「そろそろお姐さん、帰ってきますよね。それじゃあお姐さんにお願いしますよ、もう。」
「そ、それは・・・。ほら、もう出来ちまった、フィナンシェはサービスで2つつけてやるから、な。」
「そんなことすると、また後でお姐さんにつまみ食いしたって怒られますよ。」
「うう・・・、この店は俺の店なのに・・・。」


 

本日のメニュー
  フィナンシェ

フランス語で資本家・金持ちという意味があり、その象徴である金の延べ棒の形に見立てた焼き菓子。
バターがたっぷりと使われており、しっとりとした口当たりが特徴である。
アーモンドパウダーとバターの焦げた香りがこうばしい。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☔| Comment(8) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新しいスキンも素敵ですね!
フィナンシェ大好きです。「お金持ち」という意味だったとは初めて知りました。ますます好きになったかも。(笑)

ところでこのフィナンシェ、マスターが焼いたの?
Posted by ひそそか at 2009年06月29日 15:28
★ひそそか さん

いらっしゃいませ。カフェ・シュバルツァーをどうぞ。

>新しいスキンも素敵ですね!
ありがとうございます。「金魚」のスキンからここまでするのに随分試行錯誤しました。夏に向けて涼しげにしたかったんですが、手を入れるごとに暑苦しくなってしまって・・・。

>ところでこのフィナンシェ、マスターが焼いたの?
いやいや、マスターはお菓子作りなんて正確な計量が必要な作業が出来るはずがありません。大雑把なんですから。
いつもケーキを納品してくれるパティシエの彼が作りすぎたとかで持ってきてくれたものです。
Posted by 銕三郎 at 2009年06月29日 16:00
すっかりご無沙汰してました。
爽やかに模様替えされていて素敵です^^
そんなことができてしまう技術力が羨ましい限り☆
フィナンシェの名前や形の由来をはじめて知りました。
これからは違った目線で見ちゃいそうです^^
Posted by Home-Design at 2009年07月01日 10:14
★Home-Design さん

いらっしゃいませ、お久し振りです。私の方こそご無沙汰しています。
サービスのカフェ・シュバルツァーをどうぞ。


>これからは違った目線で見ちゃいそうです^^
そうですよね。金塊を模した物と知ると有り難さも違ってきますね。

>爽やかに模様替えされていて素敵です^^
さ、爽やかですか・・・?よかった、そう言っていただけて。目指した方向がまさにそれでした。
「夏らしく爽やかに」
そう見えるようなら成功ですよね。

ちなみに、技術力ではなくtry&errorの繰り返しの結果です。
Posted by 銕三郎 at 2009年07月01日 14:51
お姐さん、すっかりしっかり者ですね。恋は女性を変えるのでしょうか(笑)。
マドレーヌとフィナンシェは似て非なるもの、私は断然フィナンシェ派です。バターがジュワ〜と滲み出てくると幸せを感じます。
Posted by ひより at 2009年07月02日 20:18
★ひより さん

いらっしゃいませ、カフェ・シュバルツァー(フィナンシェ付)をどうぞ。

>マドレーヌとフィナンシェは似て非なるもの
材料は大して変わらないんでしょうね。しっとりした食感が私も大好きです。

>お姐さん、すっかりしっかり者ですね。
そうなんですよ。どんどんしっかりしてきてしまってボケ役が似合わなくなってきました。キャラクターも成長するんですね。
Posted by 銕三郎 at 2009年07月02日 21:32
翻訳家のRoolyです(「初めまして」の方は、URLごらんくださるとうれしいです)。

フィナンシェも大好きです。特にアーモンドの香ばしさが。コーヒーはいつもエスプレッソなのですが、カフェ・シュバルツァーってどんなですか? それも興味あります。
Posted by Rooly at 2009年07月09日 18:21
★Rooly さん

いらっしゃいませ、ついに追いついちゃいましたね。カフェ・シュバルツァーをフィナンシェ付でどうぞ。

>カフェ・シュバルツァーってどんなですか?
ドリップで淹れますので、エスプレッソとは違いさらりとした飲み口になります。3倍量の粉を使用しますが、荒く挽いたものなので濃すぎることはありません。ただ、さすがに苦味が強いので一口ごとに付け合わせの炭酸水で口の中を濯ぐようにしてサッパリさせると次がまた美味しくいただけます。
Posted by 銕三郎 at 2009年07月09日 20:54
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