2009年11月25日

◆番外編 15.農作被害

各地に猛威を振るった台風が過ぎた。
以前から停滞していた雨雲を全て連れ去ったかのような青い空が広がっている。
通過後しばらくは強風が吹き荒れていたが、今はそれも治まったようだ。

強めの日差しではあるが確実に秋の気配をはらんだ風の匂いが心地良い。
強風にも耐えた曼珠沙華の朱が誇らしげである。

ウエイトレスがカウンター越しにマスターに質問をしているようだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ねえねえマスター!今回みたいな台風って珈琲に影響あるの?」
「そうだな、珈琲農園のある地域を直撃して不作になったら多少価格に影響は出るな。」
「珈琲の生産地って確か・・・?」
「ああ、台風とおなじ熱帯性低気圧が発生するまあご近所だな。サイクロン・ハリケーン・台風と発生地域で名称は変わるが同様のものだ。」
「ご近所って・・・?」
「ふんっ、そんなことも知らんのか?コーヒーベルトは回帰線近辺の内側、いわゆる赤道近辺をを指すが、熱帯性低気圧の発生地域はそれに重なってはいるが赤道近辺だけは含まれないんだ。」
「それなら中央アメリカの国々なんかは直撃は少なそうですね。」
「それに熱帯性低気圧は海上でないと発生しないし発達もしない。」
「内陸の生産地も大丈夫ってことですね。そっかぁ〜、日本に居ると台風って秋の定番みたいに感じるけど、そう思っているのは大洋に隣接した地域の人たちだけなんですね。」
「そういうことになるな。しかも世界中で年間90個程度発生しているが、南半球分が約30個、西太平洋から日本方面に30個程度くるから他の地域には30個程度しか向かわないんだ。だから直撃確率もかなり少ない。」
「へ〜、そんな確率なんですね。でも直撃しちゃったら・・・?」
「被害状況にも因るが、農園全体がやられちまったら3年間はその農場からは生産されなくなっちまうはずだ。生産できるようになっても元のような豆が作れるとは限らない。」
「自然を相手にした農業って大変なんですね。」
「だがな、そんな突発的な気象被害は一部に限られるんだ、実は。生産農家が最も恐れているのは冷害なんだよ。」
「あんなに暑いような地域なのに?」
「思い出してみろ、珈琲豆のグレードは何で決まることが多いんだ?」
「えっと・・・、不純物の混入度合いはこの際関係がないから・・・高度?そうか、温度差が大きすぎても問題が発生するんだ。」
「正解。昼間に温度が上がりきらず、そのまま放射冷却で温度が下がったら下手すると霜が発生する。それが続いたら一気に冷害・霜害となる。この方が熱帯性低気圧の被害より確率は何倍も大きいんだ。」
「ぎりぎりの限界点で栽培されているからなんですね。」
「植物にとって少しぐらいのストレスがあった方が、いろんな意味で有効な育成条件になるんだな。よく言われるのが果実の結実後は水遣りを控えると糖度が増すとか、麦の新芽は踏むことにより茎が太く倒れにくくなるなんてのがある。」
「人間でもそうですね。甘やかされるよりは厳しく鍛えられた方が結果が付いてくるようなところがありますもんね。」
「まあ、『与えられた環境の中で生き残った』奴が植物でもよりうまくなるってことだ。台風にも温度変化にも耐えてきた豆こそがスペシャルな豆となりうるってことだ。」
「そうですね。・・・あ、ひょっとして、やっと本題に戻ったってほっとしているでしょう。」
「今回は収拾つけるのが難しかったんだぞ。」
「マスターがあちこち広げすぎるからですよ。」

本日の追加情報
  珈琲豆の病害

天候不順などにより農園全体で起こりがちなのが『霜害』ですが、『病害』もかなりの発生率となります。
『さび病』といい、葉の裏側に葉サビ病菌が付着することで、オレンジ色の斑点が出る葉の病気です。こうなるとやがて葉は枯れて、収穫量も著しく減少し、木も2〜3年以内に枯死するとされています。
アラビカ種はさび病に弱く、セイロン(スリランカ)、インドネシアなどで栽培されていたアラビカ種が全滅してしまったため、これらの地域では耐病性をもっているカネフォラ種(ロブスタ種)が普及することになったということです。

posted by 銕三郎 at 12:00| 東京 🌁| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
翻訳家のRoolyです
(「初めまして」の方は、URLごらんくださるとうれしいです)。

コーヒーの産地が台風被害を受けると、本当に大変ですね。
適正気温が微妙、病気もこわいってこと、初めて知りました。
いろいろ勉強になりましてありがとうございます。

落ち葉がハラハラ…素敵ですね。
Posted by Rooly at 2009年11月28日 14:28
★Rooly さん

いらっしゃいませ、いつもありがとうございます。
今日は「エキゾチックカフェ」でいかがでしょう?
シナモンとアニスのスパイシーな香りに黒砂糖の甘みをプラスしました。

>落ち葉がハラハラ…
毎年恒例のブログツールなんです。この後は雪が降ることになります。

>いろいろ勉強になり・・・
私も、書くためにあれこれ調べてみると知らなかったことが山ほど出てきて、いつも楽しんでいるんですよ。
Posted by 銕三郎 at 2009年11月28日 23:57
翻訳家のRoolyです。
アニスって確か、中華に使う「八角」ですよね。
わりに形がかわいいので、形を残してクッキーの
飾りなんかにも使われてるとか。
インターナショナルですね。
Posted by Rooly at 2009年11月29日 12:34
★Rooly さん×2

>アニスって確か、中華に使う「八角」ですよね。
同じ成分を含んでいますが、類縁種ではないようですね。「八角」の方が安価なため代用させることはあるようです。

>わりに形がかわいい
「八角」の形は独特ですよね。乾燥して売られているものを見るたびに赤とか緑に染めてみたくなります。
Posted by 銕三郎 at 2009年11月29日 20:50
翻訳家のRoolyです。たびたびすみません。
シナモンにもいろんなタイプがありますが、
私は主にパウダーを使っています。

「スティックは煮出してほのかな香りを楽しむ」と
料理好きの友人に最近教わりました。
それまで鰹節の発想で「削りたてのフレッシュな
香りを楽しむ」ものと思ってたバカな私です。

コーヒーにシナモンスティックを添えることもあるそうですね。
工藤静香さんの好みだとか、読んだことあるような…。
Posted by Rooly at 2009年11月30日 08:38
★Rooly さん×3

>コーヒーにシナモンスティックを添えることもあるそうですね・・・
一般的にカプチーノにはスプーンの代わりにスティックを附けます。中にも既にパウダーで添加はしているんですが、より香りを広がらせるためかと思われます。

>「スティックは煮出してほのかな香りを楽しむ」
お菓子や料理に使う場合はその使い方が基本となります。パウダーは煮出す手間なく強い香りが得られるので最後の香り付けに、スティックは奥から漂う芳しさを求めたり臭みを抑える目的で煮出して使用します。

また、良く似たより香りの強いスパイスに「カシア」があり、こちらは塩味の強い料理に合うようですよ。
Posted by 銕三郎 at 2009年11月30日 12:04
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