2007年05月08日

第9話 酔い冷まし

一般家庭では夕飯の時間帯。
カウンター席に残されたアイスグラスは汗を大量に付着させている。中の珈琲は2層に分離し、飲まれないまま放置されたことが見て取れる。深い褐色のコーヒー液にも白濁はなく、ミルクすら入れられていないようだ。
それに反し冷タンは空。さっきまで座っていた客は、お冷だけで喉を潤したようである。
その客はウエイトレスに支えられ先ほど店を出たところである。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「あのお客様の奥様が迎えにみえましたよ。」
「ご苦労さん。奥さん『いつも申し訳ありません』って笑って迎えにきたろ?」
「しょっちゅうなんですか?奥さんも大変ね。」
「月に1〜2度かな。こんな酔い方すんのは。」
「おうちが近いんだったら、まっすぐ帰ればいいのに。」
「奥さんに甘えてるんだよ。迎えに来て欲しいんだな。」
「一体何時から飲んでたんでしょうね。こんな時間に正体不明になるって。」
「多分4時ごろからじゃないか?あの人の業界じゃ多分普通の時間だよ。夜明け前から仕事してっからな。」
「え〜、信じられない。夜遊びできないじゃないですか。私にはできない仕事ね。で、何ですか、その仕事って?」
「市場の仲買人。青果の仲卸つってもわかんねえな。よくテレビで番号のついた帽子をかぶってセリをしてる風景が映るだろ、あれが仲買人だ。」
「へー、てっきりそこらの八百屋さんのご主人が参加してると思ってた。毎日、朝早くから夜まで大変だなって・・・。」
「いい加減にしろよ、ここらだけでも何軒の八百屋があるんだよ。仲卸が大卸からセリで買って小売に販売するんだ。スーパーなんかだって仕入れ方はおんなじだぜ。」
「ふーん。じゃあ普通のサラリーマンになってる学生時代のお友達なんかと呑もうなんて考えたら、翌日は仕事になんないわね・・・。そんな生活イヤかも。」
「下手したら終電なくなる前にもう荷が着いてることもあるからな。おちおち飲んでも居られない。」
「健康の為に早起きをとかいうけど、やっぱり限度がありますよね。」
「でもな、いったん自分の仕事と選んだからは突き詰めてやりたいじゃないか。そして体を壊したりして初めてやりすぎに気づくんだ。俺だってこの店を始める時に考えたんだ。」
「何を・・・ですか?」
「俺が睡眠時間を削れば焙煎もブレンドも全部自分でやれるんだってな。真剣にそう思い込んでた。」
「マスター・・・馬鹿でしょ?」
「言われてもしょうがないな。師匠にも本気で怒られた。」
「当たり前でしょ、体壊してからじゃ遅いわよ。」
「でも、師匠が怒ったのはそこのところじゃなかった。自己研鑽と研究の時間がなくなることに文句付けられたんだ。」
「あ〜あ、弟子も弟子なら師匠も師匠ね。ほんとに馬鹿なんだから。」

 


<本日のメニュー>
  アイスコーヒー
フレンチまたはイタリアンローストの豆を細かく挽き、じっくりと抽出したコーヒー液を、クラッシュまたはブロックアイスを詰めたグラスに一気に流し込み冷却する。甘味は冷却前にグラニュー糖を溶かし込むか、ガムシロップを付ける。
お好みでフレッシュクリームを添えて。
以前は、大量に淹れたアイス用コーヒーをそのまま冷蔵庫で冷やして、注文ごとにグラスに注ぎ分けいくつか氷を浮かせて提供するのが一般的だった。この方法では最初と最後に提供される珈琲の味は大きく変化している。そのため専門店では前者の提供方法が採用されるようになった。
さすがに、低価格のコーヒーチェーン店ではいまだに後者で提供しているようである。手間と時間がかかりますからね、一杯取りは。氷の量なんて倍以上かかります。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲の存在った風景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
〉体壊しては…
そうそう!
バイトしていた喫茶店の店長。
朝7時から夜11時まで店を開けて、その後徹マンにいっていて、脳梗塞で倒れたんですよ。。。

やー、本当に、お仕事は自己管理ですよね。
つーか、働きすぎは良くないです!
大体、残業が厳しい人は仕事ができない人なんですよ!!。
ぷんすか!!


え?、私??
………今仕事帰りですよぅ。。。涙。
しかも、終わらなくって途中帰宅ですorz。。。
ああ、仕事ができる人になりたいわ。
Posted by ぺこぽこ at 2007年05月08日 00:24
★ぺこぽこ 様

こんな時間にご帰宅ですか?公私にわたりご苦労様です。「モカ・マタリ」の香気に包まれてお帰りください。

働きすぎは良くないですよ。体は一箇所壊れると次々と壊れていくものです。
健康第一で生きましょう。

Posted by 銕三郎 at 2007年05月08日 00:40
胃が疲れていると、コーヒーは飲めなくても、香りだけ楽しみたいときがあります。
この仲買人のおじさんのように、コーヒー店のなかで水だけ飲んでる気持ち、ほんの少し分かるかも(笑)。焼肉のにおいだけでご飯3杯食べちゃう高校生みたいな話ですが(ちょっと違うか)。
コーヒーの香りってすごく落ち着くんですよね。
Posted by にんじん at 2007年05月08日 03:04
★にんじん 様

>香りだけ楽しみたいとき
煙草を吸われる方なら灰皿に出し殻を入れておけばいいとアドバイスするんですが・・・。

そうだ、その時飲めないのなら水出し珈琲を作っておけば良いでしょう。
ミルで挽いたばかりの豆をペットボトルに入れ、静かに水を注ぎ冷蔵庫に一晩置けばよいと思います。注ぎ分けるときにろ紙で濾してあげると良いでしょう。濾した後も1日ぐらいは冷蔵庫で保存は可です。
一石二鳥ですね。
Posted by 銕三郎 at 2007年05月08日 12:35
昼間、暑かったですよー。アイス珈琲を頼みたい季節になってきましたね♪
ランチメニューに付いてくるアイス珈琲とか、私は早めに氷を出しちゃいます。薄くなるよりも、ぬるくなるほうが良い、という…。邪道?
以前は、人の分もガムシロもらって入れてましたけど、いつからか、ミルクも甘みも入れなくなりました。何がきっかけだったのか、さっぱり覚えてないんです。
蛇足ですが、私は一度も主人をお迎えに行った覚えも、、ないです。。
Posted by どれみ☆ at 2007年05月09日 02:08
★どれみ☆ 様

いらっしゃいませ。暑い中、外でお仕事でしたか?
ガム・ミルク抜きのアイスでよろしいでしょうか?
美味しいアイスは豆の持つ甘味だけで充分甘く感じるものです。

>私は早めに氷を出しちゃいます。
何でしたら冷却した後、氷を抜いてお出ししますよ。ご希望をお伝えください。
見た目を気にされるなら、大きめのガラス器にクラッシュアイスを詰め、その上に小さめの足なしのゴブレットを載せてお出しします。
または普通のアイスグラスにフェイクアイスを入れてアイスコーヒーを注ぎましょうか?
Posted by 銕三郎 at 2007年05月09日 09:48
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