2007年07月31日

◆基礎編 3.抽出(1)

第3回をお届けします。この回でやっと珈琲の粉にお湯を注すことになります。
しかし、まだまだ珈琲は出来上がりません。
今回は一番大事な「蒸らし」を学んでいただきます。理屈がわかればこの工程の重要さが理解していただけるかと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「3回目だな。今回はお湯を使うぞ。準備できてるな。」
「はい、マスター。前回言われたとおりヤカンで沸かしておきました。やっと珈琲を淹れられるんですね、ワクワクしてきました。」
「じゃあ始めていこうか。まずコーヒーカップに水を入れてサーバーに2杯量って必要な量を理解しておこう。サーバーには目盛が付いているがあまり信用しない方がいい。1杯ごとに印を付けておくのがいいぞ。」
「この線まで珈琲を溜めればいいんですね。」
「ああ、だが今回はそこまで進まない。抽出に一番大事な部分だからじっくりやるぞ。」
「はい、でもヤカンでお湯を沸かしたのは何故ですか?」
「家庭で使うドリップ用のケトルはせいぜい1L位だろ?何回も練習するとすぐに無くなっちまうからな。次を沸かす間待っているのも面倒だろ。でも大きいケトルだと今度は扱いが大変になる。重くなるから微妙な湯量のコントロールをするには慣れないと難しい。だからヤカンでお湯を沸かしておいて、足らなくなったら継ぎ足す方が楽だと思っている。」
「じゃあ、ガス台2口使うんですね。」
「そうだ。遠い方にヤカンを置けよ。」
「はい。サーバーはこのホットプレートの上でいいんですか?」
「まだ、ホットプレートはいいよ。今回は落とさないからな。ケトルにお湯を移してガスの火をつけろ。」
「いよいよですね。ドリッパーのセットもできました。」
「ペーパーと粉は外しとけ。今すぐにはいらない。」
「え〜っ、まだですか。ドリッパーとサーバーだけでいいんですか?」
「お前、お湯を細く注ぐ練習しなくていいのか?出来るんなら先を急いでもいいが。」
「ち、ちょっと待ってください。そんなに難しいんですか?」
「抽出で一番大事なのがお湯のコントロールだ。必要な量を必要な場所に一気に注げなきゃならんからな。」
「う〜っ、練習させていただきます。このドリッパーに注いでいいんですね。」
「ああ、コントロールしてな。おい、そんなに太く出したらいくら中ぐらいのドリッパーだからといってもすぐあふれるぞ。もっと細く絞れ。細くして中央からのの字を描くように外へ、と言っても壁には当てるなよ。」
「はい、でも腕がプルプルしてきます。」
「二の腕に振動ベルトでもつけてんのか?そういえばそれで飛んでみせるとか言ってたよな?」
「真剣にやってるんですから冗談は止めてください。それよりこんなに力要るんですか?」
「慣れないとそうかもな。スムーズに湯の落下点を動かすには、腕って言うより手首が重要だ。お湯が入って重くなったケトルを傾けた状態で保たなきゃならんからな。いいだろう、この感覚がわかればいい。出来るようになるまで待ってたら、この回が終わらせられない。」
「ああそうですか、不出来な生徒で申し訳ありませんね。」
「それが解っているなら次回までの宿題にしてやる。続きを進めるぞ。」
「は〜〜〜い。ドリッパーに粉をセットします。」
「軽くたたいて粉の表面を平らにするように。」
「とんとんとんっと・・・、はい、できました。これでいいんですね?」
「じゃあさっきの要領でお湯を注してみろ。ここでの注意点はお湯を注ぎすぎないことと湯温が高すぎないこと。まず量について。ドリッパーから下にお湯が落ちないだけしかお湯は入れない。その量で粉全体にお湯を行き渡らせるんだ。そしてお湯の温度について。抽出の適温は90〜5℃、グラグラ沸き立ってちゃ駄目だ。沸き立ったヤカンからケトルに移すだけでも充分温度が下がる。下がりすぎたら火に掛ければいい。聞いてるか?」
「そんな難しいことを一遍に言われても・・・。あっ、既に下から漏れ出してます。」
「それならすぐお湯を注すのを止めろ。まあいい、最初だからな。それよりお湯を注した粉の表面を見てみろ。」
「あ、膨らんできてます。どんどん大きくなっていきますね。」
「この状態が『蒸らし』だ。この中で何が起こっているかというと・・・。」
「と言うと?」
「ガス交換が行われている。簡単に言うと粉に閉じ込められていた二酸化炭素とお湯が入れ替わっているんだ。焙煎時に豆の中に取り込まれた炭酸ガスがあったところにお湯が入り込みガスが放出される。その結果がこのドームだ。」
「粉になって表面積が増えたところ全体にお湯が広がっていってるんですね。」
「だから、この1投目は斑なく全体にお湯を行き渡らせる必要がある。一箇所にお湯を集中するとお湯の通り道が出来てしまうんだ。道が出来るとお湯はそこを通ろうとする、抵抗が少ないからな。そうなったら蒸らしは進まない。粉は斑だらけだ。」
「うぇ〜、プレッシャーかけないでくださいよぉ。もう一度やり直していいですか?」
「何度でもやってみることだ。実際にはこのまま次の工程に進んで滴下させてもいいんだが、講習会としてはここで一旦区切らないと長くなりすぎるからな。」
「いつまで膨らませればいいんですか?」
収縮を始める直前で次の2投目を注いでいくんだ。だがそれは次の回で説明する。」
「じゃあ今回はこれまでですね。ケトル置いていいですか?」
「お前、ずっと持ってたのか?それじゃあお湯が冷めちまうだろうが。お湯を注したらガス台にすぐ戻せ、ばかもんが。」
「最後まで怒られて終わるんですか〜?」

 

本日のまとめ

この工程の意味を理解する。
  粉の周囲や内部にとじこめられた炭酸ガスをお湯の温度で膨張させ粉の外へ
  吐き出させるのが目的。
  ガスが残ったままではお湯が浸透する機会が均等にならない=斑ができる。
  お湯は粉全体に行き渡るように注す。細く中央からのの字を書くように周辺へ
  注いでいく。直接ペーパーに当てないよう注意。
多少滴下する分には構わない。が、この分は珈琲としては役に立たない。
  注ぎすぎて滴下したお湯は珈琲として抽出されたものではない。
  厳密に言えば  いらないが、蒸らしの最中に捨てるのは難しいので、
  多少なら放っておいて良い。
  滴下させず全体に斑なくお湯を行き渡らせるのはかなりの技量が必要と
  なるので  滴下させないことよりも全体を斑なく蒸らすことを優先に考える。


「滴下してもいいとは言ったがカップ1杯分も落としていいとは言っとらん。」
「ここに来てまだ怒られるんだぁ〜。」


posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☁| Comment(12) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へぇ〜 へぇ〜。
「蒸らし」って粉の中の炭酸ガスを放出させることが目的だったんですね。
普段やっていることなのに、その意味を知りませんでした。
ところでマスター、質問です!
この作業において、お湯は粉からどれくらいの高さから落とすのがいいのでしょうか?
Posted by ひそそか at 2007年08月01日 16:47
★ひそそか 様

>「蒸らし」って・・・
当然お湯を浸みさせて粉自体をふやけさせる意味もあります。

>お湯は粉からどれくらいの高さから落とすのがいいのでしょうか
いい質問ですね。
基本的には「お湯を滴下した時、跳ね返って粉が暴れない高さ」でいいと思います。
実際はケトルから出た細い注ぎ口がドリッパーの縁に触れるぐらいでもいいと思います。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月01日 17:43
えっとぉ、前にマスターが仰ってたように、焙煎してからかなり時間が経ったような豆だと、このドームが出来にくくなったりしますよね?
その場合に、何か特に注意しておいた方がいいポイントなどはありますか?
Posted by アキラ at 2007年08月02日 23:57
★アキラ師匠

>焙煎してからかなり時間が経ったような豆
飲まないで消臭剤の代わりに使用したほうが・・・。おっと、こんな意見ではナイフとか包丁とか飛んできそうですね。

簡単なのは少し豆を炙ってやるといいと思います。フライパンで乾煎り、またはオーブンなどで焼いてもよいかと・・・。
焙煎は少し進んでしまいますが、吸収された水分は放出されるので、多少は焙煎当初に近づくと思います。

そのまま淹れるんであれば、蒸らしの時間を延ばし、じっくりと豆の成分を抽出する必要があります。

それよりもよい方法は、そこまで時が経つ前に飲んでしまうことだと思いますよ。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月03日 01:24
いつだったか、TVで美味しい珈琲の淹れ方講座
みたいな番組があり、それでやっていた内容を
うちの主人は真似て淹れてるんですが、
どうやら、その内容と同じようです。

あ、いやいや、それと同じだということを
言いたいのではなく
(そう聞こえたらごめんなさい!)
美味しく淹れることを極めると、そういう
ことになるんだなあ、と。

でも、それを見たのが何年も前だったので、
あらためて活字で拝読し、一層理解を深めたような
気がします(?!)

なかなか、コメントを残していけないのですが、
いつも楽しみにしていますよ♪

台風が去り、また暑さが厳しくなったような気がしますが
どうぞご自愛くださいませ。
Posted by Home-Design at 2007年08月04日 16:56
★Home-Design 様

>その内容と同じようです
優しい旦那様が美味しい珈琲を淹れて下さるんですね。

>美味しく淹れることを極めると
間違ってないことが確認できてよかったです。書いている私が実践していたことを思い出しながら書き綴っているので、心配な部分はいくらかあったんです。

普段、仕事はエアコンの効いた事務所に1日中つめているので、休日は暑さに負けてしまいそうです。
Home-Designさんもお体に気をつけてお過ごしください。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月04日 18:56
レスがすっかり遅くなっちゃいました。
きいといて、ごめんなさい。

>焙煎は少し進んでしまいますが、吸収された水分は放出されるので、多少は焙煎当初に近づくと思います。
<
ってことは、要するに湿気てるってことですね。
これはでも面白そうですねぇ。
今度古くなったときやってみよう♪
豆を取り寄せているので、ついまとめ買いしちゃうんですよね。
最近は調子が今イチで、全然コーヒーを淹れて飲まず・・・。
豆がどんどん古くなっていきます。 (^_^;)
Posted by アキラ at 2007年08月07日 16:52
★アキラ師匠

>豆を取り寄せているので、ついまとめ買いしちゃうんですよね
乾煎りはあくまで応急処置です。これで解決できるわけではありません。
基礎編の1回目のコメント欄でペコさんにお返事しているんですが、まとめ買いをしたら、届いたその場で100gずつの小袋に分けて冷凍保存をお勧めします。または同様にした後、真空パックをして冷蔵保存です。
せっかくの豆が「もったいないお化け」に食べられてしまいますよ。

Posted by 銕三郎 at 2007年08月07日 17:24
僕は一つの豆を200gづつ何種類か頼むクセがあるんですが、すぐに飲まないものはそのまま冷凍保存してます。
そうか、これを100gづつにすればいいのか。
ありがとうございます〜!
Posted by アキラ at 2007年08月07日 23:36
★アキラ師匠

>200gづつ何種類か
それならば、1回分ずつ(20〜25g)に細かく分けてもいいかと思います。2種類3種類のブレンドも楽しめるじゃないですか。
ただし、解凍する際に水分を吸収させないよう冷蔵庫で解凍するよう気をつけてくださいね。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月08日 01:42
>必要な量を必要な場所に一気に
なるほどー!!
勉強になります。

へーへーへー♪

>豆を200gづつ
あ。師匠、いっしょだ!
…と、言っても私は200g入りを買っているのですが。。。

ああー、マスターのどが渇きました。
アイス珈琲お願いします♪
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月10日 20:29
★ぺこぽこ 様

今日は本当に暑い1日でした。
アイス珈琲の前によく冷えたお手拭をどうぞ。顔はメイクがあるんで拭けないでしょうから、首筋・二の腕・手首などを拭くだけでも気持ちよくなりますよ。

美味しい珈琲を淹れてくださいね。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月10日 21:16
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