2007年08月05日

◆基礎編 4.抽出(2)

第4回目をお届けします。
今回でほぼ抽出は終了します。
しかし、今回の工程で味の大半が決まるといっていいでしょう。
珈琲の味を生かすも殺すもこの工程次第。最後までお付き合いください。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「さあ、最後の工程だ、ここまでの分練習してきたんだろうな?」
「あ、マスター。早く早く、ここからどうすれば良いか教えてください。」
「なんだ、もう始めていたのか。2投目のタイミングだな。とりあえず自分の好きなようにやってみな。」
「家で練習したときももったいないから続けて淹れてみるんですけど出来上がったのを飲むと変な味なんです。薄かったり濃くて嫌なエグ味があったりして、どうしたら良いのかわかんなかったんです。」
「それで、今回のはどうなんだ?飲んでみたか?」
「今飲んでます・・・§£塘wζ・・・。マスターまた失敗したみたいですぅ。ちゃんと教えてくださいよぉ〜。もうこれ以上変な味の珈琲飲みたくないんです。」
「甘えるな、みっともない。ま、失敗したらどうなるのかわかったから良しとしようか。いい経験が出来ただろ?」
「わざとですか?いい根性してますね、マスター。食べ物の恨みは怖いですよ。」
「逆恨みの真似事はそのぐらいにしとけ。ちゃんと聞く準備はできたのか?」
「うう・・・。とっくに出来てますよ〜だ。人をおもちゃにして・・・」
「聞こえるように余計な事言ってるとこれまでにするぞ。」
「あぁっ、それは勘弁してください。オーナーはもとより、見てくださっている読者の方から『ふざけるなっ』って罵声が飛んできますよ。」
「それじゃ第4回の講習を始めようか。」
「ええっ?始まってなかったことにしちゃうんですか?」
「お前の失敗なんぞ講習内容には含まれていない。」
「そうなんですか・・・。ちょっと待ってください、気持ちを切り替えます・・・はい、いいですよ、前回の続きまで準備できました。」
「ふうん、ドームの形成はうまく出来るようになったようだな。このまま続けるぞ。ドームが精一杯大きくなったところで2投目だ。ドームの中央から小さく渦を描いて外へ静かに注げ。内から外へドームがゆっくりとはじけていくだろう。そしてその縁の高さが最初のドームの頂点と同じになったところで注湯停止。そのまま珈琲が滴下し、粉の中央が10%程下がるのを待つ。そこで3投目だ。この間に余裕の時間はないぞ。今度も中央からのの字を書くように外へ注いでいく。注湯量はこれまでより多めに入れないと追いつかないぞ。注湯停止のタイミングはドリッパーの縁から20%ほど下だ。後は水面の中央が10%下がったら元に戻すことを繰り返し、必要な量だけ滴下したところでドリッパーをそのまま外しシンクの中へ。以上で抽出終了だ。」
「自分でやったのとはぜんぜん違う。マスター幾つか質問して良いですか?」
「ん?何か判らんことでもあったか?」
「いえ、理由が知りたいんです。」
「おっ?少しは頭を使って覚えることを始めたのか?いいだろう、どの工程だ?」
「まず、ドリッパーの縁一杯まで使わないのは何故です?」
「このドリッパーは2〜3杯用だ。3杯の時は上まで使うんだ。水面の高さが高くなれば水圧が上がる。お湯と粉の接触時間を変わらなくするために抽出スピードをコントロールしているんだ。」
「あ、なるほど。と言うことは2杯取っても、3杯淹れてもほとんど時間は変わらないわけですね。」
「そうだ、これは大きなドリッパーを使用するときもあまり変わらないだろうな。」
「じゃあ次。水面が下がるのを待って次を注いでいますが何故ですか?下がらないように入れ続けても良いんじゃ・・・あ、そうか、お湯の温度だ。」
「頭が回ってきたようだな。正解だ。ケトルをコンロから離していればどんどん湯温が下がってしまう。こまめに火にかけてやることで温度が下がりすぎるのを防いでいるんだ。」
「最後にドリッパーに残したままサーバーの上から外しますよね?これは?」
過抽出をすると不必要な成分まで引き出してしまう。ドリッパーにはそんな成分が既に抽出され始めているんだ。粉を絞ればそれを加速してしまう。『絞る』ってのはドリッパーにお湯を注さないで落としきることを言う。外した後に滴下した分だけを別のサーバーにとっておいたんだが飲んでみるか?」
「お話をうかがっただけで想像できますから結構です。ひょっとすると私の最初に淹れた珈琲の嫌な味はこれが原因だったんですか?」
「大半はそうだな、それだけじゃないがな。」
「ちゃんと意味があって、科学的に考えられた抽出手順なんですね。分かりました。ちゃんと練習して、マスターの代理が出来るよう努力します。」
「それはいいよ。お前の珈琲がお客に出せるようになるのと、この店がなくなるのとどっちが先か分からんからな。」
「そんなにかかりませんってば。失礼ですね。」
「いや、な・・・。美味しい珈琲が淹れられるのと美味しい珈琲が『安定して』淹れられるのとでは力量が全然違うんだ。我々が飲む分を任せることはあっても客に出すものは俺を納得させない限り作らせんよ。うちの看板は『珈琲の味』なんだからな。」
「前にお客さんに怒鳴ってたことがありましたね、そういえば。じゃあ私が目指すのはマスターが美味しいって言ってくれる珈琲ってことですか?」
「俺じゃなくて彼氏でいいんだよ。珈琲は嗜好品だ。商売にしなきゃ自己満足の世界で構わないよ・・・に、睨むなよ・・・あっ、わざとじゃない。別に親父さんでもいいんだ・・・ってやぶへびか。」
「ふんっ!!いいですよ。どうせ彼氏なんかいませんよ〜だ。自分のためだけに珈琲を淹れ続けてやるんだから。覚悟してくださいね。」

本日のまとめ

・ポイントはドリッパーの中のお湯の量と注ぐ湯温
  注ぎ足すタイミングが遅れれば粉を『絞って』しまい、雑味成分
  が抽出されてしまう。
  温度が低いと必要な成分が抽出できない。
・ドリッパーにお湯を残したままサーバーからはずす。
  抽出後半からはどんどん雑味成分が抽出されてくる。ドリッパー
  に残ったものは不要な成分がほとんどだと思っていい。「これを
  落とせばもう一杯分になる」などとけちな考えを起こさない。

<余談>
コーヒーメーカーはこの講習の中でやっちゃいけないと言っている事
のオンパレード。
電源を入れて放りッぱなしにしないで、少し手間を掛ければ美味しく
淹れられる。

「次回の講習はは基礎編のまとめにしよう。基礎編の最終回だな。」
「となるとその次からの『応用編』は何をするんですか?」
「(胸を張って)決めてない!な〜んもかも未定。」
「威張って言うことですか。ちゃんと考えといてくださいよ。それから、読者の皆さん、質問のある方はお早めに。次回に詳しく解説してもらえるかもしれませんよ。」
「あ、俺の仕事を増やすなァ・・・」
「お気軽にどうぞ〜。ではまた。」



posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(18) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は今まで間違っていました。2杯入れる時でも縁までモリモリ注ぎ、そのまま放っといてきゅーっと逆円錐になるように絞りきっておりました。しかも量が足りなかったらそこへ継ぎ足したりしておりました。あちゃー・・。
水圧のお話もためになりました。
Posted by カブ子 at 2007年08月04日 23:38
★カブ子 様

>今まで間違っていました
いや、半分は間違いじゃないですよ。問題は絞りきってからのお湯の継ぎ足しだけです。落ちきらないように水位を守れば問題ないです。
応用編で詳しく説明しますが、一杯分多めの水量を使用して淹れる方法があります。軽めに淹れられるので「アメリカン」などに用いるんです。
香りとカフェインが優先的に抽出されます。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月05日 01:30
わあああっ!コーヒー豆がぎっしり!!
マスターったら美味しいコーヒーを淹れられるだけじゃなくて、こんなこともできるんですね。尊敬。

以前教えていただいてから、最後まで落ちきるのを待たずにドリッパーを外すようにしています。確かに雑味が消えて美味しくなりました。
Posted by ひそそか at 2007年08月06日 00:20
★ひそそか 様

>確かに雑味が消えて美味しくなりました。
実践いただきありがとうございます。
実はこの雑味との戦いが抽出技術といっていいと思います。いかにこの雑味を無くすかと考えられたのが現在の様々な淹れ方として発展してきたのでしょう。

>わあああっ!コーヒー豆がぎっしり!!
美味しい反応ですね。驚きがしっかり伝わってきました。
凝り性ですから、CSSを解読して使用されている画像を置き換えるぐらいは出来ます。
私としては「ブログ名」のフォントの変更や、右袖の中にコーヒー豆を入れる方が大変でした。
細かい変更なので気付いていただけなかったかもしれませんが・・・。

今、次の記事を別に書いていたんですが、エラーで飛びました。推定、原稿用紙3枚は書き進んでいたのに・・・(泣)
Posted by 銕三郎 at 2007年08月06日 02:06
>「ブログ名」のフォントの変更や、右袖の中にコーヒー豆
ちゃんと前から気付いていましたよ。「ぎっしりコーヒー豆」と一緒に言及しようかとも思ったのですが、今さらな気がしてスルーしてしまいました。

右袖のコーヒー豆に気がついた時にすごい!と思ったのですけど、フォント変更もそんなに大変だったんですか?私も右袖に傘とか配したいなー。あ、教えて下さらなくていいです。絶対わからないから。。。

>エラーで飛びました
お悔やみ申し上げます。だから別のソフトで下書きしないと!!
Posted by ひそそか at 2007年08月06日 11:10
>別のソフトで下書きしないと!!
いやいや、公開はもう少し先になるんで別のソフトで書いていたんですよ。
そいつがエラーを起こしまして、飛んでしまったんです。
文体の関係上、「流れありき」という記述法をとっていた為、途中でセーブもしておらず、更から書き直しております。書き直すと流れが変わっていくんですよね。

一気に書き上げて、これから校正しようと思っていたところだったので衝撃はメガトン級(表現が古い・・・)でした。そのため、丁度その時分にコメントを頂いたひそそかさんの呪いと疑わなかったのです。
呪いは守備範囲外ですか?とすると得意技は「囁き」ですかね?
Posted by 銕三郎 at 2007年08月06日 14:33
その「囁き」が隠れた「呪い」なのです・・・

(逃げろ!!ダッシュ!!!)
Posted by アキラ at 2007年08月10日 10:22
★アキラ師匠

>逃げろ!!ダッシュ!!!
あ〜あ、知りませんよ。
「ナス」に影響が及んでも・・・。

子供のようにピンポンダッシュする師匠の後姿が目に浮かび、笑えました。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月10日 13:16
うちのドリッパーは独特な形なので、この『ドーム』が出来にくいようです。
うむむ。。。
ちょっと、研究しますね。

でも『お湯が落ちきる前に、外す』を実行しております。
ええ、美味しくなったような気がします。
『の』の字でお湯を注ぐのは、、、上手く…なったかな??

いやー、為になりまーす♪
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月16日 17:28
★ぺこぽこ 様

>うちのドリッパーは独特な形なので、この『ドーム』が出来にくいようです。
『ドーム』ができない理由は大きく3つあります。粉が新鮮(挽きたて)でない。もう一つは粉が細かい(または粗い)。そして湯温が低い。

独特な形のドリッパーってひょっとして「円錐ドリッパー」ですか?そうであるならば淹れ方としてはネルドリップに近くなるので扱いが変わってしまいます。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月16日 17:58
そうです!そうです!!
円錐型なんです。
わあ、マスター良く分かりましたねぇ♪

ケメックスのメーカー。
憧れて、憧れて手に入れた、宝物なんですけれどね。。。(*^^*)
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月16日 21:15
あー、ケメックス! いいですよね!
出産内祝いで他人には贈ったくせに自分のはまだ持ってません。専用フィルター、高いでしょ?
Posted by カブ子 at 2007年08月17日 00:57
★ぺこぽこ 様

>ケメックス
調べました。このデザインだとドリッパーを途中で外すのは不可能ですね。
フィルターだけを外してしまうのがいいんですかね。
円錐フィルターの場合はネル布と傾向が似ているので、淹れ方も同じにするのがよいかと思います。
粉の真ん中を大きく窪ませてセットし、第1投をその穴が一杯になる程度注ぎます。
これで粉全体にお湯が廻ると思います。その後そのまま蒸らすようにして粉を膨らませます。
2投目からは通常のドリッパーと同様の扱いでいいと思います。

>宝物なんですけれどね
いいデザインですものね。大切にしてください。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月17日 01:20
★カブ子 様

乱入は大歓迎です。

>出産内祝いで他人には贈った
このドリッパーって結構高い物ではないんでしょうか?
フィルターも専用品になるので高くなりそうですね。珈琲一杯淹れるのにもお財布と相談しなきゃならないようだったら、どんどん練習してねとは言いづらいなあ。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月17日 01:28
姉の結婚の時に、招待状やらパンフレットやら、一式と、ブーケを手作りしたんですよ。
で、『お礼に』と贈ってもらったんです。

長年憧れていたもので、折角手に入ったので大事に使っています。
折角なので、美味しいコーヒーを入れられる様になりたいです。

マスター、アドバイス有り難うございます。
いつかネルドリップ編もやって下さいね♪
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月17日 02:15
★ぺこぽこ 様

>手作りしたんです
先日のお手紙も素敵で、子供たちは本当に喜んでおりました。こういった小技の切れがいいと見映えが一段とよくなっていいですね。大雑把な仕上げが得意な私(適当とも言う)には子供たちも繊細な仕上がりを期待してはくれません。

>ネルドリップ編
うっそ〜?これやるには1から勉強しなおさなきゃ。
ネル布を鍛えるところから始めていいですか?使えるようにするまでに記事10回ほど引っ張って・・・。布の管理でまた10回とか。
でも、ご家庭にネルドリップがある方はどのくらいの割合なんだろう?私自身が使い切れなくて捨てちゃった口だからなぁ。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月17日 09:20
>小技
…す、すみません。。。
アリモノです。
シールなんです!!

きゃー。。。辰・順ちゃんは『手作り』だと思われましたか??
(いや、誰かの手作りでしょうが、私ではないです〜〜〜〜!!)

>ネルドリップ編
えええ。
そんな難しいものなんですか!?
気軽にお願いして申し訳なかったです。

ネルドリップって大変なんですねえ。。。
…ネルの管理が大変だとは、知りませんでした。
ネルドリップで淹れくれるコーヒー屋さんも大変なんですねえ。(感心)

えっと、寝ながら待っています。(笑)
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月17日 15:40
★ぺこぽこ 様

>シールなんです
ありゃ、こりゃまた失敬。
でも、ああいうワンポイントが入れられるのもセンスだと思います。

>ネルドリップで・・・大変
頻繁に使用する珈琲店では大きな問題にはならないんですが、一般家庭では使用間隔がどうしても大きくなりがちですから、保管に問題が発生するんです。
ネル布で淹れるって、後が大変ですからどうしても次に淹れるのを億劫になってしまいがちですものね。
その間にネル布に残った脂が変質してしまいます。布は洗剤で洗えませんから。
また、乾いてしまっても駄目なんです。

管理が大変って言うのはこういった理由からです。マメな方ならどうって事無いんでしょうけれど、私は無理でした。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月17日 16:26
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