2007年08月10日

◇天空に輝く光、地に咲く光

満天に広がる星空の下、焚き火のそばに人影が二つ。
周りを見渡してもこの2つ以外に光はない。
しばらくはその状態が続いたが、そのうち一つまた一つと光が近づいてくる。
ヘッドライトの光だった。テントからスカウトが何人か起きてきたらしい。
折り畳み椅子を持ってやってきた彼らは焚き火の周りに腰を落ち着けた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「隊長、コーヒー淹れてるんですか?そこら中にいい香りが充満してますよ。」
「いいのか?就寝時間は過ぎてるぞ。ちょっとマスターと話があってな、珈琲でも飲みながらってことになったんだ。」
「えっ?あ、マスターいらしてたんですか。いつもお店でお世話になってます。今晩はどうして・・・ああそうか、明日の朝食のパンを届けていただいたんですね。」
「連泊してると焼きたてのパンはほんとに美味しくて、いつも取り合いになるんですよ。」
「そう言って貰えると、毎回持ってくるのが苦じゃなくなるよ。パン屋にも無理言って出発ぎりぎりに焼き上げてもらっているからな。帰ったらあのオヤジに伝えておくよ。あいつも喜んでくれるよ。」
「今晩はどうされるんですか?シュラフも銀マットも予備がありますから泊まっていかれたらどうですか。それだと朝食の珈琲が楽しみなんだけどな。」
「馬鹿も休み休み言えって。明日もうちの店は営業だ。こんなとこで体を痛くして寝たら明日どうなると思ってるんだ。俺の歳も考えろよ。お前らの隊長より5つは上だぞ。」
「マスターってそんな年齢でしたっけ。隊長より若いと思ってましたよ。ところで、珈琲の香りはするんですけど、ストーブもパーコレーターや鍋も見当たりませんね。もう片付けちゃったんですか?インスタントじゃこんなにいい匂いはしないし。たくさん淹れていたら僕らも飲みたかったのに・・・。」
「いや、今回は手に入れたばかりの器具を使ってみたくてな。非常に原始的な抽出器具なんだが持ってきてみたんだ。ほら、焚き火の脇にかざすように置いてあるだろう?」
「この柄杓みたいなのですか?」
「ああそうだ。『イブリック』と言って現在の珈琲抽出の原点みたいなもんだ。焙煎した豆を粉にして使うのは同じだからな。器具の予備はまだあるから、お前たちも飲んでみるか?」
「隊長、マスターからお誘いを頂いたのでご相伴に預かってよろしいでしょうか?まあ、ボーイ隊じゃないんで『明日も早いんだから』とか『眠れなくなるぞ』とか子供相手に言うようなことはいいませんよね?」
「ああ、キャンプサイトでは俺はオブザーバーだ。自分たちで体調管理ができるなら問題ないだろう。ただし、ソロやっている奴は別だぞ。隊長の焚き火に来て浮かれてるようじゃソロキャンプの意味がないからな。そうじゃない奴も飲み終わったらすぐ撤収しろよ。」
「ソロの連中はもうぐっすりですよ。作業が山ほどあるんでへとへとになって寝てます。じゃあマスター、隊長の黙認も確認できたので頂きます。どうすればいいんですか?」
「律儀な連中だな、スカウトってのは。そら、各々ここにある柄杓に粉を・・・そこの袋に入ってるだろそれを入れるんだ。砂糖も入れておけよ、後からじゃ雰囲気台無しだ。それに水を入れて火にかける。焚き火の中まで入れるなよ、灰が入っちまうぞ。」
「うわっ、こんな単純なんですか?最近は会議をマスターのお店でやらせていただいているんで珈琲が美味しいと思うようになってきました。味がわかるようになってきたんでしょうか、コーヒーメーカーさえ美味しいと感じなくなってるんですよ。隊長、味はどうでした?飲める代物なんですか。」
「お店の珈琲と比較したらマスターに悪いよ。まずは自分で飲んでみろ。俺は飲んだから言うが、あまり美味いもんじゃない。覚悟しとけよ。」
「隊長、そんな言い方はねえだろ。そりゃあ洗練された方法で淹れる珈琲とは比較できないさ。でも、こういった野外での珈琲タイムにはこうした野趣あふれる淹れ方の方が似合うと思うがな。そろそろ湧き上がってきたから一旦かき回して、火から離してもうしばらく置いておけ。」
「強い香りですね。僕たちのテントまで匂いが届くわけだ。これなら焚き火の匂いや草木の香りに負けませんね。」
「こんな淹れ方から始まって、現在ある様々な淹れ方にたどり着くのにどんな試行錯誤があったかをじっくり思い描くのもいいもんだぞ。」
「それは飲んでから考えて見ます。もうそろそろ飲んでも大丈夫ですか?」
「ああ、カップに泡と上澄みだけをうまく注げよ。濾さないから静かに注がないと粉だらけで飲めなくなるからな。」

本日のメニュー

  トルココーヒー

申し訳ありません。最初に白状します。今回のトルココーヒーは飲んだことはありません。淹れ方とどんなものかは理解していますが、上澄みだけを飲む珈琲をわざわざ造る必要がありませんので。
キャンプではパーコレーターかパック珈琲、またはインスタントコーヒーで済ましてしまいます。
この回のようにゆったりとした時間をとれればやってみたいですね。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
<続きを読む>を開く前に、これは僕がサウジアラビアでずっと飲んでいたターキッシュ(トルコ)コーヒーに似ているなあと思っていました。かなり匂いにクセの強いエスプレッソという感じです。あちらの人は砂糖をたっぷり入れて飲みますが、僕はエスプレッソにも砂糖は入れないので、そのまま飲んでいました。粉が口に入ってくる寸前で止めるのにコツがいります。
Posted by yas at 2007年08月11日 07:48
★yas 様

いらっしゃいませ。そちらは寒い盛りですか?あったかい珈琲で温まってください。

>僕がサウジアラビアでずっと飲んでいたターキッシュ(トルコ)コーヒーに似ているなあと思っていました
嬉しい感想です、ありがとうございます。
今回はネタ切れで、自分の想像だけで書き綴ってしまったので、本物を常飲されていた方が近くにいることを失念しておりました。いや、お恥ずかしい。失笑を買っていたらと思うと、それでも似ていると思っていただけたので救われました。

質問です。私は粉が口に入るのを嫌って、文中では別のカップに移してみたんですが、そのままのカップで飲むほうが良かったんでしょうか?
Posted by 銕三郎 at 2007年08月11日 16:32
 初めて知りました。そういう種類の珈琲を。
粉が口に入らないように飲むのが難しそうですね。

 戦時中、船に乗っていた欧米諸国の船長さんは
大豆を炒ったものを珈琲豆代わりに使い、飲んで
いたと聞きますが、それはさすがに美味しくなさ
そうですね。

 でも、そういう時代には、貴重な一杯で、唯一
心が安らぐひと時だったのかもしれませんね。

 美味しい珈琲が飲めることに感謝!
Posted by Home-Design at 2007年08月11日 20:21
★Home-Design 様

いらっしゃいませ。この珈琲をお出ししますか?口の周りに気をつけてください。

>大豆を炒ったものを珈琲豆代わりに
代用珈琲といわれるものですね。大豆のほかにも、「タンポポ」「ゴボウ」「ジャガイモ」「百合」「サクラ」などの根、「カボチャ」「ブドウ」などの種、「ピーナッツ」「大豆」「ドングリ」「オオムギ」「トウモロコシ」「チコリ」「玄米」などの穀物を煎って粉末にし、お湯を注いで飲んだそうです。
美味しいとはとてもいえない顔ぶれですね。

世界が平和でなければ珈琲豆の輸入は難しくなります。2度と戦争などには関わらないで欲しいものです。
Posted by 銕三郎 at 2007年08月11日 21:04
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