2007年11月08日

◆応用編 2.焙煎度

今回は応用編の第2回です。
前回は注湯方法を変えるとどうなるかがポイントでしたが、今回は豆の焙煎度が変わるとどうなるかを見てゆきます。
基本の抽出方法を変えずに淹れて、味わってみましょう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ああっ!いい香りがしますね。おととい入荷した豆ですか?」
「ああ、今回の講習用に特別に焙煎してもらったものだ。」
「そっか〜。今回は『焙煎度の違いによる味の変化』でしたね。特別に焙煎してもらったっておっしゃいましたよね。いつもの豆じゃ駄目なんですか?」
「いつもはミディアムローストのレギュラーブレンドだろ?焙煎度の違いを比較したいんだからしょうがないんだ。」
「お店には焙煎度の違うブレンドがあるんじゃ・・・?」
「駄目なんだよ。あれらは専用にブレンドが変えてあるんだ。同じブレンドの豆の焙煎度を変えて淹れてみないとな。」
「ええっ?アメリカンもフレンチもブレンドが違うんですか?」
「ああ、これを決めるのにオーナーと1月かかったかな。豆屋にも随分無理を言った。今回のことも豆屋はあきれていたよ。」
「やる気なさそうにしてるのに随分気合入ってませんか?」
「やることだけはきちんとする性質でな。さあ、始めようか。」
「はい、お湯の用意は出来ています。いつものように淹れていいんですか?」
「そうだな。まずは基準になる珈琲を淹れてみようか。」
「わかりました。(落ち付け落ち付け・・・・)」
「お前なぁ、いい加減自然に淹れられる様になれよ。毎回突っ込まなきゃならないおれの身になってくれ。」
「だって・・・。前回なんてコメントいただいたの御一方だけですよ。『でしゃばって登場したのがいけなかったのかなぁ』とか、『きちんと淹れられ過ぎなのかなぁ』とか色々悩んじゃって・・・嫌々でもちゃんと準備していただいているマスターに申し訳なくって。」
「あほか、全く何余計なことを考えているんだ。俺は応用編になってPVが減るかと思っていたんだが大して減っていないことに驚いているんだ。」
「そうなんですか?」
「ああ、応用編は珈琲の味に対する微調整のテクニックだ。基礎編に比べればハードルはかなり高い。せっかく購入した豆を無駄にすることにもなりかねんからな。だからコメント数なんかは気にするな。応用編は『読んで記憶に引っかかってくれればいい』んだ。それよりも正確な情報を伝えるほうが重要だからな。基本に忠実に珈琲の抽出を頼む。」
「はい、きちんとお手伝いさせていただきます。」
「基準のものを淹れ終わったら、カップに移してすぐ次のに取り掛かれ。フレンチ・アメリカン同時に淹れてもいいぞ。」
「ど、同時?私、きき腕は1本しかありません。ケトル2つも同時に注げませんよ。」
「俺がいつも午前中にやってるの見てるだろう。第1投目を少し時間差を置いて注げばいいんだ。」
「はい、こうですね。ああ、なるほど・・・交互にお湯を注していけばいいんですね。でも忙しいですよ。」
「当たり前だ、ほらお湯が冷めるぞ、ケトルを交換しろ。ケトルも交互に使っていけば湯温を必要以上に下げることはなくなるわけだ。」
「できました。マスター味見をお願いします。」
「俺がやっても意味ないだろうが。お前の舌で感じたことを伝えればいいんだ。」
「は〜い。じゃあまずアメリカンローストから。」
「ああ、どんな風に感じる?」
「香りはいつもと変わりませんね。色は随分赤い・・・。味は・・・うわっ酸味が強っ!苦味は和らいでいますね、でも少し渋めです。甘さはありません。」
「うん、概ねよろしい。ではレギュラーを一旦飲んでからフレンチローストに移ろう。」
「えっ?違いがはっきりするからそのまま飲んだほうがいいんじゃ・・・?」
「基準に対してどうかを見なきゃ意味ないだろ?さっさと次にいけ。」
「は〜い。じゃあフレンチローストです。色は濃いですね、香りは甘さよりも焦げた感じの匂いが強く感じます。味は酸味がほとんどありません。苦味だけがすごく強いです。それも私の嫌いな苦味ですね。でも喉を通った後、口の中に甘さが残ります。」
「本当に珈琲の味がわかるようになったな。抽出講座はそれだけでも無駄じゃなかったってことだな。」
「ううっ、褒められてる感じがしないのは気のせいかしら。」
「このように同じ豆のブレンドを使っても焙煎度によって表出する味が大きく変わってくるんだ。ただ焦がしているわけじゃない、内部の化学変化を促進させるために熱を加えているんだな。そのいい例が『甘さ』だ。フレンチローストで強く出ているがアメリカンでは感じなかった。豆そのものの持つものではないと言うことだ。香りと酸味は熱を加えることによって失われてしまうが、甘さは熱で作られたと言っていい。」
「ひょっとして1ヶ月間、オーナーとこんなことばかりやってたんですか?」
「ああ、豆の配合具合を変え、焙煎度を変えて飲み比べてみて決めたのがうちのブレンドたちなんだ。手間のかけ方はストレートの比じゃないんだぞ。」
「付き合いきれない・・・。オープン時に関わっていなくてよかった。」
「今回の講座は教養講座でしかなかったな。まあ、生豆を買って自分で焙煎してみようと思う人だけ覚えてくれればいいか。」
「でも、自家焙煎しているお店で買うときの指標にもなりますよ。」
「そうか、自分にあった豆を選ぶ際に活用していただければいいかな。」
「ちゃんと皆さんのためになる講座ですよ。マスター、次回もよろしくお願いします。」

本日のまとめ

焙煎は豆の成分の熱化学変化なのだ

・香りはシナモンロースト辺りから強くなる。

  香り成分は糖質自体の熱変性による物とたんぱく質・アミノ酸・糖質の化学反応によるものとが有るが、焙煎初期にはまだ熱変性が起こらず、焙煎度がシナモンロースト辺りまで進んで初めて生成が始まる。

・酸味は焙煎が進むと性質が変わる
  生豆が持つ酸味成分はリンゴ酸やクエン酸などだが、焙煎が進むことで糖類の分解で生成されるギ酸、酢酸が増えてくるそのため酸味にも変化が生じる。
  その後さらに焙煎が進むと多孔質になったコーヒー豆に吸着されて酸味成分が抽出できなくなる。

・苦味はカフェインなど生豆由来のものと焙煎によって生じるものがある
  カフェインなどは弱い苦味だが、糖のカラメル化や有機酸の熱分解で生じる苦味成分は強い。そのためシナモンロースト辺りまでは弱い苦味しか感じないがその先は加速度的に苦味が増幅していく。

・甘味は果糖の味
  焙煎により分解された多糖類の一部が果糖となり甘味の主成分となる。そのためライト・シナモンロースト辺りでは生成されず、焙煎度が進んで初めて感じられるようになる。

「なんか今回のまとめはアカデミックですね。」
「『調べ学習』の発表会のようになってしまったな。まあ、こんなまとめもたまにはいいかな?本文中じゃお前が眼を白黒させるだけだもんな。」
「どうせ・・・。ふんっだ。」



posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なぁるほどぉ〜!!
あ、マスター、お勧めブレンドでお願いします。

そうか、ブレンドする豆の種類や比率だけじゃなくて、焙煎の度合いも絡んでくるんですね。
ブレンドって奥が深いんですねぇ。
今まで、ブレンドをちょっと軽視していたところがありました。
だから、目からウロコです。反省しました。
今度から(別の)こだわり喫茶店に行っても、ブレンドを注文してみます!

あと、僕がシナモンローストからちょこっとだけいったくらいが、一番美味しいなぁと思う理由もこれで分かりました♪
すんごい面白かったです。

それからですね、
マスターに勧められて買った豆を小分けにして冷凍するようになってから、やっぱりずいぶん美味しさが長持ちします。
嬉しいです。
解凍は、もちろん冷蔵庫でいったんプールさせてますよ。
アドバイス、ありがとうございました。
最初に含んだ一口が美味いと、しあわせですよね〜。(ウルウル)
Posted by アキラ at 2007年11月08日 11:06
★アキラ師匠

いらっしゃいまし。ミディアムローストのブレンドをどうぞ。

実は珈琲専門店のマスターは自分の店で出すブレンド(しかもレギュラーに出すもの)に一番こだわっているはずです。自分が一番美味しいと思うものを店の「顔」にしたいですからね。
私もはじめての店ではブレンドを必ず注文します。

>シナモンローストからちょこっとだけいったくらい
豆のグレードは酸味の良さで格付けされます。今流行のエスプレッソ系の珈琲はローストによって酸味なんか飛んでしまっていますから私も好みの味ではありません。
程よいローストで酸味と香気を楽しみたい口です。
Posted by 銕三郎 at 2007年11月08日 23:42
おはようございます、お久しぶりです。最近外をウロチョロしているので、一日2回は喫茶店に入ります。
昨日入ったお店にはブレンドが5種類ありました。全部同じ豆、でも豆のグラム数とお湯の量が5通りなのです。焙煎はちょっと深め。
パリッとした白いシャツに黒のエプロンをしたマスターが手を休めずに焙煎器をゆっくり回している風景も、マダムが真剣な顔でドリップしているのも25年前と全く同じ。ああなつかしい。
さて、ここでマスターに質問です。このお店にはメニューにこう書いてあります。
「コーヒーが一番美味しい温度で淹れてありますが、熱いのがお好みの方はお申し付け下さい」
確かにここのコーヒーはぬるめです。そして飲んだ後に苦みがすっきりした爽やかなあとくちに変化するのです。
以前マスターがおっしゃっていた「抽出の適温は90〜5℃」よりもぬるい気がするのですけど…できましたらこの秘密を解き明かしてください。お願い、マスター!
Posted by ひそそか at 2007年11月13日 09:03
★ひそそか 様

いらっしゃいませ、お久しぶりですね。
しばらくぶりでいきなり質問ですか・・・?しかも・・・、

>コーヒーが一番美味しい温度で淹れてありますが・・・
実は、この質問は答えがありません。
豆の状態(焙煎度・メッシュ・生豆の鮮度など)にも左右されます。
飲み方にもよります。
店の構造でも変わってきます。
マスターの好みの部分が大半を占めると思います。

生豆がオールドビーンの場合は高温にしたほうが抽出が安定します。
砂糖を入れて召し上がる方は温度が低めだと困るでしょう。
抽出場所から客卓までの距離がある場合も同様です。
なによりマスターが猫舌だと熱い珈琲は出てきません。
→バースプンでの味見ができない。

結局、ある一定の水準から上は好みの問題になってしまいます。

私は、最初の湯温が低いと冷めるのも早く、ゆったりと珈琲のある空間を楽しめないと思っているので高めの温度での提供を心がけています。

>飲んだ後に苦みがすっきりした爽やかなあとくちに変化するのです
これはブレンドとローストの力でしょう。きちんとした管理をされている豆であれば後口のすっきりした苦味が出せると思います。

ちなみに、この講座で「抽出の適温は90〜5℃」としたのは水温を見た目で判断できるからでもあるんです。
沸騰して100℃になっているケトルの蓋を開けるとお湯の表面にあぶくが沸き立っていると思います。それを火からはずしお湯の暴れが収まったところが約97℃、抽出時に口元から噴出さないようにケトルの首をダスターで冷ますと出てくるお湯は90〜5℃になります。
この温度であれば粉に注いだとき内部の空気がはじけるように暴れることがなくなります。
見た目だけで80℃とか75℃ってわかるようになるには年季がいります。

<南青山にある老舗
名前は聞いたことはありますが、行ったことはありません。南青山ときいて私は「日本で2番目に・・・」というお店のほうを思い浮かべました。
Posted by 銕三郎 at 2007年11月13日 15:50
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