2008年01月11日

◇新春の密談

世間では新年の授業が始まって数日経ったある日。
近所の高校の制服姿で商店街を駅とは逆の方角から走ってくる男女二人。
店へと続く角を曲がったとき女生徒の方が後ろを振り返った。
男のほうは常連の彼。女性が追いつくのを店の前で待っている
追いついた女性が促すように彼の袖を引くと、急いで店の扉を開けて飛び込んできた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「どうしたんです先輩。こんな風に慌てるなんて。それにこの店、あまり好きじゃなかったんじゃ?」
「いいのよ、今日はここのほうが。」
「あ、マスター、御免、注文はあとで。込み入った話があるみたい。終わったらお願いしにくるからいいでしょ?ほら先輩、奥の席に行きましょう、外から覗いてもわからなくなります。どうぞ、座って・・・。それで一体何があったんです?いつも冷静な先輩なのに。逃げるように学校からでて、まるで誰かに追いかけられているみたいでしたよ。」
「ある意味そうね。巻き込んじゃったって言うより君も重要な関係者だからちゃんと話しておかなきゃ駄目よね。」
「僕も関係者なんですか?関係ないんだったら、先輩の事情でしょうから聞くだけ聞いて忘れるつもりだったんですが・・・。関係者だって先輩がおっしゃるんなら、じっくり聞かせてもらうことにしましょう。僕にどうしても関わって欲しいんですよね?」
「君にはお見通しなんだよね。ま、いつもそばにいるから見えるんでしょうけどね。それならどこから話をはじめようかしら。」
「僕がわかるような話にしていただければ特にどこからでもいいんですよ。」
「まずは今日のことからがいいのかな。今日に至ってついにM君の誘いをはぐらかせなくなっちゃったんだ。それで彼と顔を合わせる前に逃げ出したの。この店なら彼が顔出すことも無いからね。」
「M先輩?ど、どうして?まさか・・・付き合ってたんですか?」
「ばかねぇ。付き合ってれば逃げ出す必要なんてないでしょ?実は以前からコクられてはいたけどなんだかピントが合っていないの。私を偶像視してるっていうか、勝手なイメージを押し付けてくるのね。だから当たらず触らずで常に距離をおいていたんだけど、新学期になってからこっちM君の目つきが変わってきたのよ。」
「えっ?はっきりとお断りの意思表示してないんですか?何で・・・?」
「部内で感情的にこじれるのが嫌だったし、3年の秋までに特定の彼氏ができなければあきらめて自分と付き合ってくれればいいって言われてたんだもん。M君がいなくなると部としても困るし、友人としてはいい人なのよ。」
「わかりますよ、M先輩がいい人ってことは。僕だってあの人に誘われなきゃこの部に関わっていなかったと思いますもん。でも、そんな約束が二人の間にあったなんて気が付かなかった・・・。」
「始まりは私たちが1年の秋の頃だったから知らなくて当然よ。」
「丸2年の放置ですか、ちょっと厳しいよね。卒業も近くなってきて約束を反故にされるのが嫌だったんじゃないかな。でも今のところ僕が重要な関係者ってことの説明はありませんよね。」
「あら、とぼけてるのかしら?それなら夏辺りからの私への接し方はなんと説明してくれるのかしら?」
「それは・・・その・・・なんていうか・・・つまり・・・。」
「あのね、私だって知ってるわよ。春頃はSに熱上げてたのぐらいはね。振られたの?」
「ううん、あの方普通の男女関係の世界に生きてないんですもん。振られるも何も無いですよ。あの人の世界に入れてはもらえなかったって感じ。」
「あの子は特別だものね。そのあと気付いたら私の弟分のような位置にいたわよね。何か意図があって?」
「そう・・・ですね。先輩のそばにいるにはどうしたらいいかって考えた結果です。僕じゃ彼氏に立候補しても無理に思えたんで。」
「・・・・。」
「先輩、黙り込まないでくださいよ・・・。何かまずい事言ったかな・・・?」
「・・・・。」
「先輩、先輩ってば・・・。顔上げてくださいよぅ。」
「何で・・・そんな風に無理なんて決めちゃうのよ・・・。それだから私は・・・M君に訊かれてもはっきりした答えが・・・。」
「えっ?ちょ、ちょっと先輩、急に泣き出さないでくださいよ・・・。もう、困ったなぁ。先輩の涙なんて考えて無かったよ。」
「ねえ、何で。どうして無理なのよ。どうしてはっきりしてくれないの?・・・。」
「だって先輩の周りってAさんとかEさんとか、ぜ〜ったい敵わないようなすごい先輩ばっかりじゃないですか。この部に関わるようになって本気で落ち込んだんですよ。自分ってなんて何にも知らなくて、何にもできないんだって。こんなんじゃ先輩に意識さえしてもらえないなって。だから、先輩にくっついて周りの先輩たちから吸収できるものは吸収して、胸を張って先輩に告白したかったんだ。・・・??あれ?ちょっと待って・・・?」
「そんなこと・・・関係ない・・・。私にはあの、お姫様抱っこだけで十分だったのよ。皆に後で聞いたの。真っ先に抱えあげて保健室まで運んでくれたんでしょ?そんなことを人目も気にせず自然にできちゃう君は素敵だよ。男の子の魅力なんて他の人と比較することじゃないのよ。あれからずっと待っていたのに・・・。」
「ひょっとして、僕って物凄い抜け作?一人で落ち込んで、自分から無難な立場にシフトしたつもりが逆に首絞める結果になっているなんて・・・。わかりました、これ以上先輩に待っていただくのは心苦しい限りですね。先輩、いやTさん、若輩者で申し訳ないんですが、改めてつきあって、というより今後とも今まで以上にお付き合いいただけますか?あなたの特定の男性になりたいんです。」
「ありがとう・・・やっと・・・うれしい・・・。たかだか半年先に生まれていただけのことで、こんなに私のほうも躊躇するなんて思ってなかったし、年下の子達に嫉妬するとは思わなかった。知ってた?あなた1年の女の子たちからすごく評判いいのよ。私が彼女たちの中にいたら、もっと前に自分から動いていたと思う。」
「ええっ?そんなこと知りませんよ!みんな僕から話しかけないと会話には入れてくれないんだもん。」
「それはあの子達があなたを『先輩の彼氏』・『彼女のいる先輩』として認知しているからでしょ?まあ、本人同士の間でけじめが付いてないだけなんだもの。はたからみればそうなるわね。」
「僕の一人相撲と取り越し苦労ですか、本当に馬鹿みたいだ。あ、マスターが気をもんでこっち見てる。心配してるなありゃぁ。先輩、もう大丈夫ですよね、何にします。」
「アールグレイをホットのストレートでお願い。でも、もう二人だけのときは『先輩』はやめて。」
「あ、そうですよね。じゃあ注文してちょっとマスターに説明してきます。(・・・でも、急に言われても、なんて呼べばいいんだろう・・・困った・・・)」

本日のメニュ

  アールグレイ

ベルガモット (Bergamot) で柑橘系の香りをつけた紅茶。フレーバーティーの一種。茶葉のブレンドは特に規定がないため、セイロン茶や、中国茶とセイロン茶のブレンド、稀にダージリンなども用いられる。
このベルガモットの香りは、多くの場合、精油や香料で着香される。近年では、さらにオレンジ・ピールを茶葉に混ぜ込んだものもある。
着香茶であるアールグレイはアイスでも香りが比較的分かりやすい。逆にベルガモットの芳香は温度が高くなるほど引き立つので、ホットティーにすると慣れていない人にとっては非常に飲みにくいものとなってしまいがち。

posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲症候群 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
…気に入らない…。。。
気にいらないないぞー!!
がおおおお!!!
 ↓↓
 
>それはあの子達があなたを『先輩の彼氏』・『彼女のいる先輩』として認知しているからでしょ?まあ、本人同士の間でけじめが付いてないだけなんだもの。はたからみればそうなるわね<

は。取り乱してしまいました。
過去の記憶に触れましたもので。(笑)
ええ、似たような経験があるようですよ。
もう、周りが勝手に判断して色めきたって、当人同士はそうでもない。…なーんてこと。
あります、あります(懐)・・・

『たかだか半年先に生まれていただけのことで、こんなに私のほうも躊躇するなんて思ってなかったし、年下の子達に嫉妬するとは思わなかった。』
くぅぅうう〜〜〜
懐かしい甘酸っぱさが蘇るじゃあないですかぁ!
ええ、嫉妬しましたとも。
あはははん。(壊)

マスター!(どん!!)
酒じゃあ!酒盛ってこーィ!!
特別に、珈琲リキュールとかで、アルコールな飲み物作ってください。(笑)
Posted by ぺこぽこ at 2008年01月11日 15:37
ハッピーエンドでよかったわ♪

ところで私トワイニングのアールグレー(ディカフェのやつ)毎日飲んでいます。あの香りがたまらなく好きです。
Posted by minira at 2008年01月13日 23:21
★ぺこぽこ さん

いらっしゃいませ、アルコール入りの珈琲をご所望ですか?ではアイリッシュミストをたっぷり入れたアイリッシュコーヒーを淹れましょうね。当然砂糖は抜きで、ホイップクリームも邪魔ですね、えっ?コーヒーも邪魔ですか?でもそれを出しちゃうと珈琲店ではなくなってしまいます。お店がひけるまで待ってください。


>似たような経験があるようですよ。
ふ〜ん、ぺこさんにHITするとはちょっとびっくりしました。
友人との恋愛話の中で引っかかっていたネタを広げてみたものなんでしたが、こんなに激しい反応が返ってくると、自分の想像力に驚いてしまいます。『見てきたような嘘』ってこういう事なんですね。

今度聞かせてくださいね。
Posted by 銕三郎 at 2008年01月14日 22:52
★minira 様

いらっしゃいませ。デカフェのアールグレイですね。お店のどこかにあると思いますので、とりあえず探してみます。

>ハッピーエンドでよかったわ♪
結末の独白を書くために組み立てを考えていたのですが、若い子達の初心なドラマはハッピーエンドにして楽しんでいただくほうがよいかと思いこんな形にしてみました。

また、おこしくださいね。
Posted by 銕三郎 at 2008年01月14日 23:05
あはははは・・・
マスター、今度ぺこさんが話し始めたら合図してください。
ケガしないように、近寄らないどきますから。 (^o^)

あぁ、しかし、こういう高校生活がしたかったです。。。

呼び方って、ホント困ることありますよね。
今さら変えるというのもナンだし・・みたいな。
Posted by アキラ at 2008年01月15日 00:33
★アキラ師匠

いらっしゃいませ、ご注文がないのでアールグレイをお出ししましょう。

>あぁ、しかし、こういう高校生活がしたかったです。。。
今後とも師匠がうらやむ高校生活を描きましょうね。

>呼び方って、ホント困ることありますよね。
以前のぺこぽこさんのコメントのように、ファーストネームで呼ぶのはこの彼では敷居が高いはずですもんね。

Posted by 銕三郎 at 2008年01月15日 13:34
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