今回はネル布での抽出のための準備を見ていきます。1回で終わらせるつもりでしたが、ボリュームが多すぎて抽出まで進められませんでした。
私の若い頃の喫茶店といえばネル布で大量の珈琲液を抽出しておき、注文に応じて小なべで温め直して提供するのが一般的でした。そのため布(袋)自体も大きく、3L用のコーヒーポットの口に輪ゴムで留めて使用していました。どこでも同じように淹れていたところを見ると、開業の際に豆屋の研修で覚えてきたものでしょう。今思うとかなり豪快な抽出法です。
こんな方法を研修会で詳しく紹介してもしょうがないでしょうからマスターは新たに道具を用意しているようです・・・。
「おはようございます、マスター!!」
「おはようございます、見学に来ました。」
「おうっ!だが、できれば見学はやめたほうがいいな。」
「ええっ?だめですか?」
「ああ、そんな暇があるなら都心の有名な店に行ってうちのとの違いを自分の舌で確認して来い。珈琲の味の基礎ができていないんだから少し鍛えてからだ。特に今日はペーパードリップに一番近いネル布のドリップだ。変に癖がついても困る。」
「そんなもんですか。残念ね、お休みなんだから出掛けていらっしゃい。」
「今からでも3〜4軒をじっくり廻れるだろ。君の成長に期待してるぞ。」
「ちえっ、しょうがないな。それじゃあ行って来ます。」
「さて、今日はネル布だ。前々回に少しほのめかしてたから予習はしてあるんだろうな。」
「えへ、何にも。まっさらな方がいいかと思って・・・。あ、握りこぶしは止めて。正直に言いますよぉ、サボってました。ゴールデンウイークで浮かれててすっかり忘れてました。済みません。」
「まあいいか。番外編になってからは直接営業に関わる物ではなくなっているからな。知識として知っておいて、どのように自分の抽出法に生かせるかってことだけだ。怒るものでもない。」
「は〜い、気合入れて覚えていきます。」
「さてとこれが新品のネル布だ。一応1〜3人分を手に入れてみた。」
「片面が起毛しているんですけれど、どちらが内側ですか?」
「わからん。調べてみたがどちらもが正しいと主張している。縫い目などから推察すると起毛していないほうを内側にしたほうが使いやすそうだ。後で洗浄することを考えると起毛したほうに粉が引っかかると面倒だからな。」
「あはっ、適当〜。マスターでも解らないことはあるんですね。」
「道具だからな、使いながら覚えていけばいいだろう。それよりお前、化粧落として来い。ネル布には大敵だそうだ、香りが。吸着してしまうんだとよ。」
「スッピンになれと?」
「だから理由を付けてあいつを帰したんだ。普段と似ても似つかない顔を見られるのはいやだろう?」
「そんな気遣いはいりませんよ〜だ。それだったらマスターだって・・・、あ、そうか。何度もお店で泣いて化粧を落としたまま送ってもらったことがあったわね。じゃあしょうがないか。ちょっと待っててくださいね。」
「お待たせしました。もともと匂いの少ない化粧品ですし、香水の類は付けてないんで大丈夫です。」
「それじゃあ進めよう。ネル布は購入したままでは使えない。はずせるタイプのものは布だけにして、外れないものはわっかごと鍋で煮込む。」
「あれっ?どうして綺麗ですよ。」
「ネル布ってのはもっと柔らかいものだ。表面に糊がついているのさ。煮込んでそれを落とすんだ。」
「なるほど。でも、もう1枚ある布は随分色が違いますね。今回の講座のために練習して使い込んだんですね。」
「いや、1度だけだ。ドリップオンの講習になっちまった時から準備してたんで、『出がらしコーヒー』に漬けおいたり、2〜3日に1度の『煮出し洗い』をしていたらこうなったんだ。」
「えっ?使ってないのにそんな手間を掛けていたんですか?面倒ですね。」
「ああ、これが俺がネルドリップを選択しなかった理由さ。何枚ものネル布を毎日洗い、煮出し、管理するなんて俺には無理だ。毎回捨ててしまえるペーパーの方が俺には似合っている。」
「エコじゃあないわね。まあマスターがそんなことに気を使うとも思わないけど。そのおかげで私も助かるわけだし、いいことにしましょう。」
「どうしても洗剤で洗うことができない分雑菌が繁殖しやすくなる。脂肪分も吸着するしな。手入れを怠ると直ぐに異臭がし始めるぞ。その点ペーパードリップは簡単だ。ドリッパーだって熱湯消毒してしまえる。色素がこびりついてきたら漂白剤で煮込めばいい。後の洗浄に気を付けさえすればいいからな。」
「不精ですからね、マスターは。でもこの仕込んだネル布、湿ってますよ。」
「乾燥させちゃ駄目なんだ。これも面倒だな、というより冷蔵庫の中で邪魔になる。この2ヶ月本当に面倒だった。あの時そのまま知らん顔して『ネル布』で進めちまえば良かったと何度思ったことか。」
「あはは、かなり懲りてますね。そんな几帳面なことをチマチマとしているマスターをちゃんと見ておけばよかった。」
本日のまとめ・ネル布は使い始めるまでに準備が必要
糊を取るために煮出す。
コーヒーになじませるために出がらしのコーヒーに2〜3日浸す。
・ネル布は日々の管理も大切
使用後は水洗い、2〜3日おきに煮出し洗い。
保管は乾燥を避け低温で。
・香りは大敵
香りを吸着しやすいためコーヒー以外の強い香りは避ける。



それではそのネルでのコーヒーが頂けるのは次回以降になるんですね〜。
じゃあ、今日は暖かいのでアイスカフェオレを下さい♪加糖していただけると嬉しいです。
私のところもネルの管理はできない(専属の管理者がいない)ので、ペーパードリップかコーヒーメーカーです。
管理が簡単で清潔にできますもんね〜。
でもネルドリップのコーヒーって味わいがペーパーと違うような気がするんですが何故でしょう?何となく柔らかいような・・・。
いらっしゃいませ。アイスカフェオレですね。承知いたしました。
>でもネルドリップのコーヒーって味わいがペーパーと違うような気がするんですが何故でしょう?何となく柔らかいような・・・。
脂質の透過度合いや不純物の濾過具合の差だとは思いますが、詳しくは解っていないようです。
管理が大変なのですね。
初めて知りました。
しかもスッピンにならないといけない・・・
管理できてこそ、プロなんですね〜
いらっしゃいませ。そろそろ蒸し暑さが戻ってきました。アイスコーヒーをどうぞ。
>しかもスッピンにならないといけない・・・
まあこれはマスターのおふざけなんですけれど・・・。
吸着した香りが珈琲に映るようです。妙な香りのする珈琲はいただけませんね。
>管理できてこそ、プロなんですね〜
どの業界でも『プロ』は自分の仕事の前後もきちんと理解していてはじめて認めてもらえるものですよね。
<
ん〜、マスターのこういうとこが好きですねぇ。
常に三手先を読んでいる・・みたいな。
接客業には必須の能力でしょうか?
あ、南の国の情熱のアロマ、モカ・マタリをお願いします♪
昔(独身時代)、ネルを使ってたんですが、管理が面倒なのでやめました。
んで、待望のサイフォンにしたんですけど、そしたらサイフォンの底のフィルターもネルで、ガックリきたことがありました。 (´▽`◎)
いらっしゃいませ。
>情熱のアロマ、モカ・マタリ
ですか・・・?実は先ほどあるサイトを見ていて気になる記事を見たばかりなんです。
>エチオピア産、イエメン産コーヒー生豆から食品衛生法で定める基準値を超える残留農薬が検出されました。
エチオピアといえば有名なモカ、イエメンは高級豆のモカ・マタリですが業界では入荷量や価格で影響が出ています。<
但し、「コーヒー豆に個別の基準値が設定されていない」ので米やにんじんの半分以下の基準値、アーモンドにいたっては100倍も許容されているような数字です。実際には60KGの人が1kg以上の『豆』を摂取しなければ問題にならないそうです。
このため価格に影響が出ますのでしばらくは入荷できないかもしれませんね。
>サイフォンの底のフィルター
最近ではペーパーのものも有るようですね。業務として使用するには管理が簡便なほうが作業が標準化しやすいものです。
>常に三手先を読んでいる・・みたいな。
マスターのおふざけのための勝手な理由付けですよ。
このお姐さんは「香り」を大切にする珈琲の講習会に、濃い化粧で来るようなおばかさんではないとちゃんとわかっていますよ。