午後の陽射しは徐々に強まってきた。が、湿気を多く含みはじめた。
街路の植込みにあるサツキも盛りを過ぎ、道端にピンクの花弁を落としている。
換わってアジサイが白いがくを広げ始め、梅雨が近づいていることを教えてくれている。
店内ではいつものウエイトレスは出前に出かけたのか姿が見えず、マスターがカウンターの外に待機している。
午後の授業をサボったのか、高校生の常連が一人でカウンター席に座ってマスターに話しかける。
「マスター、質問しても大丈夫?」
「ん?構わんよ。ただし、答えられる範囲でしか答えんぞ。」
「いや、マスターの専門の話なんだけど。実はこの間雑誌を見ていたら『コーヒーの3大種』っていう見出しがあったんだ。詳しく読んでいる暇が無くって気になっていたんだけど。3大種って味で決めたの?それとも香り?僕の好きなコロンビアは入選しているの?」
「あのなあ、ブラジル、モカ、キリマンジャロって言うのは種でもなければ品種でもないよ。産地名なんだ。うちで扱っているコーヒー豆は種でいったら1種類だけだ。」
「えっ?1種類?こんなに味わいが違うのに?」
「ああ、そうさ。コーヒーの味は生産地の気候風土に大きく影響される。だから同じモカでも紅海をはさんだイエメン産とエチオピア産では味わいが全く違う。どちらもイエメンのモカ港から出荷されているのにな。」
「モカの名前はそこから来ているんだ。じゃあ3大種って?」
「アラビカ・ロブスタ・リベリカになる。うちで扱っているのはアラビカ種のみだ。その中の品種ティピィカや品種ブルボンは原種だが、生産量も少なく高級品だ。基本は交雑種や変異種が中心だ。コーヒーが世界中で飲まれているのも、これらが生みだされたり、発見されてのことだ。生産量の拡大を促したからな。それ以外では以前にジャワ・アラビカが入った時に比較用にロブスタも貰ったことがあったぐらいかな。」
「あ、思い出した。飲ませてもらったんだ。苦味ばっかりすごかったあの豆だよね。それじゃあリベリカは?」
「昔は結構一般でも多少は手に入ったらしいんだが、現在は国内流通には全く乗らない。」
「美味しいんでどこかが独占しちゃってるの?」
「いや、味はアラビカ種には敵わないらしい。比較するとロブスタそんなに変わらないぐらいのはずだ。」
「なんだかマスターの発言が歯切れ悪い。」
「俺もお目にかかったことが無いんだ。どうしても自分が味わった上での意見じゃないんで歯切れも悪くなる。ここのところは許せ。」
「でもそんなに突出していないものが3大種のひとつなの?」
「この3つ以外はほとんどのものが交配種になるからな。3原種のほうが正しい言い回しかもしれん。まあ他の2種に比べればもともと収穫量もずっと少なかったんだよ。」
「もともと少なかったんだ。でもそれなら希少価値がついて流通しそうなものなのにね。」
「だめなんだよ。作られなくなった理由には 1.病害に弱い 2.生産性が悪い 3.交雑が進みやすいってのもあるんだが、もっと即物的な理由も大きい。お前はコーヒーベルトってわかるか?」
「北回帰線と南回帰線の間の熱帯地域のことでしょう?それぐらいは解りますよ、馬鹿にして。」
「では、その地域の社会的特長を考えてみろ。」
「日照時間が長い、暑い・・・。」
「ばか、自然的な特徴じゃない。社会的背景を考えろ。」
「小さな独立国が多いですよね。植民地だったってことだよね。農業国か鉱物資源国で経済的に裕福じゃない国が多い訳だよね?でも、コーヒーのプランテーションは植民地時代に確立されていて好・不作に左右されはしても価格に反映されるから安定している方じゃなかったっけ。」
「おおっ、お前からそんなにきちんとした解答が出てくるとは思わなかった。だが、やっぱり教科書の中の理解に過ぎんな。現在の社会情勢の理解が足らない。それと産地との関連もな。経済状況が悪ければ社会不安につながる。そうなると…」
「ああっ、そうか。国内対立いや内戦だね。そうか、生産地が戦争していたら農作物の中でも主食じゃないコーヒーなんて後回しにされちゃうんだ。」
「リベリカ種発祥の地リベリア共和国ではそうだったらしい。現地の大使館に問い合わせたら身も蓋もなく『戦争でコーヒーなんかない』と言われたそうだ。今ではこの種を商品として作っている地域がほとんどないんだ。」
「ってことは、今後も特定品種や産地があっさり無くなるってことが起こり得るって話なんだね。なんだか寂しい話ですね。」
「平和なのが一番なんだが、食えなくなれば心が荒むからな。持っている奴を羨むのは正直な反応だな。人間そんなには賢くはできてないってことだ。」
「なるべく美味しい珈琲をたくさん飲んでおいた方がいいんでしょうね。飲めるうちに。」
「俺には生産地にできることは何もない。せいぜい手に入った珈琲を少しでも美味しく淹れるぐらいだな。多くの人が飲んでくれればいい。それで少しでも生産地を思いやってくれればいいと思っているんだ。」
本日のメニューリベリカ種
本文中にも記載したが、
1.病害虫に弱い 2.交雑が進みやすい 3.生産性が悪い
という特徴を持った原種。
1.2.はどんな原種にもついて廻る宿命だが、3.はこの種に特有の条件
他種に比べ樹勢が大きくなるので結実後の収穫に手間がかかる。
以降に出てきたアラビカ種やロブスタ種の交配種・変異種が生産量も多く病虫害にも強いこと、品質でもアラビカ種に敵わないことなどからこの種を生産する地域が減っていった。
「どうしたんですか、マスター?今日はいやに真面目な顔ですね。」
「モカの価格が高騰してるときにこんな質問をされたから、少し前に読んだある珈琲豆屋さんの話を思い出してな・・・。こういう栽培種は自然物じゃないんでレッドデータブックには載らないだろうしな・・・。」



今日は生産地に思いを馳せてみたいと思います。
バイト先で豆をブレンドする理由を聞いたら
・色々な特徴の豆をブレンドすることで味のバランスが良くなり、飲みやすくなる
・ブレンドしている豆で価格高騰や生産高減少が起こっても他の豆をブレンドすることで変わらない味、価格で提供する事が出来る
って聞いたことがあります。
生産高減少というところで単純に気候の問題しか想像していなかったんですが、内戦なども関係してくるんですね。確かに良く考えて見ればそうですよね〜。
気に入っていたものが飲めなくなるのは悲しいですが、次のお気に入りが見つかるきっかけにもなりますね。
勉強になりますね。いろいろと。
何かと値上げが続く昨今ですが、
とうとういつもの珈琲豆やさんが
「不本意ですが・・・」と申し訳なさそうに、値上げのお知らせを。
でも、20円だけだったので、まずはひと安心。
この先、どうなっていくでしょうね。
最近の食料品の値上げにからんだ話になってしまったため誤解が起きないようにちょっと整理しますね。
実は「番外編3」の時にアキラ師匠へのレスにも書いたんですが、モカが大変なことになっています。今日ある自家焙煎している方のページに書かれていたのですが、先日輸入された分全部が「残留農薬」の問題で国内に持ち込むことができなくなったそうです。そのためモカの急騰は必至となりました。当然ブレンドにも配合されているため珈琲豆全体の価格に影響が出ると思われます。
★花咲もも さん
いい先生についておられるようですね。
味の安定が商売で扱うには必須です。いくらいい豆でも安定供給が無ければお客様に失望を与え兼ねません。
★ひより さん
>いつも買うコーヒー豆
たしかモカではなかったはずですね。ビールの方は確かマンデリンでは…?
何が原因となるかは豆の流通まで情報が入らないと難しいですね。
この際新しい味にチャレンジする機会と考えればいいんじゃないでしょうか?
★Home-Design さん
>この先、どうなっていくでしょうね。
残念ですが2次値上げが待っていると思われます。良心的な豆やさんが頑張って努力してもどうしようもないところになってしまいそうです。
せめて中南米産の豆だけでも値上げの対象にならなければと思います。
ちょうどアフリカ開発会議が閉幕しましたが、遠いように思えるアフリカも、コーヒーや紅茶や、いろいろなもので私とつながっているのだと思うと、不思議な感じです。
私にできるのは、産地や産地の状況を知ろうとすることと、目の前のコーヒーをおいしくいただくことだけです!
いらっしゃいませ。残り少ないモカをどうぞ。
>ほっと一息つくその時間にも、世界のどこかで何かが起きているのですよね。
そういった連想力とか、想像力って重要ですよね。相手の情勢を思いやって解決に向けて話をすることができればかなりのことが解決に向かうんではないかと思います。
>産地や産地の状況を知ろうとすることと・・・
知らないで享受するよりも知って思いを馳せながら飲むのでは味わいも違ってくると思います。
今日はいいお天気でしたねー。なので、喫茶店でジュースを飲みました。コーヒー飲んだわけじゃないのに、どうも喫茶店に入るとマスターのことを思い出してしまいます。どうしたらいいですか?(笑)
いらっしゃいませ。お久し振りですね。バウムはまだ残っていますよ。
>どうも喫茶店に入るとマスターのことを思い出してしまいます。
そこまで私に恋してしまわれたんですか?お通いくだされば進展もあろうものですが。
テンプレート…そうだったんですね。随分印象が違うものになりましたね。
・・・・・! ちょっとー、そう来ましたか!(爆)
くーっ、これも妙なノリで返さなきゃいけないんですね。わかりまひた。では私がマスターのストーカーとして登場する物語を作ってください。どろろーん。
>私がマスターのストーカーとして登場する物語を作ってください。
ええっ?それは・・・。会話劇でストーカーを映し出すのは難しい・・・。
いつもカウンターの同じ席に座って、ぽわわんとマスターの動きを目で追っている程度じゃないんですもんね。
困った〜。イメージできたら書くという方向でよろしくお願いします。
マスターのお薦めをください。
>マスターのお薦めをください。
今後高くなって飲めなくなりそうなモカをどうぞ。
>内装が変わったんですね。
しばらくいじってなかったので、大幅なイメチェンをしてみたくなったんです。
固定的なイメージのあるスキンは使いづらいですから、シンプルなものを選んだらこれになりました。「カーキ」も候補だったんですがyasさんに怒られそうなので・・・。
いらっしゃいませ、モカでよろしかったんですね。
>皆で同じ色にしましょう。
ある日いっせいに界隈のseesaaユーザーのブログが同じスキンに統一されたら、巡回ルートにしている方々はびっくりするでしょうね。「あれ?さっきもここにいたような・・・??お気に入りの選択を間違ったのか?」などと思うんでしょうか。
何かイベントを考えてみるのもいいですね。
あらやだ、イメージしなくていいですよ〜(笑)
ストーカーは上段ですから、冗談。
本当は流れ板の役がいいです。(ここは料亭じゃないって?)
みんなで同じスキン大会、面白そうですね。レスする時も戸惑いそうですね。
>冗談
ええっ?そうなんですか?
流れの女性職人さんがストーキングするお話を考え始めてしまいました。いいです、このまま考えますよ〜。
同じスキン大会、おもしろそうですね。ヨソ様(←ヨン様ではない)の家っぽくなって借りてきた猫みたいになるかもしれませんが。
>同じスキン大会、おもしろそうですね
わ〜い、また一人参加表明を頂きました。
何か都合のいい記念日でもないでしょうかね?
その日いっせいに記事更新とスキン統一・・・。
訳わかんない記事が並ぶ1日。おもしろいなぁ〜。