2007年07月04日

◆ご挨拶と準備

銕三郎です。ああ、こんなはじめ方は初めてですね。
いつも私の変な珈琲SHOPを御贔屓にしていただいてありがとうございます。
日ごろのご訪問・コメントに感謝を込めて、皆様から何回か質問があった「美味しい珈琲の淹れ方」を纏めてみようかと思い、「抽出研修会」というカテゴリーで別途シリーズを始めることにしました。
お読みいただいている皆さんが、自分の手で美味しい珈琲が淹れられるようわかりやすく、といってもいつもの文体でしか書けないので微妙なんですが、大事なことだけは書き漏らさぬよう頑張って完結させてみます。次の世代にマ●クのコーヒーが珈琲だと思わせたくはないので・・・。
これまでのシリーズと交互ぐらいでぼちぼち進めて行きますので、よろしくお願いいたします。
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「マスター、講習会をそろそろ始めなさいって。オーナーから指示がありました。」
「なんでまた、いまさらのようにやるんだ?」
「いままで、コメント欄で質問があるたびオーナーが答えてくれてたんだけど、あちこちに分かれちゃってて判り辛いし、新たな質問なのかもわからなくなってきたんですって。」
「自分でまとめりゃいいじゃねえか。俺なんか引っ張り出さなくっても。」
「オーナー一人じゃ間が持たないんですって。第1期の私とのコンビがいいんじゃないかって。」
「俺にやらせて、見物を決め込むつもりだな。まあいいさ、雇われの身だ。経営まで任されているとはいえ、な。首にならないようにせいぜい頑張らせてもらいますよ。」
「じゃあ何からはじめます?まずは歴史とか文化からですか?」
「なにボケてんだ?質問の多かったのは淹れ方とか、器具の選び方だろ?歴史なんてググればすぐわかるだろうが。さてはお前、全く下調べしてねえな?」
「えへへ、ばれちゃいました?」
「もういいから。それなら読者の皆さんの代わりとなって、俺の言うとおりやってしごかれてみるんだな。」
「はいっ!頑張ります。」

「じゃあ、今回は準備する必要があるものだけ言っておくからな。」
「メモします。」

「珈琲豆、できればロースト段階が違う同じ豆が3種。なければミディアムロースト1種は最低でも必要。とりあえず100gあればよい。基礎編講習時には同じ豆を使い続けたほうが良いな。」←追記しました
「水、水道水でよい。ミネラルウォーターは使わない。浄水器の使用は可。」
「砂糖・ミルクは適宜。ただし試飲時は不要。」
「ミル、ない場合はなるべくその日に挽いたばかりの豆を使用すること。」
「氷、市販・冷蔵庫の製氷機のどちらでも可。ただし作り置きの期間が長くなったものは不可。」
「ドリッパー、できれば1杯用の物がよいが、なければ2〜3杯用で可。」
「ペーパー、使用するドリッパーにあったもの。普段使っているものでよい。」
「ケトル、できれば注ぎ口が細いものを使用するほうが楽。1L程度の容量があればよい。」
「サーバー、5〜6杯入れられるものでよい。透明なガラス製が良い。」
「カップ、とりあえず150cc程度の普通のカップであればよい。他にマグカップもあると便利。」
「グラス、アイス用。大きすぎる・小さすぎる以外は問題なし。調整は自分でする。」
「メジャースプーン、コーヒー豆専用のもの。慣れればティースプーンで量ることも可能だが、非常に面倒。」
「秤、1g以下まで細かく計れて、最大5〜60gを量ることができればいい。」
「ガス台、電化住宅ならなんていうんだっけ?忘れた。」
「シンク、ない場合はサーバーで代用は可。ただし非常に面倒。」
「ホットプレート、サーバで複数杯を抽出する時に冷まさないようにするため。あると便利な程度。」
「ゴミ袋、ドリップ後のペーパーを捨てる。重くなる可能性あり。」

「以上かな。講習時に常に必要になるとは思わないが、全体を通して必要になるだろう物を列記してみた。質問は?」
「今後の講習で説明があるんですよね?だったらいいです。」

「それでは次回より、講習会を進めていきますのでよろしくお願いいたします。」
「実際に私と一緒にやってみてね。」


 お願い

企画した手前、わかりやすく進めたいと思っておりますので、コメント欄への「ご質問」に関しては各講習内容に沿ったものを頂ければありがたいと思います。
実際にやってみてうまくいかないとか、できたとかの報告もお待ちしています。
解りにくい所や間違った記述はコメントを参考に随時改訂していきます。
最終的には美味しい珈琲を淹れたい方のハンドブックになればと思っております。

なお、ご意見ご感想などは適宜で構いません。ご協力をお願いいたします。

この回へのコメントは応援が嬉しいな。

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2007年07月10日

◆基礎編 1.計量 

始まりました「抽出講座」ですが、今回は珈琲は淹れません。
ミルの出番もありません。お湯すら不要です。
なにをするかと言うと、タイトルどおり計量です。ひたすら計量スプンと秤を使うのみです。
でも、これをわかっておいて頂かないと、後になって困ることになります。

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「じゃあ、最初の講座から始めよう。」
「いきなり始めちゃうんですか?お湯とかまだ沸かしてないんですけど。」
「まず最初にそこの秤とってくれ。」
「無視ですか・・・コレですか?重いなあ。私、こんな体重計に乗るのはヤですよ。」
「何を持って来てるんだ。そこの小さな電子秤でいいんだ。せいぜい50gが量れればいいんだから。」
「なーんだ、コレですね。なにを量るんですか?」
「豆。今日のテーマは計量だ。」
「粉じゃないんですか?」
「普段から美味しい珈琲を飲みたいって考えているんなら、粉で保管はしてないだろ?挽いたら半日しかもたないんだぞ。」
「はあ。」
「だから豆を挽く前の段階で、粉になる時に失われるものも計算に入れて量るんだ。そのスプーンで1杯掬ってみろ。」
「こうですか?」
「そのまま秤の上にメジャースプーンごと載せて・・・ほら見てみろ。」
「ええっ?これで8gしかないの?」
「うちのミディアムローストの豆だと多分1杯山盛りでも12g位だから少し足らないんだ。」
「うちでは確か1杯分の粉は12gだったんじゃ・・・?」
「挽いた後ならな。シルバースキンや、破砕された微粉は不要だから除くし、ミル内にカスとして残ってしまう分もあるからな。豆のままで13〜14gあったほうがいい。」
「いちいち量るんですか〜?面倒〜。」
「計量はする癖をつけたほうがいいぞ。自分好みの味を見つけたとき再現がしやすくなる。また、豆を変えたときとか、いつもの豆が手に入らなかったときとか、基本に戻って計量から手順を確認したほうが早く新しい豆に慣れると思う。何度も量っているうちに感覚的にわかるようになるって。」
「家庭の主婦の皆さんは慣れるまでやってられませんよ。」
「美味しく珈琲を飲みたいんならこういうところの手間を惜しんじゃいけないんだよ。珈琲の抽出は繊細なんだ。たとえばミルが変わっただけでも味に影響が出る。そんな微妙な部分を解って貰おうって企画なのに、この講習の意味を無くす様な意見は挟むな。」
「ふぇ〜、ごめんなさい。」
「今回の講習会の意図は『基本の習得』にあるんだ。応用編になって淹れ方の違いによる味の変化を試そうにも、粉の量などの基本条件が変わっちまったら検証の意味がないだろ?」
「比較実証の基礎ですね。わかりました。とりあえずきちんと量ります。」
「ちゃんと守るように。ところで、ここで問題になるのが、一般家庭には2〜3杯用のドリッパーしかないって事だ。」
「あ、ご挨拶の回でも言ってましたね。1杯取りのドリッパーがなければ2〜3杯用でもいいよって。」
「実は2〜3杯用のドリッパーでは1杯だけ淹れるのは非常に難しい。大きさが違うだけじゃなく、落ちる速度も調整されているんだ。それならば基本の淹れ方は同じだから、最初から豆(粉)を2杯分使って2杯分落とせばいいんだ。ただし豆の計量は単純に2倍すればいいものじゃないがな。」
「えっ?2杯だから24gじゃないんですか?」
「ああ、2杯目、3杯目はともに10gずつ増やす。ドリッパーにはもう1段大きいのがありこれは4〜6杯用で、4杯目からは8gずつ増やしていく。」
「と言うことは目分量で12g・10g・8gを掬い分けられなきゃいけないってことですね。」
「正解。といっても、それは豆の種類ロースト具合でも変わってくるので一概には言えない。好みにもよるからな。この豆の量はうちの店で使っている豆に対しての俺のレシピ。数多く淹れて、好みのスタイルを見つけるしかない。」
「それじゃあ講座になんないんじゃ・・・?」
「だからそのための基本を作るための講座なんだよ。どんな豆、どんな器具であっても基本的な接し方を守ってもらえば基準点が作れる。土台がぶれないようにするのが目的なんだ。」
「と言うことは、今回のキモは『慣れるまで、豆の量は必ず計量しなさい』ってこと?」
「理解してくれたようだな。さあ、練習練習。先は長いぞ!」

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2007年07月19日

◆基礎編 2.抽出準備

お待たせしました、第2回です。今回も珈琲は出来上がりません。お湯の準備までです。
珈琲の抽出には事前に幾つかしなければならないことがあります。それを1つずつ紹介していきます。そのためちょっと長くなっております。ご容赦の程お願いします。
何故それをするのか、どうして必要なのかをご理解いただきたいと思います。

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「おっ、2回目の準備はできてるな。ところでミルは用意したか?」
「あ、おはようございます。ミルはこれでいいですか?倉庫にあったやつですけど。」
「ん?お前自分で挽くんだぞ?それでいいのか?手動のミルじゃ疲れるぞ。今日はかなり挽くことになるんだが・・・お前がいいんならまあ・・・。」
「え〜っ、これのほかにもミルってあったんですか?」
「電動のやつは見た目ミルらしくないからな。倉庫の入り口脇に置いといてやったのに気が付かなかったのか。」
「私、普段お店で使ってる『DITTING』か飾ってある鋳物の物しか見たことないから判んなかったんですよ。すぐ取ってきますから時間ください。」
「抱えたまま転ぶなよ、ミルが壊れるからな。」

「この間にミルの良し悪しを説明しておこうかな。まずは電動手動のものを比較しよう。手動の良い所は電動ほどに早い速度で挽かないので豆が熱ダレしないって事があるな。また挽きたての豆の香りと時間が落ち着きが生む。だが欠点も多い。一定の力で挽くことができないので粉が均一にはならない。何より腕が疲れる。電動の良い所は手動の欠点を補っている部分だな。それから時間の節約ができる。機器を選べば熱ダレの少ない物を選ぶこともできる。だが、良い物は高価になっていく。業務用に使っている『DITTING』社のミルは30万近くする。その分安定した動作ときちんとしたアフターケアが受けられる。それが高価な所以だな。どんなミルでも歯(刃)は消耗品って事を忘れないように。」
「次は挽く方式の違いだ。これは製品の紹介には必ず書いてある。固有名はメーカーによって違うこともあるが、大きく分けて3種類ある。チョッパー式臼式カッター式になるかな。この順で高価になっていく。まずチョッパー式だが、これは挽くというより砕くと言った方がいい。粉の粒のサイズを表す「メッシュ」の大きさは挽いている時間によって決まる。そのため挽きあがりに斑がかなり出る。使えない微粉が一番多くでるのもこのタイプだ。次は臼式。これは古くからある石臼を金属の歯に換えた物だ。粗いものから細かいメッシュまで安定して挽けるが、歯との接触時間が比較的長くなるため豆に熱が伝わりやすい=熱ダレをしやすい。最後のカッター式は豆を切っていくタイプ。そう言うとチョッパーとの違いが解り辛いが「砕く」と「切る」との違いは非常に大きい。熱ダレもしにくくメッシュも均一にできる。但しエスプレッソ用のような微細なメッシュは苦手としている。また、機構が複雑になるため高価で替え刃も高くなる。」文字は後日訂正 

「使用頻度と予算で選択すれば良いと思いますね。家庭で使用するのであれば、歯の寿命なんかは考慮に入れる必要はないでしょう。マスターが用意してくれたのは『BRAUN』の臼式ですね。小さくて使いやすそうですね。」
「お、やっと戻ってきたか。じゃ始めようか。」
「はい、今日は何からしましょう。」
「抽出前の準備を一気にやるぞ。あたふたしてる暇はないからな。あと、この後は1杯取りと2杯取りを分けて説明するのは面倒だから全て2杯取りで進めるからな。」
「ふ〜ん、手抜きするんですね。」
「バカヤロウ!殆ど同じ説明を2回してもしょうがないし、家庭にあるのは2〜3杯用のドリッパーだろ。合理的って言うんだ。」
「はいはい。でも結局マスターが楽してるのは変わらないと思う・・・痛い!拳骨は止めてくださいよぉ。」
「余計なことを言ってるからだ。それだけ憎まれ口を言えるんなら、練習の成果を見せてもらおうか。まず濾紙を折って開く。下と横のマチをそれぞれ反対側に折る。その後で開口部を開く。」
「なんで互い違いにするんですか?」
「片側にするとその側だけが厚くなってドリッパーとの間に隙間ができちまうんだ。」
「解りました、こうですね。できました。」
「では、豆を24g掬って入れてみろ。一応量るからな。」
「任せておいてください。はい、24gできました。量ってみても大丈夫でした。」
「よし、豆を挽くぞ。ミルに入れて挽いてみろ。メッシュの調整は済んでる。」
「はい、蓋をしてっと。このスイッチで開始するんですね。うわっ、結構大きな音がする。ずいぶん時間がかかるんですね。」
「ああ、だから熱ダレを起こすんだ。店のミルなら一瞬だろ。」
「そうですね、ランチ前に挽き置きする時だって300g挽いてもこんなにかかんないですよね。」
「それが価格と性能の差ってやつだ。全部挽けたらペーパーに移して、秤に乗せてみな。容器を叩くなよ、折角分離した微粉とかスキンが混じるぞ。」
「どうしてうまく分かれるんですか?」
「これら電動のミルは静電気でやっているな。微粉もスキンも軽いから静電気で吸い寄せて集めることができるんだ。でも全てを取れるわけじゃない。それより挽いた後何グラムになった?」
「22.5g・・・です。あ、ちょっと多いですね。」
「軽く上下に振って粉が浮いてるところに息を吹きかけて、残っている微粉とスキンを飛ばせばいいぞ。必要な粉まで飛ばすなよ。」
「やってますよ。これぐらいでいいですか?」
「大丈夫だ。今日はここまで。じゃあ、次回はやっとお湯を使うぞ。」
「この挽いた豆はどうするんですか?」
「オレが後で淹れてやるから、飲むだろ?」
「いただきま〜す。」
「あ、そうだ、次回始める前にお湯沸かしとけよ。水道の水ヤカンで構わないからな。」
「解りました。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ??| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月31日

◆基礎編 3.抽出(1)

第3回をお届けします。この回でやっと珈琲の粉にお湯を注すことになります。
しかし、まだまだ珈琲は出来上がりません。
今回は一番大事な「蒸らし」を学んでいただきます。理屈がわかればこの工程の重要さが理解していただけるかと思います。

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「3回目だな。今回はお湯を使うぞ。準備できてるな。」
「はい、マスター。前回言われたとおりヤカンで沸かしておきました。やっと珈琲を淹れられるんですね、ワクワクしてきました。」
「じゃあ始めていこうか。まずコーヒーカップに水を入れてサーバーに2杯量って必要な量を理解しておこう。サーバーには目盛が付いているがあまり信用しない方がいい。1杯ごとに印を付けておくのがいいぞ。」
「この線まで珈琲を溜めればいいんですね。」
「ああ、だが今回はそこまで進まない。抽出に一番大事な部分だからじっくりやるぞ。」
「はい、でもヤカンでお湯を沸かしたのは何故ですか?」
「家庭で使うドリップ用のケトルはせいぜい1L位だろ?何回も練習するとすぐに無くなっちまうからな。次を沸かす間待っているのも面倒だろ。でも大きいケトルだと今度は扱いが大変になる。重くなるから微妙な湯量のコントロールをするには慣れないと難しい。だからヤカンでお湯を沸かしておいて、足らなくなったら継ぎ足す方が楽だと思っている。」
「じゃあ、ガス台2口使うんですね。」
「そうだ。遠い方にヤカンを置けよ。」
「はい。サーバーはこのホットプレートの上でいいんですか?」
「まだ、ホットプレートはいいよ。今回は落とさないからな。ケトルにお湯を移してガスの火をつけろ。」
「いよいよですね。ドリッパーのセットもできました。」
「ペーパーと粉は外しとけ。今すぐにはいらない。」
「え〜っ、まだですか。ドリッパーとサーバーだけでいいんですか?」
「お前、お湯を細く注ぐ練習しなくていいのか?出来るんなら先を急いでもいいが。」
「ち、ちょっと待ってください。そんなに難しいんですか?」
「抽出で一番大事なのがお湯のコントロールだ。必要な量を必要な場所に一気に注げなきゃならんからな。」
「う〜っ、練習させていただきます。このドリッパーに注いでいいんですね。」
「ああ、コントロールしてな。おい、そんなに太く出したらいくら中ぐらいのドリッパーだからといってもすぐあふれるぞ。もっと細く絞れ。細くして中央からのの字を描くように外へ、と言っても壁には当てるなよ。」
「はい、でも腕がプルプルしてきます。」
「二の腕に振動ベルトでもつけてんのか?そういえばそれで飛んでみせるとか言ってたよな?」
「真剣にやってるんですから冗談は止めてください。それよりこんなに力要るんですか?」
「慣れないとそうかもな。スムーズに湯の落下点を動かすには、腕って言うより手首が重要だ。お湯が入って重くなったケトルを傾けた状態で保たなきゃならんからな。いいだろう、この感覚がわかればいい。出来るようになるまで待ってたら、この回が終わらせられない。」
「ああそうですか、不出来な生徒で申し訳ありませんね。」
「それが解っているなら次回までの宿題にしてやる。続きを進めるぞ。」
「は〜〜〜い。ドリッパーに粉をセットします。」
「軽くたたいて粉の表面を平らにするように。」
「とんとんとんっと・・・、はい、できました。これでいいんですね?」
「じゃあさっきの要領でお湯を注してみろ。ここでの注意点はお湯を注ぎすぎないことと湯温が高すぎないこと。まず量について。ドリッパーから下にお湯が落ちないだけしかお湯は入れない。その量で粉全体にお湯を行き渡らせるんだ。そしてお湯の温度について。抽出の適温は90〜5℃、グラグラ沸き立ってちゃ駄目だ。沸き立ったヤカンからケトルに移すだけでも充分温度が下がる。下がりすぎたら火に掛ければいい。聞いてるか?」
「そんな難しいことを一遍に言われても・・・。あっ、既に下から漏れ出してます。」
「それならすぐお湯を注すのを止めろ。まあいい、最初だからな。それよりお湯を注した粉の表面を見てみろ。」
「あ、膨らんできてます。どんどん大きくなっていきますね。」
「この状態が『蒸らし』だ。この中で何が起こっているかというと・・・。」
「と言うと?」
「ガス交換が行われている。簡単に言うと粉に閉じ込められていた二酸化炭素とお湯が入れ替わっているんだ。焙煎時に豆の中に取り込まれた炭酸ガスがあったところにお湯が入り込みガスが放出される。その結果がこのドームだ。」
「粉になって表面積が増えたところ全体にお湯が広がっていってるんですね。」
「だから、この1投目は斑なく全体にお湯を行き渡らせる必要がある。一箇所にお湯を集中するとお湯の通り道が出来てしまうんだ。道が出来るとお湯はそこを通ろうとする、抵抗が少ないからな。そうなったら蒸らしは進まない。粉は斑だらけだ。」
「うぇ〜、プレッシャーかけないでくださいよぉ。もう一度やり直していいですか?」
「何度でもやってみることだ。実際にはこのまま次の工程に進んで滴下させてもいいんだが、講習会としてはここで一旦区切らないと長くなりすぎるからな。」
「いつまで膨らませればいいんですか?」
収縮を始める直前で次の2投目を注いでいくんだ。だがそれは次の回で説明する。」
「じゃあ今回はこれまでですね。ケトル置いていいですか?」
「お前、ずっと持ってたのか?それじゃあお湯が冷めちまうだろうが。お湯を注したらガス台にすぐ戻せ、ばかもんが。」
「最後まで怒られて終わるんですか〜?」

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2007年08月05日

◆基礎編 4.抽出(2)

第4回目をお届けします。
今回でほぼ抽出は終了します。
しかし、今回の工程で味の大半が決まるといっていいでしょう。
珈琲の味を生かすも殺すもこの工程次第。最後までお付き合いください。

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「さあ、最後の工程だ、ここまでの分練習してきたんだろうな?」
「あ、マスター。早く早く、ここからどうすれば良いか教えてください。」
「なんだ、もう始めていたのか。2投目のタイミングだな。とりあえず自分の好きなようにやってみな。」
「家で練習したときももったいないから続けて淹れてみるんですけど出来上がったのを飲むと変な味なんです。薄かったり濃くて嫌なエグ味があったりして、どうしたら良いのかわかんなかったんです。」
「それで、今回のはどうなんだ?飲んでみたか?」
「今飲んでます・・・§£塘wζ・・・。マスターまた失敗したみたいですぅ。ちゃんと教えてくださいよぉ〜。もうこれ以上変な味の珈琲飲みたくないんです。」
「甘えるな、みっともない。ま、失敗したらどうなるのかわかったから良しとしようか。いい経験が出来ただろ?」
「わざとですか?いい根性してますね、マスター。食べ物の恨みは怖いですよ。」
「逆恨みの真似事はそのぐらいにしとけ。ちゃんと聞く準備はできたのか?」
「うう・・・。とっくに出来てますよ〜だ。人をおもちゃにして・・・」
「聞こえるように余計な事言ってるとこれまでにするぞ。」
「あぁっ、それは勘弁してください。オーナーはもとより、見てくださっている読者の方から『ふざけるなっ』って罵声が飛んできますよ。」
「それじゃ第4回の講習を始めようか。」
「ええっ?始まってなかったことにしちゃうんですか?」
「お前の失敗なんぞ講習内容には含まれていない。」
「そうなんですか・・・。ちょっと待ってください、気持ちを切り替えます・・・はい、いいですよ、前回の続きまで準備できました。」
「ふうん、ドームの形成はうまく出来るようになったようだな。このまま続けるぞ。ドームが精一杯大きくなったところで2投目だ。ドームの中央から小さく渦を描いて外へ静かに注げ。内から外へドームがゆっくりとはじけていくだろう。そしてその縁の高さが最初のドームの頂点と同じになったところで注湯停止。そのまま珈琲が滴下し、粉の中央が10%程下がるのを待つ。そこで3投目だ。この間に余裕の時間はないぞ。今度も中央からのの字を書くように外へ注いでいく。注湯量はこれまでより多めに入れないと追いつかないぞ。注湯停止のタイミングはドリッパーの縁から20%ほど下だ。後は水面の中央が10%下がったら元に戻すことを繰り返し、必要な量だけ滴下したところでドリッパーをそのまま外しシンクの中へ。以上で抽出終了だ。」
「自分でやったのとはぜんぜん違う。マスター幾つか質問して良いですか?」
「ん?何か判らんことでもあったか?」
「いえ、理由が知りたいんです。」
「おっ?少しは頭を使って覚えることを始めたのか?いいだろう、どの工程だ?」
「まず、ドリッパーの縁一杯まで使わないのは何故です?」
「このドリッパーは2〜3杯用だ。3杯の時は上まで使うんだ。水面の高さが高くなれば水圧が上がる。お湯と粉の接触時間を変わらなくするために抽出スピードをコントロールしているんだ。」
「あ、なるほど。と言うことは2杯取っても、3杯淹れてもほとんど時間は変わらないわけですね。」
「そうだ、これは大きなドリッパーを使用するときもあまり変わらないだろうな。」
「じゃあ次。水面が下がるのを待って次を注いでいますが何故ですか?下がらないように入れ続けても良いんじゃ・・・あ、そうか、お湯の温度だ。」
「頭が回ってきたようだな。正解だ。ケトルをコンロから離していればどんどん湯温が下がってしまう。こまめに火にかけてやることで温度が下がりすぎるのを防いでいるんだ。」
「最後にドリッパーに残したままサーバーの上から外しますよね?これは?」
過抽出をすると不必要な成分まで引き出してしまう。ドリッパーにはそんな成分が既に抽出され始めているんだ。粉を絞ればそれを加速してしまう。『絞る』ってのはドリッパーにお湯を注さないで落としきることを言う。外した後に滴下した分だけを別のサーバーにとっておいたんだが飲んでみるか?」
「お話をうかがっただけで想像できますから結構です。ひょっとすると私の最初に淹れた珈琲の嫌な味はこれが原因だったんですか?」
「大半はそうだな、それだけじゃないがな。」
「ちゃんと意味があって、科学的に考えられた抽出手順なんですね。分かりました。ちゃんと練習して、マスターの代理が出来るよう努力します。」
「それはいいよ。お前の珈琲がお客に出せるようになるのと、この店がなくなるのとどっちが先か分からんからな。」
「そんなにかかりませんってば。失礼ですね。」
「いや、な・・・。美味しい珈琲が淹れられるのと美味しい珈琲が『安定して』淹れられるのとでは力量が全然違うんだ。我々が飲む分を任せることはあっても客に出すものは俺を納得させない限り作らせんよ。うちの看板は『珈琲の味』なんだからな。」
「前にお客さんに怒鳴ってたことがありましたね、そういえば。じゃあ私が目指すのはマスターが美味しいって言ってくれる珈琲ってことですか?」
「俺じゃなくて彼氏でいいんだよ。珈琲は嗜好品だ。商売にしなきゃ自己満足の世界で構わないよ・・・に、睨むなよ・・・あっ、わざとじゃない。別に親父さんでもいいんだ・・・ってやぶへびか。」
「ふんっ!!いいですよ。どうせ彼氏なんかいませんよ〜だ。自分のためだけに珈琲を淹れ続けてやるんだから。覚悟してくださいね。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ????| Comment(18) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする