2008年07月17日

◆応用編 8.アレンジコーヒー ICE篇

毎日暑い日が続きますね。お待たせしました、応用編 8.アレンジコーヒー ICE篇をお届けします。

アイスのアレンジには、氷が入っているものないもの、グラス・ゴブレットなど、さまざまな提供方法が用意されています。これは提供時の見た目に関わるものなので、一部を除いて特にこだわる必要はないと思います。
今回マスターは、提供方法の違いで冷やし方が違う器具にこだわって講習を進めるようです。

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「おはようございます。今日も暑いですね。」
「おう、おはよう。アイスコーヒーを淹れておいたぞ、飲むか?」
「ありがとうございます、頂きます。・・・あれっ?いつもと違う。コーヒーの味が濃い・・・じゃないなぁ厚みがあるとでも言ったらいいのかしら?」
「面白い表現を使うなぁ。これは特殊な冷やし方をしておいたものだ。手間がかかるから一般には出せないからな。」
「手間って、どうしたらこんなアイスコーヒーが作れるんですか?」
「氷で冷やさなかっただけだ。いつもよりほんの少し軽めに淹れたアイスコーヒーを冷却材で冷やしてみたんだ。加水されない分濃さが残っているだろう?」
「なるほど、たまに冷凍庫に入っているあれですか。氷が溶ける分冷えるけど薄まっちゃいますもんね。」
「今日はアイスアレンジコーヒーを紹介していこう。器具も色々使うからな。」
「私の勤務の時に出してないものは作り方さえおぼつかないのがあります。読者の方と一緒に勉強させていただきます。」
「お前、学生時代よりずっと勉強家になってないか?そのうち知恵熱が出るぞ。」
「馬鹿言ってないで始めましょう。」
「わかったわかった。アイスアレンジで重要なことは、香りが出にくいことと甘味が伝わりにくいことだ。」
「確かにそうですね。普通のアイスコーヒーでも、通常のレシピでお客様に出した時、『ガム抜きか?』と追加でガムシロップを求められる方がみえますよね。アルコール香もなかなか香らなくって練習ではついいれすぎてしまいました。」
「暖かければ広がって鼻腔を刺激する香りなんだが、冷たいと口の中から香る感じになる。それが味なんだが、理解していただけない方もたまに居るな。」
「そういえばマスター、今回は冷やし方から器具を紹介するっておっしゃっていましたよね。グラスやゴブレットに満たした氷の上から一気に注いで冷やすだけじゃ駄目なんですか?」
「そう言うだろうと思っていた。答えは『問題ない』だな。特別なアイスアレンジを除いてはそれでも構わないんだ。味的にはなにも問題ない。」
「じゃあ何故?」
「見た目だ。以前に写真を載せた『メキシコ風ホットカフェ』をアイスで作ることを想像してみろ。基本の冷やし方だけでは対応できない。」
「なるほど、確かにそうですね。アイス・オ・レでもグラデーションをつけようとしたら一気にグラスには入れられませんものね。」
「そんな時に使うのがシェイカーだ。この中に氷をつめて使う。冷えたところで蓋についているストレーナーを使って氷を除けば、氷に邪魔されることなく静かに注ぎ入れる事ができる。」
「本来の使用目的である混ぜるためではなく分けるために利用するんですね。」
「これは氷を残したくないアイスウインナーの時に使うんだ。これはカクテルを作る本来の使い方だぞ。カクテルには氷は入っていないだろ?」
「ああ、そうか。そういえばカクテルグラスに氷が浮いていたら変ですよね。」
「また、混ぜるのが主体となるのがレギュラーアイスとチョコシロなどのはいったアイスアレンジが一緒にオーダーされた時だな。」
「別々に淹れないで一緒に落としておいて使う分量だけシェイカーに入れてチョコシロと混ぜるんだぁ。忙しい時ならではのテクニックですね。」
「でも、かっこよく見せようと思ってシェイカーを振るんじゃないぞ、絶対にな。」
「えっ?駄目なんですか?」
「泡立っちまうだろうが!アルコール主体のカクテルと違い不純物で構成されているようなコーヒーは泡立つとなかなか消えない。涼しげな見た目が台無しになるんだ。」
「私はマスターがシェイカーを振れないんだとばっかり思っていました。ちゃんと理由があるんですね・・・。」
「なんだその疑いの目は。何年この仕事をしてきていると思っているんだ。先進めるぞ。」
「何かあわててないですか?」
「いいや。では質問だ。5杯分のアイスコーヒー原液を一遍に冷やすにはどうしたらいい?」
「えっ?シェイカーの大っきいのを使う・・・じゃないですよね。シェイカーは混ぜるために使っているだけだから・・・!わかった!サーバーに氷を入れてやればいいんだ。」
「ほい、正解だ。だが本来の使い方からするとこいつを使うのでも構わないぞ。」
「いつも水を入れてバースプンが挿してある容器?」
「ああ、ミキシンググラスという。カクテルでは色鮮やかに作らなければならないときはステアというがこちらで混ぜ、ストレーナーで固形物を取り除きながらグラスに注ぐ。シェイカーだとどうしても濁りが出るからな。」
「ストレーナー?どれですか?」
「ねえよ。俺はバースプンで氷を押さえて注げるからここでは必要ないんだ。」
「そうやって子供みたいに自慢するんですね。」
「次だ、おいていくぞ。」
「待ってください。たまにグラスに一杯にクラッシュアイスを詰めたアイスコーヒーを作ることがありますよね。いつも知らないうちにできてるんで気にしてなかったんですが、ここにはアイスクラッシャーが見当たらないんですけど。」
「ああ、必要ないから置いてない。」
「???」
「クラッシュアイスは俺のサービスであって、本来のレシピにはそれを使う商品はない。だから必要がないので器具として置いてないわけだ。」
「じゃあ・・・?」
「どうやって・・・か?俺はキューブアイスをバースプンの背で割っているが、教えて欲しいのか?」
「はいはい、マスターが何でもできることはわかりました。それより例外に当たるアレンジアイスコーヒーってなんでしたっけ?」
「アイスコーヒー・スムージーに代表されるブレンダーを使うコーヒーだな。」
「ブレンダー?混ぜ合わせ器?なんです、それは?」
「普通に言えばミキサーだ。」
「なあんだ、ミックスジュースを作るみたいにアイスコーヒーと氷をいれて混ぜるんですね。じゃあ、クラッシュアイスも作れそうですね。」
「中の回転刃やモーターがへたらないようにしてくれよ。氷を入れるだけでかなり負荷がかかっているんだからな。これが故障するとガムシロも作れなくなっちまうからな。それにこいつでクラッシュアイスなんぞを作ったらうるさいし無駄が多いぞ。」
「くどくど言わなくってもわかりました。余計なことはするなって事ですね。」
「そこまでは言ってないが・・・。自分の勉強のために試す分には構わんぞ。疑問は解消するに限る。くれぐれも自分ちのミキサーではやるな。業務用のものとでは性能が違いすぎる。」
「ご忠告ありがとうございます。気をつけて試してみます。」
「ちょっと長くなったな、今回はこのぐらいにしておこう。」
「私としてはまだまだ聞き足りない感じがするんですが・・・?」
「後は応用で何とかなる。色々試してみることだ。」
「そうそう、『メキシコ風ホットカフェ』みたいなグラデーションってどうすればいいんですか?」
「ああ、それか。比重の重いものから順に静かに注いでいけば層がきちんとできる。グラデーションをきれいに出したかったら間の分も別に作っておくんだ。わかったか?」
「比重の違いなんてわからないですよ〜!」
「試してみればいいじゃないか、混ぜ物の多いもの・・・そうだな、チョコシロなんかが当てはあるが、これらの比重は重くなる。反対にスピリッツ(蒸留酒)は不純物がなくアルコールが大半なので軽くなるのが通常だ。後は経験と勘が頼りだな。グラデーションが映えるものって多くないから作って覚えちまえばいいぞ。」
「なるほど、魅せる必要のないところで頑張らなくっても大丈夫って事ですね。」
「そう単純に言い切ってしまうのにも抵抗はあるがな。」

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2008年07月06日

◆応用編 7.アレンジコーヒー HOT篇

毎度お越し頂きありがとうございます。応用編第7回をお届けします。
番外編に戻ったと思ったらまた応用編です、すみません。
今回はホットのアレンジコーヒーの基本を説明しながら、器具を紹介していきます。

基礎・応用編でやり残していることに気づいてしまうと「ああ、書いとかなきゃ・・・」と書き始めてしまうので収拾がつきません。お付き合いいただいている皆様には本当に申し訳なく思っております。
申し訳ないので「まとめ」では紹介した器具の写真を載せておきました。あわせてご覧ください。

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「おはようございます。あれ?今日は器具が色々ありますね。何を始めるんですか?」
「おう、今日は早いな。今までストレートの淹れ方を中心に説明してきたが、他にも必要なことがあるのを思い出したんでな。」
「このあいだアイスコーヒーもやりましたよね?それなら、次はこの器具の多さからするとアレンジコーヒーかしら?」
「さすがだな、だてに3年近くも店にいるんじゃないな。」
「研修会では取り上げる気はないのかと思ってました。特に定まったものでもないですし、あちこち調べればレシピや分量は見つかりますもんね。」
「そうだな、俺だって新商品を出す前は、あれこれ文献を当たったりネットで調べたりするんだ。」
「じゃあどうして…?」
「いくつか、基本的な手順ぐらいは紹介しておいた方が、見てくれている人たちが試してみる気になるんじゃないかと思って、講義をすることにしたんだ。」
「あら、お客様思いだこと。でも、『基本的な手順』って私もちゃんと聞いておきたいですよね。」
「お前にはしっかり叩き込んでるはずだがな。よく思い出してみろ。」
「私が知っていることでいいんですか?えっと・・・温かいアレンジコーヒーのベースは一部を除いてフレンチローストを使うんでしたよね。1杯取りの場合は甘味料やミルクはカップに入れてその上から抽出します。2杯以上の場合でも同様に抽出したコーヒー液をカップに分ける時に個々のカップに入れて溶かし込みます。」
「大丈夫だ、間違ってない。トッピングする香料・リキュール・乳製品はどうする?」
「提供の直前に入れます。香りが飛んでしまったり、乳製品が熱で変質してしまうことを避けるためです。」
「満点の解答だな。問題ない。じゃあ、これで今日は終了だ。」
「待ってください、これだけじゃ手抜きって言われますよ。せめて器具の紹介だけでもしておいた方がいいんじゃないですか?」
「ああ、そんなもんかな?だが、ホットのアレンジコーヒーでは使う器具がそれほどないぞ。」
「いいんですよ。確かに使う場合は専用の器具ばっかりですが、一般の方が使用できるものだけでもきちんと使い方を説明すれば皆さんのためになるんじゃないですか?」
「喫茶店の器具ってあまり一般では使わんと思うぞ。好きな人が必要なものを解ったうえで購入して使うもんだと思うんだが・・・。」
「購入する目安にもなるんじゃないですか?」
「そういう面もあるか・・・。じゃあテーマを区切って紹介するか。今回は量ることにこだわって器具を紹介してみよう。」
「使うのって大体カクテルバーのカウンターツールと同じですよね。」
「ああ、カクテルのレシピは配合が細かく決められているので、量る器具が細かく揃っているから流用しやすいんだ。しかもステンレス製で洗いやすく傷つきにくい。家でカクテルなんかを作ったりする奴なら、もっている可能性は充分にある。」
「代表的なものがシェーカーですね。」
「ホットアレンジでは使わない代表格だな。しかもこいつで計量はしない。」
「ブスッ・・・。」
「代表的な計量器具といえば計量スプン。大匙〜小匙まで簡単に計量できる。これは一般に固形物の顆粒や粉末を量るのに使用する。いわゆる砂糖類などだな。」
「これと次で出てくる計量カップぐらいは家庭にもありますね。」
「そうだな。次は計量カップ。これは液体でも固形物でもオールマイティーに量の多いものを量る際に使用する。が、単位が大きくなるので仕込み時にしか使わないな。」
「私はカフェオレのミルクを量る時に使います。でも仕込みの時ってどんな風に使うんですか?」
「コーヒーゼリーに加える砂糖を量ったり、ガムシロを作る際にも使うぞ。」
「どっちも私はまだ教えてもらっていない仕事ですね。今度しっかり教えていただくことにします。」
「いい心がけだ。次はバースプン。これは液体というより粘体、蜂蜜やらチョコシロを量る。まあそれだけじゃないが・・・。」
「マスターは基本的に全てこれで済まそうとしますよね。計量から掻き混ぜ、味見まで・・・。」
「量れる量さえ解っていればいいんだよ。ただしそれだけじゃない。生クリームなどを静かに表面に浮かべる際にも必ず使う。」
「私はまだうまくできませんよ〜だ。あとはミルクピッチャーで量ったりしますね。主にアルコール関連のときだったと思います。」
「そうだな、アルコール類を入れすぎると珈琲じゃなくなっちまうからきっちり量る。最後はこれ、名前はわかるか?」
「鼓型で両方が少量の計量カップになっているこれですよね・・・正式にはなんていうんですか?」
「スタンダードメジャーカップという。これにはサイズがあってはかれる量もそれぞれ違う。ちなみにこいつはMサイズ。45ccと30ccが計量できる。」
「ソーダ水の原液や、オレンジジュースの時に使用していますね。でもこれはホットドリンクでは使いませんよね。」
「確かにそうだ。加熱したものを量って加えようとしても熱くて持っていられない。俺も勢いあまっちまったようだな。まあいいか、次回のアイス篇では『冷やす』ことを中心に器具の紹介をすればいいな。」
「自分のミスは適当に流しますね。こんなにいろいろ計量器具を使い分けるのは何故ですか?」
「基本は1回で量るためだ。2度3度と回数が増えれば誤差が生じる。これは豆を計量した時にも教えたはずだ。味がぶれるということもあるが、もうひとつお店として重要な要素がある。」
「えっ?味以外でですか?」
「粗利率っていう数字がついて回るんだ。提供価格を決める際に1杯の原価を元にする。この原価に対し誤差が出ることになる。仕入れ価格の高いアルコールやチョコレートを入れすぎれば計算上の原価と大きな誤差が生じる。下手をするとお前が珈琲を淹れれば淹れるほど赤字になるようなことにもなりかねん。ひいてはお前らの給料が払えなくなるって流れだな。」
「ひっど〜い。私はそんないい加減にしてませんよ。この点ではマスターのほうがいい加減じゃないですか。あの大盛シリーズはなんですか?」
「あれはネタだ。気にしなくていい。とまあ、こんな具合に仕入れたものをそのまま売るだけの商売とは違い、個別商品の粗利が正確にその場でわかるものではないし、既に数字が出ていても計算上のと但し書きが入るべきものなんだ。場所・人手・環境などにかかる費用も馬鹿にならない。実際には1杯提供して何円の純利にしかならないものもある。だから計量ってのはおろそかにしてはいけないんだ。」
「ああっ、マスター、逃げながらまとめに入ってる。」
「それじゃあ次回の抽出研修会はアレンジコーヒー ICE篇をお届けいたします。」
「えっ、勝手に予告して終わってる・・・。じゃあ皆様また次回もお楽しみに!」

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2008年05月23日

◆番外編 4.ネル布 抽出篇

お待たせしました、珈琲抽出研修会です。
前回より引き続きネル・ドリップを見ていきます。

今回は抽出を行います。しかし、マスターはネル・ドリップの経験はほとんどなく、この講習のために試行錯誤を繰り返してきたようです。前回の台詞では1度だけなどと言ってはいますが、別のネル布でかなりの回数を練習したようです。その成果はいかがなものでしょう。
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「充分休憩したな。始めるぞ。」
「はい、お湯も沸きました。豆はどれを使いましょう。」
「いつものレギュラーブレンドでいいぞ。但しいつもより粗めに挽いておくように。」
「えっ?どうして粗めに挽くんですか?」
「抽出の際、お湯との接触時間が長くなりがちなんだ。いやなというか不味くなる成分の浸出を遅らせるためには少々粗めに挽いたほうが都合がいい。」
「なるほど、ペーパードリップでも実験しましたね。」
「これまでの知識を逐次導入すれば、見知らぬ器具でも調整できるって事だ。わかったな。」
「はい、今回はペーパーと同じ透過式ですもんね。手順はあまり変わらないわけですね。」
「一応はわかっているようだな。では、抽出をしてみよう。まずは豆の量だ。あれこれ資料を紐解いてみたがこれが正解という量は出てこない。」
「ええっ?ではどうしましょう。」
「共通して書かれていたのは、『必要分量+1杯分の粉』だ。そこで考えたんだが、いつものように淹れるためには2杯抽出したいなら3杯分の豆の量でやってみようってことだ。」
「なるほど〜、マスターらしい発想ですね。余計なことを考えず、いつもどおりにってところですか。」
「感心してないでさっさと量れ。本来の手順は順序を入れ替えたほうが作業の手間が省けるんだが、1工程に説明しなきゃならんことが多いので説明が長くなるものを先にしておくぞ。次はお湯だ。」
「量った粉はどうしましょう。」
「いったんペーパーフィルターにおいておけ。沸かしたお湯をサーバーに移して、抽出用のポットにそのまま入れる。」
「ほえ?せっかく沸かしたお湯の温度が下がっちゃいますよ。」
「これには諸説あるんだが・・・。参考にしたものにはどれも抽出温度は75〜85度となっているんでそれに合わせてみるんだ。次はネル布。きれいな布巾で包み込んで絞る。粉に布の中の余計な水分を与えないためだそうだ。」
「へぇ、いちいち面倒・・・。」
「絞ったところに粉を移し、サーバーの上に持っていったら1投目の注湯開始。」
「粉全体にお湯を行き渡らせればいいんですね。下から垂れても問題なし?」
「ああ、その辺はペーパーの感覚で構わんぞ。蒸らしは少し長めに取る方がいいようだ。萎み始めても少し待て。」
「はい、では2投目いれます。マスター、湯温が心配なので火にかけます。」
「そうだな。それと2投目以降、お湯は多少勢いを増してやらなければ底まで届かないからな。ドリッパーのように硬い壁があるわけじゃないんで対流が生じづらいんだろうな。」
「わかりました、気持ち多めに湯を差していきます。2杯分抽出したら袋をシンクに移していいですね。」
「シンクに空き缶を置いておいたからその中に入れておけばいいぞ。」
「できました。でも、これでは平行抽出は無理ですね。できればお茶の漉し網のようにサーバーの上に置けると楽なんですけど。」
「そういう意味では忙しくあれこれ細かく淹れなきゃならんうちの店には不向きだな。」
「このわっかをホールドできる器具があれば並べて淹れられるかもしれませんね。」
「それだけのネル布の管理もしなきゃならんわけだ。お前やってみる気あるか?」
「ぶるぶる・・・遠慮しておきます。カップに注ぎ分けました。味見していいですか?」
「ああ、飲んでみろ。」
「注ぎ分けた時点で既に飲める温度になってますね。私は熱めのが好きですから、いきなりこれが出てきたら、冷めたものを出されたのかと勘違いしそうですね。」
「低い温度で抽出すると苦みが減り、香りが増えるはずだ。味はどうだ?」
「そうですね、確かに苦味は少ないですね。香りのたち方はあまり変わらないと思います。でも、最初に口に含んだときの珈琲の力強さは随分違いますね。ストレートで言うと豆のランクが随分違うように感じます。」
「手間を掛けるだけの味になることは良くわかったな。紙とは違い透過する成分が多いのだろうと思う。それでこれほど骨太の味になるんだろう。しかし、たまに飲みたいからといってネル布を常に管理する訳にもいかない所がみそだな。その布はおまえにやる。好きにしろ。」
「あっ、ずるい。私に管理させようってつもりね。私だって嫌よ。」
「あいつを追い返したのは失敗だったかな・・・。業務命令で管理を任せればよかった・・・。」
「それはそれでまずいんじゃ・・・。そんなに自分でやりたくないんですか?ペーパー・ドリップを選んで正解でしたね、マスター。」

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2008年05月16日

◆番外編 3.ネル布 準備篇

いらっしゃいませ。珈琲抽出研修会にようこそ。
今回はネル布での抽出のための準備を見ていきます。1回で終わらせるつもりでしたが、ボリュームが多すぎて抽出まで進められませんでした。

私の若い頃の喫茶店といえばネル布で大量の珈琲液を抽出しておき、注文に応じて小なべで温め直して提供するのが一般的でした。そのため布(袋)自体も大きく、3L用のコーヒーポットの口に輪ゴムで留めて使用していました。どこでも同じように淹れていたところを見ると、開業の際に豆屋の研修で覚えてきたものでしょう。今思うとかなり豪快な抽出法です。
こんな方法を研修会で詳しく紹介してもしょうがないでしょうからマスターは新たに道具を用意しているようです・・・。

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「おはようございます、マスター!!」
「おはようございます、見学に来ました。」
「おうっ!だが、できれば見学はやめたほうがいいな。」
「ええっ?だめですか?」
「ああ、そんな暇があるなら都心の有名な店に行ってうちのとの違いを自分の舌で確認して来い。珈琲の味の基礎ができていないんだから少し鍛えてからだ。特に今日はペーパードリップに一番近いネル布のドリップだ。変に癖がついても困る。」
「そんなもんですか。残念ね、お休みなんだから出掛けていらっしゃい。」
「今からでも3〜4軒をじっくり廻れるだろ。君の成長に期待してるぞ。」
「ちえっ、しょうがないな。それじゃあ行って来ます。」
「さて、今日はネル布だ。前々回に少しほのめかしてたから予習はしてあるんだろうな。」
「えへ、何にも。まっさらな方がいいかと思って・・・。あ、握りこぶしは止めて。正直に言いますよぉ、サボってました。ゴールデンウイークで浮かれててすっかり忘れてました。済みません。」
「まあいいか。番外編になってからは直接営業に関わる物ではなくなっているからな。知識として知っておいて、どのように自分の抽出法に生かせるかってことだけだ。怒るものでもない。」
「は〜い、気合入れて覚えていきます。」
「さてとこれが新品のネル布だ。一応1〜3人分を手に入れてみた。」
「片面が起毛しているんですけれど、どちらが内側ですか?」
「わからん。調べてみたがどちらもが正しいと主張している。縫い目などから推察すると起毛していないほうを内側にしたほうが使いやすそうだ。後で洗浄することを考えると起毛したほうに粉が引っかかると面倒だからな。」
「あはっ、適当〜。マスターでも解らないことはあるんですね。」
「道具だからな、使いながら覚えていけばいいだろう。それよりお前、化粧落として来い。ネル布には大敵だそうだ、香りが。吸着してしまうんだとよ。」
「スッピンになれと?」
「だから理由を付けてあいつを帰したんだ。普段と似ても似つかない顔を見られるのはいやだろう?」
「そんな気遣いはいりませんよ〜だ。それだったらマスターだって・・・、あ、そうか。何度もお店で泣いて化粧を落としたまま送ってもらったことがあったわね。じゃあしょうがないか。ちょっと待っててくださいね。」

「お待たせしました。もともと匂いの少ない化粧品ですし、香水の類は付けてないんで大丈夫です。」
「それじゃあ進めよう。ネル布は購入したままでは使えない。はずせるタイプのものは布だけにして、外れないものはわっかごと鍋で煮込む。」
「あれっ?どうして綺麗ですよ。」
「ネル布ってのはもっと柔らかいものだ。表面に糊がついているのさ。煮込んでそれを落とすんだ。」
「なるほど。でも、もう1枚ある布は随分色が違いますね。今回の講座のために練習して使い込んだんですね。」
「いや、1度だけだ。ドリップオンの講習になっちまった時から準備してたんで、『出がらしコーヒー』に漬けおいたり、2〜3日に1度の『煮出し洗い』をしていたらこうなったんだ。」
「えっ?使ってないのにそんな手間を掛けていたんですか?面倒ですね。」
「ああ、これが俺がネルドリップを選択しなかった理由さ。何枚ものネル布を毎日洗い、煮出し、管理するなんて俺には無理だ。毎回捨ててしまえるペーパーの方が俺には似合っている。」
「エコじゃあないわね。まあマスターがそんなことに気を使うとも思わないけど。そのおかげで私も助かるわけだし、いいことにしましょう。」
「どうしても洗剤で洗うことができない分雑菌が繁殖しやすくなる。脂肪分も吸着するしな。手入れを怠ると直ぐに異臭がし始めるぞ。その点ペーパードリップは簡単だ。ドリッパーだって熱湯消毒してしまえる。色素がこびりついてきたら漂白剤で煮込めばいい。後の洗浄に気を付けさえすればいいからな。」
「不精ですからね、マスターは。でもこの仕込んだネル布、湿ってますよ。」
「乾燥させちゃ駄目なんだ。これも面倒だな、というより冷蔵庫の中で邪魔になる。この2ヶ月本当に面倒だった。あの時そのまま知らん顔して『ネル布』で進めちまえば良かったと何度思ったことか。」
「あはは、かなり懲りてますね。そんな几帳面なことをチマチマとしているマスターをちゃんと見ておけばよかった。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月13日

◆応用編 6.アイスコーヒー

毎度お越し頂きありがとうございます。
応用編は「まとめ」で終了し、番外編が既に始まっているのにまた「応用編」と思われていることと思います。申し訳ありません、「基礎編」・「応用編」を通してアイスコーヒーを考慮に入れるのを忘れていました。
多少触れることはあってもきちんとした説明はしていなかったと思いますので、今回はしっかりやっていきたいと思います。

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「マスター、今日はアイスですって?暖かくなってきて丁度良かったですね。」
「ああ、コートなんぞ着ていると汗がにじんでくるな。電車の中は蒸し熱くなってきてるだろう?」
「アイスコーヒーですけれど、以前に淹れて頂いた時、あまり詳しく説明がありませんでしたよね。」
「ああ、あの時は味見のためだけだったからな。その後も寒い時期だったんでアイスを淹れる機会がないままだったな。それでは今日1回で完璧に覚えてもらおう。」
「ええっ?今回だけで覚えろって無理ですよぉ〜。でも、自宅練習するにしても氷が問題になりますね。そうかぁ〜、隠れて自主トレは無理なんだ。わかりました、気合入れて覚えます。」
「やる気は出たようだな。前に一度応用編の3で淹れて見せたことがあったな。それを思い出して淹れてみろ。」
「そうでしたっけ・・・。えっと、豆の量は変わらないはずですよね。ああっ、これじゃない!フレンチローストね。メッシュをずっと細かくしてっと、これでいいわね。それで・・・あの時マスターはガラスのメジャーカップを使っていたわ。」
「よく覚えていたな。うちの場合は濃く落として、氷で一気に冷やすんだ。その際に氷が溶けた分でちょうどよくなるから、氷を溶かす分を見込んで抽出する。1杯分約50ccでいいんだ。」
「では、2杯分で100ccを滴下すればいいんですね。じゃあやってみます。」
「じっくり落とせ。でないとコクも何にもない薄っぺらなコーヒー液になっちまうからな。」
「湯面をあまり上げないで・・・と、こんなもんですか?」
「充分だ。一応50ccづつに分けておけ。片方には加糖するからな。できたらアイスグラスに氷をいっぱいに入れて1度水を通せ。」
「はい、でもなんで氷を洗うんですか?それだけでも溶けちゃいますよ?」
「ストッカーは開け閉めするだろう?その間に埃やごみだって入らないとは限らない。グラスに入れて1度水を通せばそんなものは洗い流せる。追加する分も洗っておけよ。」
「なるほど、カウンターの中は珈琲豆の微粉なんかがいっぱい飛び交ってますよね。グラスの用意ができたら注いでいいんですか?」
「バースプンでかき混ぜながらな。あまりかき混ぜすぎると薄まっちまうぞ。できたらグラスの汗をふき取って完成だ。とりあえず味見をしよう。その間に加糖のやつも作っておけ。グラニュー糖を入れて溶かしてから氷の上から注げばいいからな。」
「はい・・・どうですか?出来のほうは・・・。」
「ん?まだ薄い感じがあるな。冷やすためにかき混ぜすぎなんだろうが、豆の量も少し足りないはずだ。」
「えっ?通常通りではいけなかったんですか?」
「細かく挽くとな、ミル内に残る分が増えるんだ。しかし、ミルを叩いて粉を出すわけにはいかないよな。だから最初から多めに計って挽くようにしたほうがいい。」
「そっか〜、フレンチローストだから軽い上に細かく挽いていてるんで微粉と同じように静電気に捕まっちゃうんですね。あと、この店ではってことでしたが、他の入れ方もあるんですか?」
「ああ、昔から喫茶店では作り置きをして冷蔵庫に入れているな。また、スタンドタイプの系列店でも同様だ。一気に2〜30杯分を淹れて、冷ましてから冷蔵庫に保管する。この方法だと氷の使用量は半分で済むし、提供するのに手間が要らない。」
「そのほうが楽じゃないですか。問題は味?」
「当たり前だ。専門店と言いながら、誰でも提供できる味にしてどうする。挽きたて・淹れたてが一番うまいんだ。作り置いて酸化した珈琲は絶対に出さんぞ。簡単に安定した味が欲しいんならコーヒーマシンを1台入れれば済むことだ。なんならお前の変わりに導入しようか?」
「や、やぶへび・・・?すみません、きちんと修行しますからクビは勘弁してください。」
「おお、それはよかった。機械の調節を毎日続けることになるかとちょっとあせったよ。そんなことに通じるより自分の感覚を磨いたほうがずっと役に立つからな。」
「マスター、ひょっとして遊び相手が欲しいんですか?」
「まあな。仕事は楽しくやらなきゃ続かないぞ。」
「楽しんでるのはマスターだけでしょ。私は下手なこと言ってマスターの機嫌を損ねて仕事を失うことになったらって冷や冷やしてるんですから。」
「今お前をクビにしたら、四方八方から非難が来て大変なことになる。俺の仕事もきつくなるしな。安心していいぞ、オーナーはお前の味方だ。俺がいくら言おうがそれはないよ。俺の方が危ないような気がする今日この頃だ。」
「まさか〜。これ以上からかわないでください。アイスコーヒーの抽出、もう少し練習しますね。ちゃんと味見してくださいよ。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(10) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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