2008年03月25日

◆番外編 2.ドリップオン

お待たせしました。番外編に入って更新間隔がどんどん広まってしまっていますね、申し訳ございません。
実際、普段使用しない器具って、頭では構造・特性はわかっていても・・・という感じでネタにするまで踏み込みにくいようです。
そこで今回は、二人にプレゼントを贈っておきました。私が進物で頂いたものになります。うまく活用してくれるといいんですが・・・。

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「何だこれは〜?」
「あれっ?マスター知らないんですか?ドリップオン・タイプの珈琲ですよ。インスタントより高級感が出せるし、使用後に器具を洗うことなく済ませられるんで、安いこともあってかなり人気があるんです。」
「いやいや、すっごく説明的な科白はありがたいんだが大丈夫だ、俺だって知っている。そうじゃなく、俺はこれがここにある理由がわからないと言っているんだ。」
「それは・・・そうですね、珈琲専門店の講習会にはちょっと似つかわしくないですね。私、この珈琲嫌いなんです。苦味ばっかりで味がスカスカして。あっ、待ってください。メモがありますよ。」
「オーナーからか、なんだって?」
「『今回はこれで何とかしてみてください。面白い講習会になると思いますよ』ですって。どうします?」
「わかった、これをネタにしろって事か。あの野郎、ハードル上げやがって!『ネル布』を準備していたんだが、これはもう少し講習内容を練ろう。パックはかなりの数があるんだな。」
「はい、随分ありますよ。余ったら頂いていいですか?」
「お前、さっき嫌いだって言わなかったか?」
「美味しい淹れ方がわかればラッキー・・・、なんて。」
「まあいいさ。それじゃあ始めるか。」
「はい!それじゃあ行きますよ、『マスターと私のドキドキ・・・』」
「何だそりゃ?」
「一度ぐらいタイトル・コールをやってみたかっただけですよ〜だ。」
「もういい・・・、解ったから・・・。用意しろ。とにかく普通に淹れるとどうなるのか確認する。それとサーバの上に割り箸を二本準備。」
「へっ?サーバ?何するんですか?」
「普通にカップにセットすると最後にはこの袋が抽出液に浸るだろう。浸透圧の関係で逆流もありえるんでな、それを防ぐために高さのあるサーバで抽出しようって事だ。」
「拘りますね。」
「オーナーの指示はそういう意味と受け取ったんだがな。」
「マスターもオーナーも物好きですね。」
「暇だったら20個ほど開封して、中の粉を空き容器に移しておけ。あ、空けた抽出器は捨てるなよ。」
「何するんですか?」
「今回は途中で質問はなし。2度手間になるからな。実験のたびに説明してやる。」
「はい、解りました。あ、カップの分溢れますよ。」
「こうなるから説明を交えたくないんだ。よし、飲み比べよう。」
「しかし不味いですね・・・。味も素っ気もないです。微かに香りはありますが苦くて渋いだけでどちらもあまり差はないようですね。」
「豆の量が足らないな、少量で珈琲液の色を濃くするために焙煎度が高いものが使用されている。それに包装されてからの期間が随分あったな、こんなに粉が膨らまないとはひどすぎる。」
「それでも賞味期限にはまだまだ余裕がありますよ。」
「今日はこれを飲み続けるのか・・・拷問だな。どちらも大差ないからカップだけでいいな。次に移ろう。次のカップ2つ、それから集めた粉を準備。」
「2つ?私の分は必要ないですよ・・・。」
「馬鹿もん!この店で使用する抽出方法は大きく分けて二つあっただろう。どちらがより美味しく淹れられるかを試してみるんだ。」
「すいません・・・。準備できました。粉の量はどうしましょう。」
「その前に、この紙の上に一杯分の粉を広げてみろ。メッシュのチェックも欠かせないぞ。」
「はい。あれっ、マスター、全然均一じゃないですね。むしろ大から小まで取り揃えているみたい。」
「やっぱりな、そうじゃないかと思っていたんだ。どんな大きさのカップで使用されるか判らないのにパッケージには目安しか書いてない。大きなカップで抽出したらかなり薄くなってしまいそうだがそんな様子もない。」
「そっか〜、抽出に必要な時間が早いものから時間がかかるものまで入れておけば多くても少なくても濃さにそれほど影響が出ないということですね。」
「多分それが正解だろう。抽出にあまり時間をかけない俺の淹れ方でもエグ味が出ていたのはそのせいだ。」
「なるほど、一定以上美味しく淹れられなくする技術ですね。破砕粉だけでも篩いましょうか?」
「その方が美味しく淹れられそうだが今回は止めておこう。じゃあ抽出に戻るぞ。」
「はい、粉の量は店の流儀でいいですね。」
「そうだ、比較検証をするにはそれでなければな。しかし膨らまない。相当時間が経ってるな。」
「あまりおいしそうには見えませんね。アメリカンタイプで抽出しても真っ黒ですよ。」
「ひどいな、色もそうだが味も凄い。苦味だけで舌が痺れそうだ。」
「バランスが悪いですね。ペーパーフィルターだからでしょうか?」
「いや、抽出速度と粉の量だな。あんな小さなペーパーパックで抽出するんだ、時間がかかるだろう。それにあわせて調整してあるんだろうな。」
「ひょっとして粉を出したパックをとっておいたのは、うちの豆をあれで入れてみる気なんですか?」
「ああ、公平を期すためにな。ミディアムブレンドの粉を最初に入っていたのと同量入れといてくれ。2つな。」
「ううう・・・、まだ飲むんですか?この講習会の最初の頃よりひどい目にあっている気がします。」
「文句言うな、オープン前のときもこんなだったんだ。あの時は相手がオーナーだったが・・・。たまには自分の舌を鍛えるために、こんな実験もいいかもな。どうかな、味は?」
「さすがに飲めるようにはなっていますが、普通の抽出のほうは普段出ていないエグ味がありますね。アメリカンタイプのほうは逆に苦味が足りません。」
「やっぱりそうなるか・・・。これ以上は改善しづらいな。もう終わりにしよう。」
「やった〜、解放された〜。」
「残ったの持って帰るか?」
「止めときます。キャンプ用にスカウト君たちにプレゼントしたらどうですか?」
「その方が精神衛生上いいようだな。わかった、今度の会議のときにでも渡してやることにするよ。」
「マスタ〜、美味しい珈琲が一杯飲みたい。」
「俺もだ、すぐに淹れてやるからな。」

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2008年02月16日

◆番外編 1.サイフォン

珈琲抽出研修会は、毎度お待たせしてしまい申し訳ありません。
今回より番外編として、様々な器具の抽出法を見ていきたいと思います。

さて今回はサイフォンによる抽出を見ていきましょう。
様々な珈琲抽出器具の中で、ドリッパーに次いでご家庭にお持ちになっている確率が高い器具になると思います。
見た目にも雰囲気のある器具ですね。インテリアの一部になっていることも多いでしょうが、使ってこその器具です。ドリッパーとの比較をしてみてもいいんではないでしょうか。

しかし、マスターは慣れない器具に戸惑っているようですね・・・。
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「むっ・・・、ダメだ。何がいけないんだ・・・?いい加減嫌になってきたぞ。」
「マスター、何をしているんですか?あらっ、サイフォン!懐かしいわ。」
「おお、やっと来たのか。懐かしいって、お前・・・使ったことあるのか?」
「普通自分で淹れようって考える人が、最初に気になるのがサイフォンでしょ?比べるとペーパードリップって高級感がないじゃないですか。」
「ふん、一理あるな・・・。」
「器具がよければ美味しく淹れられるんじゃないかって、つい考えちゃうんですよね。それで買っては見るけど、手入れが意外と面倒ですぐに手放すか、押入れ行き。まあよくある話ですね。」
「なるほど、お前が最初珈琲の知識と味・香りの感覚がバラバラだったのはそういうわけか。まだ持ってるのか?」
「いいえ、お友達にあげちゃいました。でもマスター、何をぶつぶつ言ってみえたんですか?」
「・・・思った味が出ない!それに腹が立っていたんだ。」
「え〜っ?マスターでもそうなんですか?」
「ああ、微調整ができないんだ。というよりどこで調節していいかが皆目わからん。これからサイフォンの説明をしなきゃならんのに、困ったぞ。」
「講習会、延期ですか・・・?」
「原理はわかっているし、制限事項もわかる。が、それなら調整方法はどうすればいいかを考え始めるとお手上げなんだ。」
「えっと・・・、おっしゃっているのは『器具の扱い方はわかっている。豆のメッシュの最小限界もわかる』ってことですね。その上でできなさそうなのは・・・お湯との接触時間を短くしたいんですか?」
「最近どうしたんだ?そんなに出来がいいと、この企画の当初の目的から外れてしまうんだが・・・。まあなんにせよ褒めてやらんといかんな。よくわかったな、どうしてそう思った?」
「自分で条件を変えて淹れることを想像してみたんです。メッシュを細かくすると濾紙代わりのフィルターを通過して落ちてしまいそうですよね。お湯の量ならいくらでも変えられそうです。接触時間を長くしようと思えばお湯が上がってから放っておけば済みます。だから逆に短くしようと考えたのかなって。構造から考えて絞らないって訳にはいかないでしょうから。」
「お前・・・大丈夫か?ふん、熱は無いようだな。しかしいつもの駄目っぷりはどこへいったんだ?いや、お前の言うことが間違ってるって訳じゃないんだよ。その点は心配するな。ただ、なぁ・・・。」
「私は変身したんです。今までいくらもいろんなチャンスがあったはずなのに生かすことができなかった。だから、今回のチャンスは絶対に生かすんだって心に決めたんです。ところでマスター、お湯の温度は変えてみました?」
「ああ、そうか。そこでの調整もアリか。う〜ん、やっぱり調子が狂うなぁ。」
「・・・オーナー、ありがとう。」
「ん?なに小声でいってるんだ?その握った右手のこぶしはなんだ?」
「べ、別に・・・、な・・・なんでもないです。本当ですって。」
「殴るってわけじゃないんだったらいいんだ、多分・・・。」
「あっ、思い出したっ!ネットで見たときにフラスコを濡れ雑巾で冷やしてましたよ・・・?あれっ?えっと〜・・・。うふっ!」
「笑ってごまかしてもダメだぞ。オーナーの野郎、入れ知恵したな。今日の講習会のテーマがサイフォンって事はオーナーと俺しか知らないはずなんだからな。おかしいと思ったんだ。あれほど成績が悪かったお前が、サイフォンになった途端に俺以上の知識が披露できるはずがない。」
「あの日、マスターが戻られるちょっと前にオーナーがお店にみえて、テーマを教えてくださったんです。それで一昨日のお休みに図書館に行ったりネットで動画を見たりして詰め込んできたんです。」
「まあ、いいって事にしようか?オーナーは無理だって言ってたんだが、先日の午後一杯きちんと店を操れたんでお前のことを見直したんだろう。お前、オーナーに気に入ってもらえたんだよ。」
「えっ?ほんと?ちょっとぐらい時給が上がるといいなぁ。今月常連さんのためにチョコ一杯買っちゃって大変なんですよ。」
「馬鹿だなぁ、領収書出せば営業経費にしてやるぞ。どうせ義理チョコなんだろ。」
「なんとなくすっきりしない言われ方ですけど・・・ありがたくお代頂きます。じゃあ明日レシート持ってきますね。」
「時給の件は考えさせてくれ。なるべくお前が喜ぶ結果にはしてやるつもりだから。来月分には反映されるようオーナーと検討する。」
「約束ですからね。それと新人君もね!」
「お前のことがすっきりしないから決めかねていたんだ。オーナーも腹は決まっただろうからすぐ決まるだろう。」
「いい子見つけてくださいよ。私の彼氏候補なんですから・・・なんてね。」
「暢気にしていられるのも今のうちだけだぞ。音をあげても知らんからな。」


 

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2008年01月31日

◆応用編 5.まとめ

いつもご愛読ありがとうございます。

応用編も最後のまとめとなりました。
しかしながら、応用編は各章が強く関連し合っているものなので、まとめと言う形はなかなかと取りにくいものがあります。
豆の条件によって各章で説明された微調整を行うことにより一層の美味を手に入れることができます。そのためにはその時々に応じてどう調整したらよいのかを自分の目や鼻・耳・舌を使って判断することが必要になります。これは実践の中でしか身に付けられない感覚ですね。

いつもの珈琲をいつもどおり淹れるだけじゃなく、たまには大胆に抽出方法を変えて淹れてみると、別のふくよかな味を発見できるきっかけになるかもしれません。
お試しあれ!

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「マスタ〜?今日は何をしましょう?」
「全く・・・冒頭でオーナーの奴が今回説明しようと思っていたことを全部言っちまうから、何すればいいのか判んなくなっちまったじゃねえか。」
「ぷふっ、むくれてるんですか?」
「美味しい所取りはあいつの専売特許らしいな。」
「あ〜あ、マスター怒っちゃってる。これは講習会になりそうも無いわね。帰ろうかしら。」
「よし、決まった・・・?何やってんだ?せっかく準備したのになに片付けているんだ?すぐにサボろうとするんだからな。」
「何言ってんですか、マスター。私の声も聞こえないほど怒ってたくせに。こんな様子じゃ講習会なんかできそうもないんで片づけを始めたんじゃないですか。」
「勝手なことを言ってんじゃない。じゃあ始めるぞ。」
「ええ〜っ?いきなりですか?しょうがないなぁ、自分勝手なんだから・・・。」
「今日は普段はできない実践的な抽出をやってみよう。」
「ちょっ、ちょっと待ってください。今回は応用編のまとめなんですけど・・・。」
「オーナーが勝手にまとめちゃったんで、今回は俺の好きにやっていいって事と了解した。」
「うわっ、マスター開き直ってる。もう、付き合う私の身になってくださいよ〜!!」
「今回はお前の修了試験もしようって訳だ。抽出ができるってことで時給も上がるだろうな。頑張ってみる気はあるのかな?」
「えっ?お給料に反映されるんですか?一生懸命練習した甲斐がありました。」
「バ〜カ、ちゃんとできたらって話だ。オーナーに文句つけるついでに話をしてやる。」
「ついでって・・・。まあいいです、お給料には代えられません。頑張ります。」
「それでは実践的に行くぞ。4番テーブル、キリマンジャロ・モカ・マンデリンをオール1でお願いします。」
「ハイ?何で敬語?」
「ウエイターがカウンターにオーダーを通すのなら普通だろ。実践的にって言った筈だぞ。」
「わかりました。キリマンジャロ・モカ・マンデリン、オール1。えっと豆はどこだっけ・・・?ありゃ・・・これと、これと・・・よし、準備OK!」
「ちょっと待った!お湯の温度は確認したのか?俺も飲むんだ、へんなもの飲まされたらかなわんぞ。」
「済みません・・・。それじゃあ抽出します。まず、キリマンジャロっと。はいどうぞ。」
「馬鹿もん、3つ一遍に淹れんか!1テーブルのオーダーだぞ。」
「へっ、実践ってそういうことだったんだ・・・。わかりました。やり直します。3杯をほぼ同時に仕上げればいいんですね。今まで2つ同時は何回かやってきましたけど3杯は初めてですね。よっ、リズム感が問題でしょうか?あっ、キリマンジャロが・・・間に合った。」
「おい、マンデリンがカップからあふれてるぞ・・・。」
「ひえ〜っっ!お見逃しを・・・。マスタ〜・・・もう試験修了ですか?」
「いや、とりあえず味見をしよう。モカは問題ないな。マンデリンは若干うすくなっちまってるが、まあ許容範囲で収まっている。問題はキリマンジャロだ。絞っちまってなければいいが・・・ふん、何とか合格点はやれそうだ。」
「えっ?いいんですか?」
「基本的な抽出姿勢は仕上がってるよ。わざとお前の技量以上を求めてみたんだ。焦りもあるし慣れていない部分だってある。減点しようとすればいくらでもあるが、そういったことは少し練習すればこなせるようになるだろう。だからこの場面では合格とするんだ。だがな、同じカップを使ったのはいただけないぞ。ウエイターが俺なら匂いだけでわかる。が、未熟な奴だったらどうする?」
「あ、そういえば以前は私のときもカップが違ってた。そうか、カウンターの中からでもカップを指して指示することができるんですね。」
「そうだ、ホールの人間が自発的に動ける奴ばかりじゃないことも考慮に入れてなきゃならないんだ。一目でわかるのが基本だ。」
「はい、そうですね。私が最初にお店に立ったとき、何をしていいかわからず、マスターに指示されなければ動けなかったことを思い出しました。あれっ?そうするとそろそろ新人が入ってくるんですか?」
「お前のカンの良さはどこから来るんだ?いつもはボ〜っとしてるクセに。まあいいか、そろそろ話しても。募集している職種は経験者で副店長候補。いくらか応募はあったし面接も行った。だがオーナーと俺の眼鏡にかなう奴はまだ出てきてない。」
「え?と言うことはお店を任す人材って事?それってまた私は下っ端・・・。」
「そうする予定だったって事だ。まだその希望は捨ててはいないが、路線変更もやむをえないとオーナーも俺も思っている。特に店長経験者なんかは、この店の雰囲気を壊しかねないからな。苦労してここまでにした店を変えられたくはない。」
「と言うことは募集は白紙?」
「いや、あくまで副店長候補を募集する。但し経験は問わないことにした。しかしなれるかどうかはそいつ次第だ。そうすると誰かさんにもチャンスが残るしな。なあ、アドバンテージの大きな誰かさん?」
「へっ?私?そ・そ・そんな予定なんですか?」
「ああ、お前の成長を考慮に入れてなかったんだ。この半年の成長振りは俺も驚いた。オーナーに言えば喜んでくれるよ。但し残りの試験をパスできればだがな。」
「ああぁ、まだあるんですね、試験。」
「そうだな、抽出をあと何パターンかチェックした後、カップテスト・豆の知識・接客と続くが何か問題でもあるのか?今日全部やるわけじゃないがな。」
「見通しが暗くなってきました。私には荷が重過ぎますよ〜。」
「お前の得意な追試はやってやるから。ちょっと頑張ってみろ。そうでないと、またあの鼻持ちのならない奴らの面接を続けにゃならん。大きな店で働いてたからどうだってんだ。この店に合わせられなきゃ俺は一緒に働く気にはなれんよ。」
「応募者の皆さん、相当にプライドが高かったようですね。オーナー、胃に穴あけてないですか?」
「そんな心配より目の前の試験のほうが大事じゃないのか?そろそろ始めるぞ。今日中に抽出に関わる部分はやっちまうからな。」
「はいっ!頑張ります。」


 

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2008年01月07日

◆応用編 4.湯面の高さ

随分とお待たせしました。応用編の第4回をお送りします。
今回は基礎編の抽出でも少しお話した湯面の高さについて実験しましょう。
前回マスターが申し上げている通り応用編は全てが密接に関係しています。
いつもの豆を購入して普段どおり淹れたのに美味しくないと感じた時、ちょっと手を加えるだけでいつもの美味しさが取り戻せるかと思います。微調整の技ですがうまく使えばより良い珈琲ライフを過せるかと思います。

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「すいません、マスター。遅くなりました〜って、あれっ?誰もいない?講習会に遅刻なんて問答無用で一発食らわそうかしら。あら?ケトルにメモが貼ってある。なになに?きったない字で読めやしないじゃないの。・・・忘れ物?自主トレしとけって?自分が遅くなってるのにいい気なもんね。適当にやったことにしておきましょうっと。」
「遅いわね〜。女を待たせるなんて最低!!」

「もう帰ろうかしら、30分になるわよ。いい加減にして欲しいわね・・・。」
「誰がいい加減にするんだ?」
「もう、遅い!!何分待ってると思ってるの。」
「ば〜か、お前が遅刻するから悪いんだろうが。こっちが準備して待ってりゃ。」
「えっ?あっ?そ、そうでした・・・。でも30分も放って置かれるのは・・・。」
「だからメモ置いておいただろうが。ちゃんと練習しとけばあれこれと珈琲飲み比べながら待ってられるだろうって書いておいたと思うが?」
「ああ、そういうことだったんですか?私はてっきり基礎練習をきっちりやっとけって言われてるのかと・・・。ところでどこ行ってたんですか?こんなに遅くなるなんて。」
「倉庫だ。お前を待っている間に今回の講習に使ってみようと思いついたものがあってな。奥のほうまで探してたら時間がかかっちまった。」
「なんですか、これは。この大きさ・・・。」
「店頭ディスプレー用のドリッパーだ。まだ大きいのはあるんだが、濾紙がないんでな。手に入った濾紙はこのサイズまでなんだ。」
「だからって大きすぎますよ。何杯どり用なんですか?」
「15杯どり位かな。うちの店では使わないし展示スペースもないから倉庫へ放り込んでおいたんだ。」
「これと、今日の講習とどんな関係が・・・?」
「今日は湯面の高さだ。いつも使っているドリッパーとこれとを比較すればわかりやすいんじゃないか?と思いついたんだ。最近アメリカンまで淹れるようになったお前なら想像はつくとは思うがな。」
「そうか、水圧をかけた際の違いを大きくしようってことですね。やっぱりうすくなるんでしょうね。」
「そうだな、そういうことは実験して確認するに限るぞ。理由も考えながらやってみろ。」
「はい。」
「あ、そうそう、今回は1杯じゃなく2杯づつでやるように。」
「えっ?どうしてですか?」
「お前にはこいつで1杯どりは技量的に不可能だろ?見ろ、1杯分の粉じゃこれっぽっちにしかならないんだからな。多分アメリカンにしかならないと思うぞ。」
「あはっそうですね、1投目を全体に行き渡らせようとしてもお湯が全部おっこっちゃいそうですね。わかりました、両方とも2杯取りしてみます。」

「どうだ?」
「色からしてうすいってわかりそうだと思ったんですが、案外色に関してはそれほどうすくはならないんですね。しかも香りもちゃんとありますよ。」
「ずいぶんまともになってきたようだな。きちんとした蒸らしができてなきゃ香りは出なかっただろうに。」
「かなり最初のお湯の量と蒸らし時間には気を使いました。うまくいったみたいですね、よかった。」
「飲み比べてみろ。かなり違うぞ。」
「はい。あれっ?コクでしょうか、足りませんね。確かにいつものブレンドなんですけどなんか違う。一味足らないって言うか、物足りません。起伏がない平板な味なんですね、刺激的なところが感じられません。マスターのおっしゃるとおりこれは別物ですね。気分や体調によってはこちらのほうが飲みやすく感じることもあるんでしょうが、本来の味を知ってるともったいない気がします。」
「ふーん、そこまで言えるようになったか。ついこの間まで『アメリカンってお湯で割ればいいんでしょ』なんていってたのにな。」
「それは言わないでくださいよ。この講座を続けるにあたって私も勉強したんですから。」
「こんないいかげんな講師の下でよくここまで成長したな。誉めてやる。だから講義を続けていいか?これまでのことからもわかるように珈琲液の色と香りはほとんどが最初の注湯で決まるんだ。ほとんど蒸らしをしない応用編1のような抽出とはまるで違うだろう?」
「脇道にそれたのは私のせいじゃない・・・。」
「ん?・・・それとは違い、珈琲の味・コクといったものはその後に抽出される。その更に後がエグ味とかイヤ味とか言われる不要な成分だ。これらの抽出度合いは機械的には求められない。これは珈琲豆が農作物である以上避けられない部分だ。まあ、この辺は次回のまとめに回すとするか。」
「マスター、なんだかすごく機嫌よくないですか?後1回で講習会が終われるんで喜んでるんですか?」
「だれが終わりだって言ったんだ?オーナーから打ち切りの連絡でも来たのか?」
「えっ?だってもともとマスターは乗り気じゃなかったんじゃぁ・・・?」
「まだまだやることはたくさんあるぞ!これからもよろしくな!」
「へっ?はい・・・、よろしくお願いいたします?あれっ?やっぱり今日のマスター、へん!」

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2007年11月26日

◆応用編 3.粉のメッシュ

いつも講習会にご参加頂きありがとうございます。
今回は応用編の3回目、「粉のメッシュ」いわゆる粉の細かさについて実験していこうと思います。
いつものブレンド豆を粗挽きから超細挽きまで挽き具合を変えて抽出してみます。
想像してみてもある程度はわかると思いますが、飲んでみるとまた新しい発見があると思います。おうちにミルをお持ちの方は是非試してみてください。豆によっては驚くほど変化がある場合があります。

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「えっと、ここが「粗」でここが「中」、それでここが「細」でいいわね。」
「オイ、何やって・・・ああ、俺の個人用のミルに何書いてやがる!!油性マジックで書くな〜っ!!」
「だってこれ、表示が点だけで判りづらいじゃないですか。今日の講習の際も使用するんでしょうから判り易くしとこうと思ったんです。」
「だからって汚い字をマジックで書かんでもいいだろう。あ〜あ〜・・・。もうこれ生産されていないんだぞ。パーツのガワだけが手に入るかなぁ。」
「ひどいっ!私だって一生懸命考えて少しでもスムーズに講習を進めようと思っていたのに・・・(グスン)」
「わ、わ、な、泣くな、わかった、わかったから。もういいから。なっ?」
「な〜んてね。やっぱりマスターも女の子の涙には慌てるんだ。覚えとこうっと。」
「お、お前!これからのしごきは覚悟しとけよ。もうすぐ新人を採用しようってのに先輩風を吹かしたくないのかな?君は。」
「え?そんな話があるんですか?カッコいいイケメンですか?何人?」
「まだこれから募集するんだ。オーナーとどんな人材がいいのか検討中だ。当面は一人しか雇う余裕はないな。」
「ふ〜ん、またマスター楽しようとしてるんですね。隠居の準備ですか?」
「誰が隠居するんだ!オーナーとあたら・・・あわわ・・・余計なことお喋りに教えちまうとこだった。」
「何か企んでますね、マスター。まあいいです、カッコいいボウヤと一緒にお仕事できるらしいし、バイト代上げてくれそうだから。」
「そんなことは一言も言ってない。お前のせいで客足が遠のいたらバイト代は悲しいことになりそうだな。」
「え〜っ、そんな〜。」
「おしゃべりばっかりしていないでさっさと講習始めるぞ。準備はいいか?」
「お湯は沸いてますよ。豆はどうしましょう。」
「ん、店で挽いてきたぞ。いつものレギュラーを4段階に挽分けておいた。」
「え?挽いてきてあるんですか?折角マスターを泣かせてまでしてミルに印つけたのに。しかも4段階?細挽と中挽、粗挽のほかにまだ用意されたんですか?」
「ああ、極細挽を追加しておいた。エスプレッソで使うメッシュだな。挽いてきたのは挽いてる間待ってるのも時間の無駄だしな。」
「もう、めんどくさがりですね。じゃあ始めますよ。まず中挽からでいいですか?」
「ああ、基準を最初にな。」
「わかりました。・・・かなりスムーズに淹れられるようになったと思いませんか?」
「余計なことはいい。終わったら細挽と粗挽を同時に落とせ。」
「ハイ、前回の復習はちゃんとやってますよ。あれ?大変です、粗挽が膨らみません。マスター豆が古かったんじゃないですか?」
「馬鹿いうな!粗ければお湯の浸透が進まないからガスがなかなか出てこないんだ。しっかり表面を見て、引けてきたら第二投だ。ほら、細挽が落っこちるぞ。湯面を下げすぎるな。何やってんだ、全く・・・。」
「ふぇっ!難しい〜。ますた〜済みません、いい気になってました。淹れなおします。」
「ああ、ちょっと難しかったな。このようにメッシュが違うと同じ豆から挽いた粉でもタイミングは大きく変わる。さては気付いてなかったな、俺が淹れてるときメッシュが違うオーダーは必ず分けて淹れてたって事。」
「あ、ずるい。自分でもやらないことをやらせたんですね。」
「でも、一緒にやって初めてわかったろ?ここで失敗するのはなんでもない。自分で飲むだけだからな。」
「ふんっ、勉強になりましたっ!それじゃあ淹れなおしますよ。」
「あ、淹れなおさなくてもいいよ。どんな風になるかが判ればいいんだ。飲み比べてみろ。」
「はい、基準を確認してからですね。えっと、できれば細挽は飲みたくないっていうか失敗しましたし・・・。はい、睨まないでくださいよ判りましたから。細挽のほうは
・・・うわっ、苦い、渋い、濃い・・・美味しくない〜。」
「途中で絞っちまってるからちょっと渋いだろうな、苦くて濃いのはメッシュのせいだ。酸味はどうだ?」
「酸味も強いです〜、苦手なのに・・・。」
「まあそんなもんだ。細挽あたりだと同じ手順で淹れると中挽の要素をかなり強調してくれる。ただし、余計なものまで抽出されちまうから嫌なエグ味が追加される。それじゃあ粗挽はどうだ?」
「はい、お水で口をゆすいでっと。」
「ちょっと待て、ゆすぐんならお湯にしろ。」
「えっ?何でです?」
「口の中の温度が急に下がると味覚に影響が出る。まあ、そんな厳密な検査じゃないからいいが、な。」
「結構細かいものなんですね。」
「まあな、淹れる条件で微妙に変化する珈琲だから他の条件は統一しておかないといけないからな。」
「それじゃあ粗挽、飲んでみます・・・あれ?飲みやすい。でも薄いっていうか味も素っ気もないですね。力強さは全くありません、ちゃらちゃらした若いお兄ちゃんみたい。」
「やっぱり男に例えるのか・・・。まあいい、大方正確だ。まだまだ抽出不足の感じだろ?」
「そうですね、これじゃあやっぱり美味しくないです。何でこんな風にメッシュを変える必要があるんですか?」
「ローストの具合によって変えるんだ。浅ければ抽出力の高い細挽、深ければ抽出力を抑えられる粗挽ってな具合でな。これに次回の講習でやる湯面の高さを組合わせて丁度いい抽出を行うんだ。」
「頭こんがらがりませんか?」
「色々試しているときは大きな紙に表作って書き込んでかないとわかんなくなるな。しかも、定石に当てはまらないのもたまに出てくることがあるんだ。」
「ひょっとしてそんな手間をかけた中から選ばれたブレンドなんですか、うちのって?」
「ああ、メッシュやローストの具合を決めるのにどれだけ豆を使ったか判らんよ。オーナーもずっと付き合って飲み比べてた。」
「ほんとに好きなんですね、お二人とも。これだけやってれば、文句つけるような客を追い出したくなるのわかる気がしてきました。ところで、まだ淹れてない粉があるんですけど。」
「ああ、これは同じように淹れたら珈琲が嫌いになっちまうからな。アイスにしてどうなるか味わわせてやろうかと思ったんだ。」
「私、アイスの淹れ方はまだ・・・。」
「淹れてやるよ。氷はあるよな。」
「はい、足元のストッカーにあります。でもこれレギュラーブレンドですよね?確かいつもはフレンチを使っていたと思ったんですけど。」
「ああ、よく覚えていたな。それとの違いを味わってみろ。」
「はい。へ〜こんなに低い湯面で淹れるんですか、あれ?もうおしまいですか?通常の1/2もありませんよ。」
「これをグラスに氷を満たした上から一気に注げば氷が解けて丁度いい具合になる。」
「出来上がりですか?じゃあ、いっただっきま〜す!」
「おい、普通のアイスじゃないから気をつけろ・・・って遅かったか。」
「ま〜すた〜、苦味があまり無くって酸味だけがものすごく強いです〜。残り捨てていいですか〜。これ以上飲めませ〜ん。」

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posted by 銕三郎 at 00:00| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 珈琲抽出研修会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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